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がらくたにっき |

絵がいやだ・・・

麻耶雄嵩 「神様ゲーム」 2005年 講談社




mixiの推理小説好きのコミュにて、“ミステリーランド”についてのトピがあり、そこにて物議を醸していた「神様ゲーム」。
そういやあ、一時ミステリーランドをよく読んでいたのに、この頃全然呼んでいないなぁーと思って借りて来てみた。

確かに、子供向けじゃないかなー
というか、私は最後のオチがいまいち分かりませんデシタ……

ちょっとここからネタばれです;

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Category : 児童書(推理)
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子どもの頃に読んでたら相当怖かったろうなぁ

都筑道夫 「幽霊通信 都筑道夫少年小説コレクション1」 2005年 本の雑誌社




果たしてどういういきさつで自分の「読む本リスト」に入ったのか、すっかり忘れてしまったが、確かWikipediaで何かを調べてて行き当たったかなんかで加えた気もする「都筑道夫少年小説コレクション」。

都筑道夫という名は、実はその時に初めて知って(推理小説好きとしてはアレだろうけど)、なんでか少年小説から読んでみたのだが、割と面白かった。
というか少年小説と銘打ってるだけあって、主人公は少年少女だし、文体もやさしいけれども、内容としてはしっかりとした推理小説だった。

“幽霊通信”とだけあって、本書に集められているのは(本書は短編集)幽霊だとかお化けを題材にしたお話。といってもオカルトな話ではなくて、幽霊/お化けが出るという噂が出回る→探偵役が調べる→幽霊/お化けと思っていたのは人間の仕業で、裏には犯罪が起きていた、というスタイルがどの話にも貫かれていた。
といっても、前述した通り子供だましのものではなくて、ホラーっぽい要素も含めつつ、トリックもしっかりしていたので、大人でも楽しめる。

本書には「幽霊通信」「耳のある家」「砂男」「座敷わらしはどこへ行った」という話が入っていて、その中の「幽霊通信」は全12話のショートショートである。そして一貫して民族学を専攻していて、お化け博士と呼ばれている和木俊一が探偵として登場する。

メモ程度に話を列挙してみると;

「幽霊通信」・・・和木俊一が下宿している所の美香ちゃんが主人公
・第一話 一本杉の家
 誰もいないはずの家に、女の人が寝ている。
・第二話 二階にうつるかげ
 夜、ある二階に影がうつる。影は日によって鬼であったり女であったりする。
・第三話 三時三分にどうぞ
 交通事故で死んだと思った美香の友達から、「遊びにいらっしゃい」という電話がくる。
・第四話 スペードの4
 美香の友達の父親宛に、破られたスペードの4のカードが届けられる。
・第五話 五色のくも
 5色の蜘蛛が現れる。
・第六話 ぼうしが六つ
 提灯屋さんの枕もとに現れるシルクハット。
・第七話 七福神の足あと
 七福神が描かれていた掛け軸が、もぬけの殻になり、しかもその前に死体、そして七福神の足跡。
・第八話 8時のない時計
 うらさびれた邸。異様な家族。亡くなった姉が帰ってくるという。
・第九話 おしの九官鳥
 美香の友達の父親が幽霊に襲われて亡くなる。
・第十話 十字路の日を消すな
 十字路の電気が消え、壁には謎の文章が現れ、そしてすぐ消える。
・第十一話 十一才の誕生日
 怪奇現象が次々に起こり病気になってしまった、美香の友達。
・第十二話 十二ひとえの人形
 十二単の人形が涙を流すといって和木のもとへ調査依頼がくる。

「耳のある家」
学者である父親の仕事の関係で、父親の友達の家に預けられたルミ。
非常に奇妙な家で、監視されている気がしてならない。
実はその家でニセ札つくりと、合成皮膚の研究がなされていた。

「砂男」
ゆみ子の兄が突然消える。
その後ゆみ子は、兄を捕まえたという砂男に出会い、兄を返してほしくば“ものいうすな”を探してこい、と言われる。
その砂は実はヘロインで・・・

「座敷わらしはどこいった」
東北にやってきた由美。そこで座敷わらしの話を聞き、土地の子と一緒に座敷わらしを見つける。
座敷わらしが消えたという方向に行ってみると、そこには死体が!そして実は座敷わらしは、土地の子が由美のために用意した、本物の男の子で、その子の姿がない。


この話がただの子供だましじゃない、ということがよく現れている一節がある。
「砂男」の中で麻薬が出てくるのだが、そこで;

「ゆみ子ちゃん、きみのような子どもに、こんな話をするのは、早いかもしれない」
 と、和木俊一は、ゆみ子を見つめながら、いいました。
「しかし、この世の中には、そこにいる砂男なんかより、百倍も千倍もおそろしい、手をふれてはいけないものがある、ということを知っておいたほうがいいような気がする。だから話すんだが、薬の中には病人を助けるが、健康な人には毒になるものもあるんだ。麻薬がそうだ。」(p258)


というシーンがある。
ただ子ども扱いして目をそらせないで、きちんと向き合っているってのが良いなーと思った。

これを子どもの頃に読んでたら、相当はまってただろうな、と思った。

Category : 児童書(推理)
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この挿絵の怖さはどう考えても“少年少女のため”ではない!!!

なんだかこの頃児童書づいている気がするが、いやはやなんだか楽して読めるので、図書館で児童書コーナーに行く抵抗感がなくなった今、真っ先にそのコーナーに直行している自分がいる。そんでもって大体は「精霊の守り人」シリーズ、もしくは「盗神伝」シリーズ、もしくは「ミステリーランド」シリーズを借りる。
今回は「ミステリーランド」シリーズより島田荘司の「透明人間の納屋」。島田荘司なんて本格ミステリー界の大御所だ(と思っている)し、その昔好きで読み漁ったこともあるので、大いに期待して読み始めた。

その結果・・・なんか泣けてしまったよ、この話。
事件自体は、密室状態から人が消え、その数日後に海で腐乱死体となって見つかる、というよくある事件で、しかもその真相も大して目新しくない。
でもこの話の神髄は事件ではなくて、大げさに言うと、主人公の男の子と隣で印刷工場を営む真鍋さんの愛だと思った!(この場合の愛は恋愛の愛ではないのであしからず)

ところでこのミステリーランドは“かつて子どもだったあなたと少年少女のための”と銘打っているのだが、今回の場合、明らかに“かつて子供だったあなた”仕様になっていた。
というのは、主人公がもう大人になっていて「かつて子供だった」頃のことを思い出して話が進んでいく形式を取っていて、それがものすごい効果的だからだ。

舞台は日本海をのぞむF市。主人公の本名は出てこず、皆に“ヨウちゃん”と呼ばれている。
父親がいなくて、通っている小学校にも気の合う友達がいない。

> あの頃のぼくは、手探りのようにして毎日を生きていた。大げさに言えば、生き方を探していたのだ。…(中略)…そしてぼくは、ようやく真鍋さんを見つけていた。これが生きる理由だと納得していたのだ。(P22)

そんな真鍋さんと穏やかな暮らしをしていくのかと思いきや

> 何故ぼくにあんなひどいことができたのか。徹底して優しく、ぼくのためだけに生きているとさえ言えそうなくらいに献身的だった真鍋さんに、ぼくは本当にひどいことをした。二度と取り返せない罪を犯した。若者に持つ毒でもない、人間の業でもない、子供にも危険な毒がある。子供だけが持つ毒。あの頃を思い出してぼくはそう思わずにはいられない。(p39-40)

と最初の部分で書かれているものだから、真鍋さんとの幸せそうなやりとりを読んでいても、先を予感してしまうせいか、哀しさを含んでいる気がしてならなかった。
そして、その「子供だけが持つ毒」に直面した時、“ああ、これか・・・”と思うのは、同じような経験をどこかでしていたからか。でもこの主人公に関しては、それが真鍋さんとの別れを意味していて、その後の生活に大きく影響を与えることとなる。

その別れのシーンも悲しかったが、その後、真鍋さんからの手紙なんて、もう・・・ 基本的に事の真相が書かれているのだが、最後の部分

>あのF市での暮らしは素晴らしかった。何もない街だったけれど、ぼくは最愛の人たちに巡り合えて、生きる意味と喜びを知った。それがどんなに大きなものかも。…(中略)…
 その前のぼくには何もなく、その後のぼくにも何もない。今この地獄の釜の底で目を閉じると、ぼくの精神はあの日本海べりの小さな田舎街に、吸い寄せられるように戻っていく。あの聡明でシャイで、しかし向上心強く、時に上目遣いに、はにかんだように笑う少年と暮らした何年かは、ぼくには人生最上の日々でした。あれこそは、追い求めていた地上の楽園だったと今は解ります。 (p306)

ああ またもやこれを読んでいるうちにも涙が出そう・・・ ううう
なんか自分の琴線にものすごく触れる作品だったようだ。
さ、さすがです巨匠・・・


(島田荘司 「透明人間の納屋」 2003年 講談社)

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ザリガニスキー特使からして児童書風味

”悩めるリンタロウ青年”と称される法月綸太郎(綾辻行人の「どんどん橋落ちた」参照)。いつもは哀切漂う小説が多いが、このミステリーランドシリーズのタイトルが「怪盗グルフィン、絶対絶命」。
どうしたんだ!? リンタロウさん!! と思って、さっそく借りてきた。

いつもの鬱々とした感じから一変して、舞台がアメリカのせいかやたらポップな感じ。
例えば主人公の怪盗グリフィンが銃に撃たれてから意識を取り戻したシーン。

…(中略)…血圧と体温をチェックしてから、ドクターは満足そうに言った。「あなたはラッキーな患者だ。」
「まさか。ぼくは銃で撃たれたというのに。」
「命中したのは一発だけです。…(中略)…脾臓を貫通。あなたはすぐこの病院へかつぎこまれ、脾臓の摘出手術を受けました。」
「―脾臓(ここに傍線)?」
「…(中略)…でも心配はいりません。…(中略)…盲腸を切るのとおなじで、今後の生活に支障をきたすこともないでしょう。」
 グッバイ、ぼくの脾臓。喪失感をよそに、ドクターはつづけた。(p92-94)

こんなカラッとした軽口なんて、他の法月作品には見られない気がする(私の覚えている限り)。

肝心な話はというと、タイトルから察せられる通り、怪盗グリフィンが主人公。
絵をメット美術館の絵が贋作なので、それを真作とすり替えてほしいという依頼が来る。それの手口がなかなかスピードも速く面白かったのだが、それはただのグリフィンをつる餌でしかなく、あっさり終わってしまった。
本題は、CIAの要請でカリブ海に浮かぶボコノン共和国へ忍び込み、大統領と共に独立に導いた将軍が所有する土偶を盗んでくる、という話だった。

基本的には007っぽくてなかなか面白かったが、ボコノン共和国の歴史部分がどうにもこうにも退屈だった。突然話のテンポが減速しどうにもこうにも、辛抱の足りない子供だったらほっぽりだしそうな勢いだ。それを乗り越えた先が面白かったので良しとするが。

このミステリーランドシリーズ。もうすでに何冊か読んでいるが、皆アプローチの仕方が違ってなかなか面白い。綾辻行人のように子供向けとは思えないくらいいつもの調子であったり、有栖川有栖のようにやけに子供子供していたりと。
法月綸太郎の場合は有栖川有栖よりだが、なんだかいつもの法月氏の調子を突き破って違う姿を見せてくれた感じがする。
そんなこんなでミステリーランドシリーズ、なかなか面白い企画だとつくづく思った。


(法月綸太郎 「怪盗グリフィン、絶対絶命」 2006年 講談社)

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人形館に次ぐ、島田潔の出番が少ない作品でした

「精霊の守り人」シリーズを借りようと児童書コーナーに行ったのに、続きの巻がなくてちょっとがっかりして目線をあげたところに、ミステリーランドシリーズがずらっと。
何人か自分の好きな作家の作品を読んだことがあったので、目を通していると綾辻行人の文字が!ということで、いそいそと借りる。奥様の小野不由美の「くらのかみ」が今のところこのシリーズ内でダントツに面白かったので、ちょっと期待しつつ

タイトルの「びっくり館の殺人」から察するに、綾辻行人のデビュー作で代表作(と勝手に私が思っているが概ねあってると思う)の館シリーズなんだろうなぁ、とふんでいたが果たして。主人公の永沢三知也が古本屋で鹿谷門美の「迷路館の殺人」を手に取るところから始まる!
この鹿谷門美は言わずもがな、館シリーズに出てくる島田潔氏で、確か「迷路館の殺人」は氏のデビュー作となっている(もちろん現実の世界にもあるし、蛇足ながら館シリーズの中でこれが一番好き)。
そしてそして!この「びっくり館」も中村青司によって建てられたということを、しょっぱなから主人公が思い出すことから読者も知ることとなる。ある意味、「中村青司が建てた」という記述で、この作品がまぎれもなく「館シリーズ」なんだ、と証明されたようなものかもしれない。

そんなわけで、最初のシーンでアドレナリンがどばぁぁぁぁっと出て、ふんふん鼻息荒くページをめくっていくことにあんった。

永沢三知也が「迷路館の殺人」を手にとったところで記憶が蘇り、回想していく形で話が始まる。
話の流れとしては、大学生の三知也が「迷路館の殺人」を手に取り、自分が小学6年生の時に遭遇した「びっくり館」でおきた、その館の主、つまり友達の俊夫の祖父が殺害された事件を思い出す。
そしてそこから、兵庫県A**市(たぶん芦屋市)に引っ越してきたばかりで、「びっくり館」の噂を聞いた頃から事件までの回想が始まる。

三知也が「びっくり館」に忍びこんだことから、そこに住む同い年の俊也と友達になるのだが、こういう話でよくあるように、俊也は病弱で美少年。「びっくり館」には祖父と二人きりで住んでいる。
母親も姉もいたようだが、姉の梨里香はおととし死んでしまい(後で母親に殺されたということが判明する)、嘆き悲しんだ祖父は腹話術用の人形にリリカと名づけて、その人形を梨里香として扱っている。

謎に包まれた屋敷に祖父と病弱な美少年、不吉な過去、気味の悪い人形、仕掛けのある屋敷、奇行に走る祖父。
とまあ、横溝正史的なというか、江戸川乱歩的なというか、怪奇な雰囲気と、主人公の三知也の悲しい過去も絡んできて話は進み、殺人事件へとつながる。

祖父は「リリカの部屋」と呼ばれていた部屋で、ナイフを刺されて死んでいたのだが、当然のことながら密室状態だった。
その間寝続けていた俊夫は、放心状態になっていて誰が話しかけても反応がなく。三知也は、前々から決まっていたとおり、父親に連れられてアメリカへと旅立つのだった。

そうして日本の大学で勉強するために、三知也はアメリカから日本に戻ってくるのだが、「迷路館の殺人」を手に取るまでその記憶を封じ込めていた。
誰が殺したのか、どうして密室だったのか。
それがここから推理されていくのかと思いきや……
三知也たち(発見者は三知也だけではなかった)が知っていて、世間を含め読者も知らなかった事実が明かされていくのだった……

最後はなんとも後味の悪いものだった。
ん~ 初期のいわゆる「本格派」のような感じが好きなのだが、どうも「暗黒館の殺人」といい、この「びっくり館の殺人」といい、おどろおどろしさを出すのはいいけど、ちょっとファンタジー入っていて、それが私には合わない気がする……

なにはともあれ、”かつて子どもだったあなたと少年少女のための”とうたわれているけれども、文体もそんなにいつもと変わっていなくて、どちらかというと「かつて子どもだったあなた」に重点がいっている気がした。

最後に蛇足ながら、すごく話の本筋とは関係ないながら、結構好きな表現があったので;

 根拠といえるほどの根拠もない、およそ非現実的な考えかもしれない。何そんな、オカルト映画じみた妄想にとりつかれて……と、百人の他人に話せば百人みんなに笑いとばされてしまうかもしれない。けれど―。(p344-355)

思えば、推理小説系って主人公がこういう風に逡巡することが多いのだから、推理作家はこういう表現方法を色色考えなくてはいけないのかな、とふと思った。


(綾辻行人 「びっくり館の殺人」 2006年  講談社)

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