情熱の熱量にただただ驚く
コリンヌ・ホフマン 「マサイの恋人」 平野卿子・訳 2002年 講談社
随分前の読書会で紹介された本。
小説ではなく、実際の体験を描いた本書は
とりあえず「すごい」の一言に過ぎる。
スイス人のコリンヌは、休暇で行ったケニアで
マサイの戦士・ルケティンガに一目惚れする。
「一目惚れ」なんて生易しいものではなく、「激しい恋に落ちる」の方が良いかもしれない。
とりあえず一目でこの人と一緒になりたい、というただその一心で、
一緒に来ていた恋人を振り、スイスに戻って自分で起こしていた事業を売却し
ケニアに来てしまう。
そしてルケティンガと、彼の故郷でブッシュ生活をするのであった。
ただ、結婚するのにも大変労力がかかり、
ルケティンガが読み書きができない人であったのもあり
ビザを取ったり、ルケティンガの身分証明書を取ったりするのに気の遠くなるほど時間がかかる。
その間、マラニアにかかったりとまぁ大変。
やっと結婚ができ、妊娠するのだが、妊娠中もマラニアにかかってしまう。
無事に出産し、娘・ナピライが生まれる。
その頃からルケティンガの嫉妬が激しくなり、
男の人と話しているだけで、「あいつと寝ただろ」などとなじられ、
遂には、ナピライも自分の娘ではないのではないかと疑われてしまう。
そこから破たんが始まる。
ルケティンガの故郷、バルサロイで店を営んでいたのだが、
あまりにルケティンガが嫉妬をして、皆が避けてくるようになったので
彼と初めて会った地、モンバサにて再出発をしようと決意する。
それに対して、ルケティンガもなかなか承諾しなかったのだが、
ルケティンガの弟、ジェームズからの説得もあって、モンバサに引っ越し
そこで土産物の店を開く。
店の方は順調だが、ルケティンガの嫉妬は収まることはなかった。
毎日のように喧嘩をし、遂にはほぼ着の身着のまま、ナピライを連れてスイスに帰る。
ルケティンガには、ちょっと休暇でスイスに帰る、すぐ戻るから、と言いつつ。
とりあえずすごいのだが、正直、コリンヌが受け付けられなかった。
「郷に入っては郷に従え」という言葉を知らないのかな…と思うくらい、
あまり馴染もうとしない。
例えば、マサイの女性も丸刈りにしているのだが、それを女性たちに勧められた時に
特に理由もなく、絶対に切らないと拒否している。
ナピライが生まれた時も、マサイでは、可愛い子供だと呪いをかけられるという心配から
子どもを見せないという風習があるのだが、
それも、ナピライを見せれないなんて、スイスで喜んで見せるのに、と悲しんだりする。
よく考えたら、ルケティンガと一緒に住みたい、という
ただそれだけの想いで、ブッシュ生活をしているのだから、
その文化に馴染むとか、そういう意志はあまりないのかもしれない。
でも、情熱だけで一生過ごしてはいけないし、
自分が好きというだけで突っ走って、相手に分かってもらえないと泣くのが
なんだかなぁ…と共感が全く湧かなかった。
現に、破たんして、4年しかもたなかったし、それは当たり前よね、という感じ
彼女が体験したことは、自分では絶対できない体験なので(したくもないけど)
純粋にすごいとは思うが、尊敬に至らないといったところか。