中村淳彦 「職業としてのAV女優」 2012年 幻冬舎
読書会で紹介された「職業としてのAV女優」、題材が未知の世界だったので図書館で予約して借りてみた。
去年出版された本なのに、大変な混みようでやっとこさ手に入った。
やっぱり皆さん、興味あるんですね。
ただ、待望の1冊だった割には、結果としては残念なことに。
そんな面白くなかった…
というのが話があまりまとまっていない気がした。
昔は、できるだけ隠しておきたい職業だったAV女優も、今や殺到、全然罪悪感もなく“ばれたらどうしよう”という危機感もない。
しかもAV業界はネット需要の高まりのために不況に喘いでおり、AV女優として活躍できるのもほんの一握り、という競争率の高い職業だし、だからといって給料がいいわけではない。むしろ低いケースが多い。
といった内容を繰り返し繰り返し述べているだけ。
なぜ今までは躊躇する職業だったのに、こんな積極的な職業になったのか、というところがぼやけてしまっていた、正直、今やその結論が思い出せない状態。
ネットなどで“パーツモデル”などといったあやふやな内容で高収入の求人にひっかかり、蓋を開けてみたらAV女優の仕事だったけれども、「誰にも見つからないよ」などといった口説き文句に落とされて、あっさりAV女優になってしまう、というパターンが力説されているが、では、昔は違ったのか?というのがよく分からない。
確かにネットでの求人はなかったであろう。
でも口説き文句は今も昔も変わらないと思うし、それに引っかかりやすくなったとするのであれば、社会的なモラルが低くなったのが原因?と短絡的に思いがちだがそれを裏付けるものがない。
なんとなく肩すかしをくらう話である。
読み流したので、見過ごしているだけなのかもしれないが、もうちょっとパンチのある本であればよかったと残念である。
春日孝之 「イランはこれからどうなるのか 「イスラム大国」の真実」 2010年 新潮社
読書会の課題本。
イランのことは全然知らなかったので非常に勉強になった。
特にイラン人はアラビア人だと思っていたのに、全然違って、むしろイラン人はアラビア人を快く思っていないということを知ってびっくりした。
作者はイランに4年間済んでいた、毎日新聞の記者であるわけで、イランについて体系立てて書いているわけではないのだが、軽いタッチの書き方だったので読みやすかった。
以下気になったところ
小倉貞男 「物語 ヴェトナムの歴史」 1997年 中央公論社
読書会の課題本「物語 ヴェトナムの歴史」。
あと1章で読み終わるというところで出張が入ってしまったと言う哀しい結果に…
まぁ、ヴェトナムのことなんてヴェトナム戦争(それもあまりよく分っていない)と、子どもの頃に「ベトナムのダーちゃん」という印象しかなかったので、よりよく知るいいきっかけにはなったけれども。
他の東南アジアでもよくあるが、あちこちに征服されるのだが、それでも必死で抵抗するヴェトナム人に感服した。
中国の統治がひどく、抵抗活動を続けて独立を勝ち取ったり、フランス統治下でも必死の抵抗があったとのこと。
フランス統治時代に逮捕された反乱軍の一人が尋問されて「フランスへお帰り。そしてジャンヌダルクの銅像を引き倒してごらんなさい。そうしたら話しましょう」(p316)と言ったというエピソードが印象的だった。
また仏教が中国から来たのでは、インドから直接来たのも初めて知った。
道教とものすごいミックスした、というくだりより、他の国の仏教と様相が違うのではないかと想像が膨らんだ。
文字も漢字が伝わってきたのだが、ヴェトナム独特の漢字を作った(国字のようなものか)というも興味深かった。
が、その後のフランス人の統治でアルファベットにしろ、となって、文字を変えなくてはいけなかったというのは、ある意味アイデンティティに繋がる部分もあると思うので残酷だと思った。
現代の記述が少ないのが残念だったが、ヴェトナムのことを知るいいきっかけになった。
柿崎一郎 「物語 タイの歴史」 2007年 中央公論新社
読書会の課題本より。
その読書会の常連さんがタイへ旅行に行くということで、タイについての本が選ばれた。
「物語 スペインの歴史」のような面白さを期待していたのだけれども、結構真面目な、いわゆる正統派な歴史本だった。
以下レジュメ抜粋↓
一言で表すと
タイの通史を教科書的に表現されている本
興味深かったところ
タイの王族について
スコータイ王国三代目の王、ラームカムヘーン王(在位1279~98頃)の王碑文で王のことを「ポークン」(父君)と呼んでいた→現在タイでは国王誕生日が父の日(p38)…今でも国王を国民全体の父親と認識しているのが珍しく感じた
タイで政変があるたびに王が調停(p99)…儀式的な仕事は多いといえども、非常時には権威を発揮する。タイの政情が不安定という表れなのだろうか
諸外国との関係について
アユッターヤ朝ターイサ王(在位1709~33)の頃、中国をはじめとする諸外国へのコメの輸出が始まる(p72)…タイ米輸出の歴史の長さを初めて知った
1855年バウリング条約の締結(イギリスと)→王室独占貿易に守られてきたタイの「開国」を意味する→ただし日本の開国(1854年日米親和条約/1858年日米修好通商条約)と異なるのが、日本は外交関係の復活の側面が強調されるのに対し、タイはタイ経済の世界経済への包含の側面が強かった(p109)…様々な意味の“開国”の存在を認識
チャクリー改革について
(チュラロンコーン王(在位1868~1910)による一連の近代化への改革)
教育制度の近代化→すべての国民に教育の機会を与える→学力試験に合格した平民には職業選択の自由を与えると説明(p127)…改革のために国民の学力を上げるというところに王の聡明さを感じた
近代化に貢献したのがお雇い外国人→官庁により出身地が偏る傾向あり;大蔵・農業省はイギリス、宮内庁はイタリア、海軍・警察はデンマーク、郵便・鉄道はドイツが優勢(p128)…そもそも外国人を登用するケースが歴史的にあるのが興味深いし、この配分がなんだか納得できる
第二次世界大戦まで
1939年国名を「シャム」から「タイ」へ(p160)…逆にシャムの語源が気になった(ネットで調べる限りは、シャムは外国が呼ぶ名で、バーリ語の「浅黒い」を意味するクメール語らしい[http://blogs.yahoo.co.jp/hsm88452/34481947.html])
第二次世界大戦で敗戦国になったタイ、宣戦布告の際の無署名を切り札にし、宣戦布告の無効を宣言、宣戦布告は日本による強制下のやむを得ないものであったことを国際社会に訴えた(p183)→国際社会での立ち回り方を知っているなという印象
その他
日本より国際社会における立ち回りが上手く見えるのに、なぜ発展途上国と位置付けられているのだろうか?象に乗っていた王たちが馬に乗るようになった経緯も気になった。
井上順孝 「神道入門 日本人にとって神とは何か」 2006年 平凡社
これまた読書会の課題本;「神道入門」。
いわゆる入門本とは一線を画して、切り口がなかなか面白く、宗教を情報として捉えているのが興味深かった。
以下、読書会へのレジュメ;