スティーヴン・ミルハウザー 「イン・ザ・ペニー・アーケード」 柴田元幸・訳 1998年 白水社
読書友達に借りた初ミルハウザー。
短編で何作入っているのだが、「アウグスト・エッシェンブルク」以外はあまりぴんとこなかった。
が、この「アウグスト・エッシェンブルク」が素晴らしすぎて全然気にならなった。
「アウグスト・エッシェンブルク」に出会えただけでこの本を読んだ価値があると思った。
収録されている作品は以下の通り;
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金子光晴 「金子光晴 ちくま日本文学038」 2009年 筑摩書房
なんとなく詩って苦手なのよね。
というか、文章って短ければ短い程苦手なのよね。だから短編集も苦手だし。
そうなると詩なんて苦手なのは当たり前なのよね。
などという言いわけにより、随分前に幸田文のと共に買っていたはずなのに、全然手を付けていなかった、“ちくま日本文学”シリーズより金子光晴。
いよいよ読む本が少なくなってやっと手を付けた。
表紙絵は好きなんだけどね。
実は、金子光晴って名前は知ってるし、詩人ってことも知っていたけれども、情報はここでストップ。
なんと金子みすゞの旦那だと思っていました…!
あまつさえ、金子みすゞの旦那がひどい、という情報はあったので、「金子光晴ってひどい人」という認識さえ持っていました…
とんだ濡れ衣。二重にも三重にも重ね重ね申し訳ない…
とにかくそんな調子で読み始めたものだから、「おっとせい」なんて題名の詩を見つけたら、金子みすゞのイメージがあるもんだから、童話調・メルヘン調なのを想像して読んでみると、しょっぱなから;
そのいきの臭えこと。
くちからむんと蒸れる、
そのせなかがぬれて、はか穴のふちのやうにぬらぬらしてること。(p24)
…
衝撃ったらあらしません。
でも読んでいくうちに、金子みすゞのようなメルヘンチックな詩よりも、こういう泥臭い、汚いものは汚い詩って好きかも、と思ってしまった(そもそも何の関係もない金子みすゞと比べるのは間違えだということは置いておいて)。
もう一篇の詩 (人間の悲劇 より)
恋人よ。
たうとう僕は
あなたのうんこになりました。
そして狭い糞壺のなかで
ほかのうんこといっしょに
蠅がうみつけた幼虫どもに
くすぐられてゐる。
あなたにのこりなく消化され、
あなたの滓になって
あなたからおし出されたことに
つゆほどに怨みもありません。
うきながら、しづみながら
あなたをみあげてよびかけても
恋人よ。あなたは、もはや
うんことなった僕にきづくよしなく
ぎい、ばたんと出ていってしまった。(p80-81)
なんて妙に気に行ってしまった。
別に下ネタ好きでもなんでもないけど。この詩はからっとしてて、面白くて、「ぎい、ばたんと出ていってしまった」なんて絶妙で好きになってしまった。
そして詩以外に
・詩人 金子光晴自伝
・どくろ杯 より
・マレー蘭印紀行 より
・日本人の悲劇 より
が収録されているのだが、まぁ それのすごいことすごいこと。
「金子光晴自伝」に完全にノックアウトされてしまった。
一言で言えば“金子光晴ってとんでもないやっちゃな”。
自伝だから卑屈に脚色しているのかもしれないけれど、本当にひどいやつ。
こんな奴と間違っても友達になりたくない。
でも周りに人が集まっているようなので、自分で描いているよりも、よっぽど『マシ』な人なのかもしれないけど。
あと「どくろ杯」は、上海での暮らしぶりが書かれているのだが、それもまぁすごい。
もう描写が汚い汚い。
本当に林芙美子のエッセイを読んでいても不思議だったのだが、どうしてこういう人たちは、こんなにもお金がないのに、なんとか暮らしていけるのだろう?
金子光晴なんて、ちょっとでもお金ができると、すぐ使ってしまってまた貧乏になる。つまり全然懲りてない。しかもあくせく働くというわけでもなく、割とのらりくらりと暮らしている。
なのになんとか生きていっている。
これが昔の人の底力というものなのか?
この“ギラギラとした生”といった風の作品をきちんと読みたくて、「どくろ杯」を全文読みたいなと思った。
ただ改行も少ないし、決して読みやすい文章ではないのが玉にきずなのだが…
乾ルカ 「あの日にかえりたい」 2010年 実業之日本社
第143回直木賞の候補作品があがった時に、「候補作品を読んで、受賞する作品を予想してみようかな」と安易に考えて図書館で予約をしてみたのだが。。。
そう思った人が多いのかなんなのか、てかそもそも人気作品だったからか、やっと1冊めぐった時にはとっくの昔に結果が出ていることに。
まぁいいか、ということで、残念ながら受賞を逃してしまった「あの日にかえりたい」を読んだ。
予想外に短編集だったのだが、選ばれるだけあってぐいぐい読めた。
正直、表題作の「あの日にかえりたい」は他の作品に比べて面白いと思わなかったけれども、短編すべてが過去と未来、もしくは生と死が交差する話だった。
それが色々な形で交差していて、単純によくこれだけ思いついたなと感心もしてしまった。
初めて読んだ作家さんだが、著者紹介をみてみると短編が多いらしく、なるほどなと思うくらいの短編ならではのよさが出た作品集だった。
収録されている作品は以下の通り(ネタばれあり);
恩田陸 「朝日のようにさわやかに」 平成22年 新潮社
随分久しぶりの恩田陸は短編集だった。
妹が入院した際に買ったらしく、貸してくれた。
時々いまいちな物もあったけど概ね面白かった。
思うに、恩田陸は始めは面白いのに、エンディングがその面白さに見合わないというのが多いから、短編は面白いはずでは?でもあとがきによると、短編は苦手らしい。そうなると、いつも終わらせ方を考えあぐねている内に長くなっちゃう口なんじゃないか?だから、エンディングが残念な感じになるんじゃないか?と邪推してしまう。
それはさておき、収録されている作品は次の通り;