高岡浩三 「ゲームのルールを変えろ」 2013年 ダイヤモンド社
今会社から行かせてもらっている研修の一環で ネスレ日本へ企業訪問する機会に恵まれ、それを機に読んだ一冊。 高岡氏のコミットメント力にはただただ感嘆するしかない。 ”これ”と決めてからの行動力・実行力が本当にすごい。 父親が42歳で亡くなり、その時に祖父も42歳で亡くなったと聞いた高岡氏は 自分も42歳までしか生きれないのではないか?という意識がどこかにあり それが高岡氏の生き方に強く影響する。 神戸大学に一浪で入る、と決めて、本当に一浪で入ったり、 当時まったく売れなかったマギーブイヨンを売る、と決めて、新人にして売り方を確立してしまったり、 英語ができなかったので何とか安く会話力を身に着けようと交渉したり…と 若いころからコミットメント力がすごい。 目標・目的がしっかりと決まっていて、それに到達するのに最短距離は何か、ということを常に意識し それが「ゲームのルールを変える」ということに繋がっているのかと思う。
スポンサーサイト
横浜信一/萩平和巳/金平直人/大隈健史/琴坂将広 「マッキンゼー ITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する」 2005年 ダイアモンド社
所属している情シス部の中期目標をたてるチームが入ってしまったが為に、慌てて読まなくちゃ!と思って「読む本リスト」に入れていた一冊。 やっとこさ借りてみたけれども、ちょっとタイミング的に遅かったかな…とも。まぁ図書館で借りようというところで熱意が足りないのかもしれないけれど。 その遅いついでに、2005年出版ということで話もちょっと古かった。 何せあのリーマンショック前。ちょうどITバブルが起きている頃。 そんなわけでちょっと今と事情が違う。 あと、一人の人が書いた本だと思ったら(ちゃんと調べていない自分が悪いが)、複数の人のエッセイの寄せ集めで、ちょっと話がかぶるところが多かった。 そんなこんなで、ざーっと斜め読みして終わってしまった。 とりあえずまとめてみると;「IT投資の質の向上のために」 by横浜信一 どうやら本書が出版された時代というのは、第一次IT投入にて計上されたIT資産の償却が終わる頃で、そんなわけでITブームがまた沸き起こっていた頃のようだ。 しかし最初に投入した時に比べたら、企業はIT投入に積極的ではない、なぜなら投入したもののコストばかりかかってその分成果を得られたように感じられないからだった。 というわけで、そもそもIT投資って何か?というところから始める。 曰く、「ITがあって生産性が向上するのではなく、まずはイノベーションや規制緩和があって新しいビジネスモデルが生まれ、それを支える道具としてITを活用する(p7)ということ。 以下のエッセイも、基本的にこの考え方によっている気がする。「今度こそ正しいIT投資を」 byダイアナ・ファレル、テラ・ターウィリガー、アレン・ウェブ 今度こそ成果の得られるIT投資をしよう、というエッセイ。 それは全体的なIT導入ではなくて、ピンポイント―ここでは“競合との差別化をもたらす生産性向上の「レバー(梃子)」―に合わせたIT導入をはかるべきだ、という。 例えばウォルマートのようなGMS(巨大スーパー)であれば、低いマージン、膨大な商品数、高い商品回転率が特徴となる。それを支えるには商品の滞留時間短縮が必須である。そのため、優れた倉庫管理・輸送管理システムの確立が最重要課題となるわけだ。 賢明なIT投資とは、「何に」「いつ」取り組むべきかを見極めて行うものだ、というのが結論。 「ITの複雑さと戦う」byフランク・マターン、シュテファン・シェーンヴェルダー、ウォルフラム・シュタイン IT投資が失敗に終わったように感じる理由の一つに、システムが複雑になってしまったというものがあげられる。 エッセイが書かれた当初は新たなITブームが到来しているとはいえ、その前に“コスト削減”という目標がある。 いかに低コストでシステム投入を行うか、という話。 結局それは過去の課題であった複雑なITを紐解いていくのが鍵となる。 つまりはITアーキテクチャーを見直し、アウトソーシングも視野に入れつつ、複雑なシステムを落とし込むというのがポイント。「IT購買における質と決定者の変化」 byケンダル B. デービス、ブライアン L. スキャンロン、ジェレミー D. シュナイダー、オーディッド・バイス 償却が一巡したのでIT投資の余地が出てきたが、前回とは企業が求めているITとはトレンドが異なるようだ、という話。 つまりはニッチパッケージが主流となっているよ、という。「次世代のCIOとは」 byデビッド・マーク、エリック・モンワイエ 経営戦略にCIOも入れて、戦略にITを入れましょう、という話。「ITをめぐる説明責任と協力体制」 byダン・ローマイヤー、ソフィア・ポグレビ、スコット・ロビンソン 説明責任なんてアメリカ人の好きそうな単語…と思いながら読んでいたが、要は、IT部門と事業部門の調和をはからなくてはいけません、という話。 説明責任というとなんだか恐ろしいけれども、IT部門・事業部門ともどもお互いの仕事内容をアウトプットしないと、お互いに理解できず、そしてお互いの理解がないと曖昧なシステムしかできなくてコストの浪費になってしまうよ、という話(多分)。「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)から利益を得るには」 byマイケル・ブロック、シュテファン・シュパン アウトソーシングはコスト削減につながる一方、リスクもはらんでいる。そのリスクを回避するためには…という話。 自社の能力を洗い出して、それを検討したうえでのアウトソーシングを考えるのが鍵。「攻勢に出るオフシェア・ビジネス―コスト削減はほんの入り口にすぎない」 byジョン・ヘーゲルIII世 これまたアウトソーシングの話だが、アメリカ国内ではなく国外にアウトソーシングする話となる。しかもインドや中国などアジアがターゲット。 ひたすらプラス面の話で、安い上に大変質がいいと言う。「ドイツ銀行のIT革命―ドイツ銀行ヘルマン-ヨーゼフ・ランベルティ COO兼CIOインタビュー」 byフランク・マターン、シュテファン・シュパン 事例。 アウトソーシングとオフシェア・ビジネスを使って成功した例。「ユニクロの高収益を支える「業務改革」とそれを実現した「IT」―ファーストリテイリング堂前宣夫副社長インタビュー」 by萩原和巳 事例その2。 こちらはITをただのツールとして使用し成功した例。 堂前氏によるとIT部門があるなんてナンセンス、事業部の中にITプロジェクトがあるのが妥当だろう、という話。
清水勝彦 「戦略と実行―組織的コミュニケーションとは何か」 2011年 日経BP社
自分が一生読むことはないと思っていたジャンル、それがビジネス書だった。 それなのに、仕事ではおろか、プライベートで読むことになろうとは! 事の発端は、会社で「これ読んどいて」と上司に渡された『すべては戦略から始まる』。 戦略についての初心者用の本としては大変読みやすくよかった。 さて、世間の人の評価はどうなのだろうか…と思ってAmazonの書評を見たら概ね良い。 ただ大変低い評価を付けている人が一人いて、ではその人はどんな本を良いとしているのだろうか…と思ってみたところ、本書の「戦略と実行」を高く評価していたのだった。 初めてのビジネス書の感想は、割と同じことを何度も言うんだな、ということと、“ざっと読む”ということがしやすいんだな、ということだった。 「戦略と実行」の前に2作あるみたいで、それの延長上の本のようだったが、単品でも意味は通じるようになっている。 構成としてはこんな論理の展開となっている; ・日本企業の中で「戦略」というものが一般的になってきた …戦略をたてたが勝ちという認識であったのが ↓ ・戦略をたてても改善されないことがある ↓ ・戦略実行の失敗例と分析 ↓ ・戦略の前提の見直し ↓ ・戦略を実行する上で大事なのは“コミュニケーション”である ↓ ・戦略とコミュニケーションについて …“Seek first to understand, then to be understood 聞く力 コミュニケーションの部分は“Seek first to understand, then to be understood”の繰り返しで、要は“聞く力の大切さ”を延々と語っているのだが、戦略実行の失敗例と分析からその前提の見直しはなかなか面白かった。 まず戦略実行の失敗例を見てその要因を洗い出し、それが要因と思われる根拠となる“実行を成功させるための前提”を挙げる、そしてそれを再検討してみるということをしている↓ [要因1]トップの鶴の一言とあれもこれも [前提]・トップは「思いつき」ではなく、分析に基づいて指示を出すべきである ・「あれもこれも」では現場は混乱するので、トップはトレードオフをはっきりさせ、優先順位の明確な指示を出すべきである [見直]・分析は戦略ではない。戦略という未来への仮説は様々な要素の非線形的な統合である「思いつき」からしか生まれない ・トップはトレードオフの重要性を認識しているが、できる立場にないことが多く、また逆に優先順位をはっきりさせることによる副作用を懸念している [要因2]時間・準備不足 [前提]時間をかけ、準備をきちんとして取り組めば、実行もうまくいく [見直]どれだけ時間をかけても、戦略実行の準備に「十分」ということはない。どこがで踏み出さなくてはいけない …心理学などの研究では“情報量を増やしても、予想者の自信はあがるが、予想の確度はほとんど変わらない(p105)”という報告がある [要因3]戦略が不明確 [前提]具体的な戦略がトップから提示されれば、実行も成功する [見直]戦略の具体化には限界があり、むしろ試行錯誤を通じて実行される必要がある [要因4]実行と評価制度がリンクしていない [前提]実行とリンクした具体的な評価高文句を設定することで、実行を誘導できる [見直]評価制度はすべてではないし、評価制度にこだわることでより本質的な問題から注意がそがれる [要因5]責任は不明確 [前提]責任者を明確にすることで、コミットメントを高められる [見直]責任者の所在が実行できない理由として取り上げられるのは、誰も真剣に戦略(会社の将来)に取り組んでいない証拠である …確かに、これまた上司からぽいっと渡されたドラッカー入門の本でも、個人一人一人が責任感を持たなくてはいけないと書いてあったような。“責任者”を作るのではなくて、個人が責任を持たなくてはいけないのかな [要因6]部門間の対立 [前提]戦略実行のためには、各部門は対立するべきではない [見直]部門それぞれ異なった役割を持っており、対立や緊張は避けられない。対立があるからこそ創意工夫が生まれ、プロジェクトの完成度が高まる [要因7]納得性が低い [前提]社員に対して戦略をロジカルにきちんと説明することで、納得性も上りがり、実行もうまくいく …この前提の裏付けとしてキリンホールディングスの三宅占二社長が“腑に落ちることの大切さ”について語っているのを引用している …ただし、“納得”というのは理屈というよりも気持ちの問題と言及 [見直]納得するとは、論理や力で相手に屈服させられることではなく、相手の立場、価値観を理解し、許容することである。論理で100%納得させることはできない [要因8]片手間の実行 [前提]新戦略の実行は片手間などでは出来ない。100%の労力を振り向けるべきだ [見直]新戦略の実行はそもそも片手間でするものである [要因9]本気度の不測 [前提]トップから社員まで情熱を持って取り組めば、実行できる [見直]情熱があることと、それが実行に生かされるかどうかは同じではない。情熱はお互い打ち消し合ったりすることもあるし、浪費されれば枯渇する この後からコミュニケーション論が展開されるのだが、特にコミュニケーションを取り上げた理由として、きちんとした戦略が人をやる気にさせると考えるのは早計であり、その鍵となるのは(しかも目標や戦略があるかないか以上に)、「知った」「共有できた」という社員側の理解、気持ちであるという。 コミュニケーションについて気になったのを箇条書きにしてみると ・言葉やロジックはコミュニケーションの大切な要素だが、それらは伝えたい“意味”を運ぶ入れ物に過ぎない ・言葉自体がコミュニケーションの入れ物として“意味”を伝えることに貢献しているのはたったの1割にも満たない この本の最終の結論として挙がっているのは組織の実行力にはコミュニケーションが大切だといったその裏側には、組織のメンバー間の「関心」という、きわめて単純な天に行きつくのかもしれません(p318)
結局コミュニケーションで大事だと繰り返し説いている“聞く力”というのも、関心がなければ持ち得ないものだしな。