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がらくたにっき |

山内さん、長生きしてください

既刊の中での花咲シリーズ最終巻(多分)「シーセッド・ヒーセッド」読み終わりました。
やっぱり面白かったな~ はやくこれの続き出ないかな~

実はわけも分からず「シーセッド・ヒーセッド」を最初に読んだ過去があるのですが(でも始めの10ページくらいで止めた)、当たり前のことながらその時と今では大分印象が違いました。特に山内。まさかかっこいいと思わなかったしなぁ。

「シーセッド・ヒーセッド」は少し短編のような仕様になっていて、でも全体を通して出てくる話もあり、というような趣向になっていました。

まず一話目の「ゴールデンフィッシュ・スランバー」は今をときめく歌手A-YAに届く脅迫状の話。
第二話目の「イエロー・サブウエイ」は、第一話目でちらりと出てきた、山内の家の玄関前に「あなたの子です」というメモと共に置き去りにされた乳飲み子の母親探しの話。
第三話の「ヒー・ラブズ・ユー」は天才学者の要請で、教授の秘書をしているある女性を見張るという話。

一貫して、山内とその子と思しき乳児の問題が出てきます。
結局山内の子供か真相は分からないのですが(何せその女と山内が出会ったのは、ドラッグパーティーで、彼女はラリっていたし山内はべろんべろんに酔っぱらっていたしで、実際に至っていたのかわからない+彼女には付き合っていた男性がいた);

「あたし……本気で思っているのよ。あの子の父親は、山内だ、って」
「……根拠はある、ということですか。その……行為は……確かに?そうならば親子鑑定はできますよ」
「鑑定なんてしない。だって……否定されたくないんだもの」
「いや、しかし」
「自分が誰かの父親であるなんてことは、結局、ただのファンタジーよ。違う?誰が父親だってそんなこといいのよ…(中略)…
でも、あたしは……そう思っていたいのよ。復讐とかお金とか、そういうこと、みんな……後からくっつけたことなの。ほんとはただ、山内の子だと思いたい、それだけなの。…(中略)…
あたし……山内が好きなの。」(p240-241)

それでもってそのあとの花咲の嘆息具合がおかしい;

 まあ……すっかり忘れていたのだが、山内は確かに、甘い顔の美男子だ。あの顔に一晩で惚れてしまったというのは、あり得ることなのかも知れない。しかし、ああまっすぐに言われてしまうと、やはりたじろぐしかない。(p242)

忘れるなよ!とつっこみを入れつつ、なんだか妙にツボでした。

第三話では山内が癌で余命がいくばくか、という話が出てきた時にはショックすぎて、ハナちゃんが山内に説教するところをすっとばしてしまいましたが、よかった……あれは勘違いのデマで。

早く続き出ないかな・・・・


(柴田よしき 「シーセッド・ヒーセッド」 実業之日本社 2005年)

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長身の山内より大きい斎藤ってどれくらい大きいんだろう・・・

シリーズ一作目を読んで、本当に本当に心の底から二作目が読みたかった、花咲探偵シリーズ。なんで本屋に売ってないんだ~~~!
ということで、時間がずいぶんあいてやっと手に入った「フォー・ユア・プレジャー」。相変わらずハナちゃんが東奔西走します。

まず例によって城嶋に仕事を紹介された花島。依頼は自称OLからで、一夜限りの相手を探してほしいとのこと。ところが調査していくうちに、どうやら麻薬の売人だということが分かってきたが、それでも調査を進めてほしいと言われる。問いつめると、彼に未練があったわけではなく、上司に勧められた見合の相手に望まないまま指輪を指につっこまれ、その指輪がどうやらそいつの手に渡ったらしいとのこと。
そして幼稚園は相変わらず赤字で、そのうえ花島の生命保険が担保で冷血やくざ山内に借りているしまつ。そんな幼稚園に乳幼児をかかえた父親が登場。どうやら妻に逃げられたらしい。
そうこうしているうちに、恋人の理沙がトラブルに巻き込まれ、誰かに拉致されてしまう。そこに理沙の父親違いの妹が登場し、どうやらドラッグの乱交パーティーの時にまいた種で変な男につきまとわれ、それを理沙に相談したらしい。それをつてに理沙を探すと、やくざの幹部の愛人の家にたどりつき、家に入ればそのやくざと愛人が銃殺されていた・・・
それのせいで山内に追われることとなり、警察学校時代の同期の命とひきかえに真犯人をつかまえるべき東奔西走を始めるのでした。

第一作目の時と同じく、それぞれ独立しているような三つの事柄が(指輪を探す・乳児を連れてきただめ男・銃殺事件)最後にはきちんとまとまるの面白かったです。
そしてやっぱ山内かっこいい!!顔が相当いいという設定なのはもちろん、自分の恋人(花咲の警察学校時代の同期)が死にそうだというのにケタケタ笑っているという、なんかいかれた感じもいい。
死体発覚後、山内に捕獲されて脅されているところのシーンで;

「命乞いしてるにしちゃ、でかい態度だ」
 山内は、ヤンキーがコンビニの前に座りこむような恰好で座ったまま、煙草を床でもみ消した。コンクリの打ちっぱなしの、愛想のない床だ。
「だが、一理あるってことは認めてやる。しかしなぁ、何とも困ったことに、あんたであろうとなかろうと、俺は早急に死体をひとつ用意して稲葉にくれてやらないとならない立場だってことには変わりがないんだな。さて、どうしたもんか」
「ほ、方法は他にある」
 やめろ、やめとけ、と心の声が言った。余計なことは言うな。言えば自分で自分を窮地に追い込むことになるぞ、これまでの経験からそれは確実だ!
「松崎を殺した犯人を探し出して、警察に突き出せばいい」
 ああ。
 俺はおのれの馬鹿さ加減を呪った。俺がそう言った途端に、山内の顔に浮かんだ摩訶不思議な笑み。山内は初めからそのつもりだったのだ。…(中略)…
「すごいぞ、園長」 
 山内は長い腕を伸ばして俺の肩を叩いた。いかにも親しげに。
…(中略)…
 もし俺がここで一暴れして、生きてにこにこ園に戻れる可能性というのはいったい、どのくらいあるのだろう?だが、そんな大それた計算は、山内の長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳と視線が合った瞬間にどこかに消えてしまった。本当に、こんなに綺麗な目をした人間がこれほど凶暴に見えるというのは、ある種の地球の驚異だな…(中略)…
「引き受けてくれますね?」
 山内の山内の声が異様に優しくなった。(p294-295)


山内への愛がゆえに長い引用となってしまった・・・
なぜか、この肩を叩くシーンで山内の顔が松田翔太の顔にすげかわってしまった・・・何故だ!?別に松田翔太のファンでは全然ないし、それまでの山内は全然そんなイメージじゃなかったのに!それが自分の中で一番謎でした。

(柴田よしき 「フォー・ユア・プレジャー」 2000年 講談社)

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なにげに色んな舞台を観てるよな、この人

ひさびさに三浦しをんのブログを読んで、エッセイが読みたくなってしまったので借りてきた「桃色トワイライト」。
いや~なんだか癒される感じがします。

例によって特別な出来事があったわけでもなく、その中でも大きな出来事といえば引っ越したくらい(私の所見ですが)。本当にこんな一見淡々とした生活を書くのがうまいよなぁ~ というか面白いネタを見つけ出せるよなぁ~ これも才能ってやつ?なんて思ってしまいました。

この中ではしをんさんは「新選組!」にはまっていました。
ぐらいしか目新しい感想が書けないのですが。なにせ、例によってああで、例によってこうでという感じだし。
その中で面白い考察を。文楽の「源平布引滝」をみて幽霊に関してのコメント;


 よみがえったり、生き返ったり、幽霊になってもきみに会いにいくよと言ったりというのは、現代では「偉大なる『愛』の力で成し遂げられる奇跡」と解釈されることが多い気がするが、昔のひとは、自然の摂理に反するそうした現象を、「執念」が起こすものと考えていたふしが見受けられる。 
 ロマンチックな幻想が入る余地はまったくなく、昔のひとにとって死は死であり、生は生なのだ。その厳然とした事実を、こんなふうに「残酷なまでの一方通行」で表現できるなんて、ホントにすごい。文楽を見るたびに、いくつもシャッポを脱いでしまう。脱いだシャッポが、そろそろエッフェル塔の高さにまで迫る勢いだ。(p117)


(三浦しをん 「桃色トワイライト」 太田出版 2005年)

Category : 随筆
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通勤時に読んでると、自分のちっぽけさがやたら身にしみる一冊

通勤時のみに読むという、なんとも無意味なルールを自分に課してやっと読み終わりました"The Devil's Alternative" by Frederick Forsyth。ドキドキ中に何度下車のために中断させられたことか。ちくしょう。しかも世界レベルの非常事態時に「西船橋~西船橋~」なんて興ざめだい!

ちょ~面白かった!と軽い言葉では済ましてはいけない気がするくらい、重厚に面白かったです。
面白くなるまでになかなか時間がかかりましたが、苦難を乗り越えての面白さは余計に面白く感じる気がします。

話の構成を語ると、まず舞台は冷戦時代のロシア、アメリカそしてイギリス含むヨーロッパ(1982年らしい)。
大まかに4つほどの場面で前半は構成されています。
1つめはウクライナ系イギリス人Andrew Drakeが、ロシアから亡命してきたウクライナ人に出会うところから始まります。Drake含むウクライナ人が望むのはロシアからの独立。ということで、Drakeを中心にクーデターを企てます。それはユダヤ系ウクライナ人2人が、KGBのトップを暗殺し、飛行機をハイジャックしてドイツに亡命、そこからイスラエルに行く、というものでした。ところが、暗殺までうまくいったというのに、ドイツに行く飛行機の中で誤ってパイロットを殺してしまいドイツにて刑務所に入れられ(西ドイツ側にいられたのでよかったですが)足止めをくらってしまったのです。

2つめはロシア政府側。政府の中身は2つに分裂しそうになっていました。まず今のpresident of the USSR、Maxim Rudin側。そしてYefrem Vishnayev側。ちなみに暗殺されたKGBのトップYuri IvanenkoはMaxim Rudinのお気に入りでした。そんなMaxim Rudinに不利なことに悪天候と管理不行届きのために農作物がものすごく足りなくなってしまったのでした。暴動を始めとするロシア国内の混乱を予想し、それを防ぐためにRodin側は苦肉の策に出ます。それはアメリカに頼る、というものでした。一方でVishnayevが提案してきたのは戦争をふっかけるということでした。戦争を勃発させず、且つロシアの面目を保つためにアメリカと交渉を進めていくのでした。

3つめは我らがイギリス側。というかイギリス人の工作員Adam Munroが主人公です。赴任先のロシアにて、昔ベルリンで出会った元恋人(ロシア人)に出会います。彼女は旦那に先立たれ、子供一人を育てながらthe Kremlinにて秘書として働いていました。彼女は実際の政府を垣間見て絶望し、Murnroに内通するようになるのでした。彼女からMunroへ、そしてイギリス政府へ、それからアメリカ政府へと事情が流れていき、それを元にアメリカ政府はロシア政府と協定を結ぶために交渉を進めるのでした。

4つめはThor Larsenを船長としたFreya号の処女航海。これがまたなん出てきているのかと不思議に思うくらい(ま、のちのちに重要になってくるんだなとは予想はつきますが)、ま~ったく上の3つに関係なければ、特別な事件もなく、ただただ毎回、どこどこを通った、とか海の様子はどうだった、とかのどかなもんです。

それが!半分くらいいったところで、まあ大変なことになるわけです。
オランダ沖(確か)に着くという頃、Drake率いるクーデター軍団にシージャックされてしまうのです。彼らの要求は、刑務所に入っているユダヤ系ウクライナ人を当初の予定通りイスラエルに送れというものでした。さもなくば、船員を殺すか、大量の石油を積んでいる船を爆破するか、もしくはその両方をするとのことなのです。もちろんドイツ側は二人をイスラエルに送ることを前提に動き出しますが、そこへアメリカから横槍が入ります。というのは、ロシアがアメリカをつついてきたのです。あの二人をイスラエルにやったら協定は結ばない、と言ってきたのです。

とまあここから息つかせぬ展開になって、もうにっちもさっちもいかない状況になるのです。前半の一見退屈な、細かすぎるかと思うくらいの設定が大変効果を上げていて、全ての事情を知っている読者としては手も足も出ない状態がよくわかるわけです。

もちろん、全ての事情を知っていると思っていたのは虚構であって、最後の最後にどんでん返しが待ち受けていました。

このクーデター軍団の首謀者Drake、確かにcriminalかもしれませんがどうも憎みきれませんでした。
シージャックをした時に、船長に指摘されて怒るところなど胸をつかれました;

'I(Larsen) don't believe the RUssians will ever rise against their masters in the Kremlin. Bad, inefficient, brutal they may be; but they only have to raise the spectre of the foreigner, and they can rely on that limtless RUssian patriotism.'
......
'Damn and blast their patriotism,' he(Drake) shouted, rising to his feet. .......
'What kind of patriotism is it that can only feed on the destruction of other people's love of homeland? What about my patriotism, Larsen? What about the Ukrainians' love for their enslaved homeland? What about Georgians, Armenians, Lithuanians, Estonians, Latvians? Are they not allowed any patriotism? Must it all be sublimated to this endless and sickening love of RUssia?' (p409-410)

あと書き方で面白いなと思ったのが、Drake軍団がシージャックしてから時間が出るようになっていて、それがそれまでの雰囲気とがらっと変えて、緊迫したものを醸し出しているような気がしました。
いや~ これが書かれていた時代に読みたかった!!(1979年に書かれたものでした、実際)


(Frederick Forsyth 'The Devil's ALternative' Arrow, 1995)

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鈴木康士氏の描く表紙が好き

1巻を読んだ勢いで買ってしまった「心霊探偵八雲」。
なんかものすごく好き!ってわけではないけれども、なんとなく買ってしまった。なんとなく漫画を買う感覚に似ているのかも。

今回も晴香はきっちり事件に巻き込まれます。
晴香の友達が霊体験してしまい、晴香を頼って来、晴香は八雲を頼ろうとしますが、その時後藤がやってきたこともあって、一人で解決しようとします。
一方、後藤の訪問は、署長の娘が交通事故にあった男に憑依されたので、その徐霊せよとの命を受けてがために助けを求めに来たものでした。
それと同時に、世間を賑わせていたのは、連続少女殺人事件でした。

各々捜査していくうちに、署長の娘に憑依していたのが殺人事件の犯人だと分かり、晴香が関わっていたのも絡んできて、結局すべてが結びつくのです。


この巻で新たなレギュラーメンバー(たぶん)として、後藤の新しい部下石井が加わります。最初、後藤のことを尊敬しすぎて、あらぬ誤解を受けてしまいますが、当の本人はあっさり晴香に恋します。なんだかあっさりと身近の人に恋に落ちてしまって、安っぽい感じがしたのが残念です。なんならずっと誤解されていた方が面白いのに。
あと1巻からちらりと出ていた両目が赤い男が、どうやら八雲の父親ということも分かってきます。そしてその父親が悪の根源らしいのです。
瞳が異質であること、父親との確執、父親が黒幕であることなど、なんとなく由貴香織里の漫画・カインシリーズをほうふつしてしまいます。

なんて、不満を書いてしまいましたが、文庫が出たらまた買ってしまいそうです。
エンターテイメント本としては、十分役割を果たしている本でしょう。


(神永学 「心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの」 平成20年 角川文庫)

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感化されても いっこうに浮かばず みそひともじ

本屋で立ち読みして、なかなか面白いなと思いつつ、でもその日は買わず。なのになんとなく気になってしまって、また本屋に立ち寄って買ってしまった。それが「ショートソング」でした。

作者の桝野浩一さんは歌人らしく(何せ今まで短歌に興味がなかったので全然知らなかった)、この本もつまり短歌の話でした。

ハーフ顔のくせに自分に自信がない童貞国友は、憧れの舞子先輩にあてつけに利用され、歌会につれて行かれます。そしてそこで知り合った伊賀(ちなみに舞子先輩があてつけてやってやりたかった相手)は、天才歌人でプレイボーイ。
その歌会で国友が作った短歌を伊賀が絶賛したところから二人の交流が始まります。

話は端的に言うと、自信があまりない国友が自分の作った短歌を伊賀に認められながらも、伊賀に振り回され、伊賀はというと、早くに咲いてしまったが為の苦悩がありつつも、プレーボーイっぷりを発揮しながら最終的には全てをなくし(というか全ての女の人)を、短歌の再出発を目指すという感じでした。
まあ、劇的な事件が起こるわけでもなく、短歌をおりまぜて日常がつづられているのです。
でもその短歌をおりまぜて、ってのがすごくいい!というか、常に短歌が入っている感じが、ものすごくかっこよかったです。

色々短歌が出てくるのですが、なんだか私は言葉遊びっぽいのが好きな気がしました。
例えば;

 ミラクルで奇跡みたいなミラクルで奇跡みたいな恋だったのに
 馬鹿中の馬鹿に向かって馬鹿馬鹿と怒った俺は馬鹿以下の馬鹿

のような。
最後の終わり方がいまいちだったけど、それはもっと国友と伊賀さんの日常が見たかったからかもしれません。

(桝野浩一 「ショートソング」 2006年 集英社)

Category : 小説:現代
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八雲の左目の視力はいくつなんだろう

よく通る道のショーウィンドーにそのシリーズ全巻が並んでいて(多分出版社?)、とても気になっていた「心霊探偵八雲」シリーズ。ブックオフで見つけて買ってしまった第一作目「赤い瞳は知っている」。

予想していた通り、すらすら読める、割りと簡単な内容でした。そして予想外だったことは、一冊に一つの話が入っているわけではなく、3作はいっていたことでした。

主人公はその名も齊藤八雲。左目が生まれつき赤く、その目で死者の魂が見れるという。
話は(というかシリーズが?)小沢晴香が心霊関係の事件の解決を依頼に八雲のもとへ訪れたところから始まります。
八雲は伯父に引き取られてくらしているのですが、事情により大学の一角をサークル部屋としてのっとっていたのでした。


1に収録されているのは三つの事件。
まず「開かずの間」
大学のキャンパスのはずれにある雑木林の中の廃屋にて、肝試しをした大学生3人。そのうちの一人が晴香の友達だったのですが、その子の様子もおかしいし、もう一人の子も死んでしまうしで、八雲に捜査を頼むのですが、そのうちに殺人事件が発覚して・・・というお話。

次は「トンネルの闇」
トンネルはある意味、怪談の必須アイテムですが、夜中に読んだせいかちょっと怖かった。
これまた晴香が事件にまきこまれ(というか合コンで知り合った男に連れまわされ、そのトンネルに行ってしまう)、ひき逃げ事件の真相をつきつめることとなるのでした。

最後の話は「死者からの伝言」
これまた晴香の友達が中心となった事件なのでした。妻に毒を少しずつ盛られて死んでしまった男。今度はその妻が火事の焼け跡から死体となって見つかります。ところがその死体は、実は男の不倫相手だった晴香の友達だったのです・・・という話。


基本的な登場人物として八雲と晴香以外にもう一人、刑事の後藤がいるのですが、彼は八雲が子供のころ、母親に殺されそうになっているのを助けた時からの腐れ縁。色々と事件の捜査に協力させているのでした。

全体的に、本当にすらすら~と読める簡単なお話。ライトノベルの類なのでしょうか。
でも幽霊を調査しながら事件解決っていう設定が面白いし、エンターテイメントとして十分に楽しめました。
そんな中で霊魂についての解釈が面白かったです;

「幽霊の元は何だと思う?」
…(中略)…
「生きた人間」
「ご名答。別に卵から生まれて来るのでも、宇宙からやって来るものでもない。元はちゃんと感情のある人間なんだよ。では、幽霊とはそもそも何だと思う?…(中略)…
これはあくまでぼくの持論だが、死んだ人間の意思というか、想いというか、そういったものの塊じゃないかと思う…(中略)…
人間の記憶や感情はつきつめると、電気信号だと言われている。インターネットを流れる情報の渦は、人間の脳の仕組み酷似しているなんて言う人もいる…(中略)…
そう考えると、器をなくしてしまった瞬間に、人間の感情がすべて無に帰するわけでもないだろ。電機は器がなくたって流れるし、ネットの情報は元々の器が失われても、他の器に移り住むわけだ。死んだ人間の想いや情念が、その辺をふらついていても、何の不思議もない」(p164-165)

現代風な解釈ですなァ


(神永学 「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」 平成20年 角川文庫)

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花咲はいったいいつ寝ているのだろう

書評で「シーセッド・ヒーセッド」が面白いと書いてあったので借りたら、そのシリーズの3作目だと気づいて、あわてて借り直したのが「フォー・ディア・ライフ」by柴田よしき

あまり期待していなかったのが、読み始めたらもう止まらん!!かなりおもしろかった!
主人公をはじめ、登場人物が面白かった!!

主人公の花咲慎一郎は元警察官(マル暴)だったが、同僚を殺してしまったのをきっかけに辞めてしまい、今は新宿二丁目で無認可の保育園を営んでいます。
夜の新宿で働く人々の子供を安価であずかっているので、保育園は赤字状態。そんなわけで、花咲は資金繰りのために、探偵業も営む二足わらじの生活を送っています。
「フォー・ディア・ライフ」では、おもに二つの出来事が起きます。一つはヤクザ絡みの事件。花咲は探偵事務所の城島の依頼で、他の組の島を荒らしたとかでとっつかまったチンピラを助けます。それがきっかけで、そのチンピラ、仁志に手を焼くこととなるのです。
もう一つも城島の依頼で、行方不明になった金持ち娘を探す、というものでした。
まったく違った出来事ですが、最終的に微妙につながっているのが絶妙でした。

でもストーリーラインよりも、キャラがよかった。
シリーズ1作目のせいか、少々キャラの説明がくどいかな、と思ったのは否めませんが、影のある主人公の花咲。曲者なる城島(でもこの中では一番まともかも)。不眠症のヤクザ、山内。ちなみにゲイ。裏社会の美人女医奈美。ちなみにそんな境遇になったのは、現役時代の花咲のせいだったりする。
などなど。

ハードボイルドで行方不明、というせいか、なんとなく桐野夏生の「天使に見捨てられた夜」を思い浮かべましたが、主人公が男のせいか、「天使に~」よりも湿度が低い気がしました(なんとなく)。
ついでに柴田よしきってずっと男だと思っていたのですが、解説を読んで(ちなみにピーコだった)女と知り、非常に驚いた反面、やっぱりね、という感じでした。
ゲイの書き方がちょっと女の人っぽかった気がします。なんとなく。

あまりに勢いよく読んだおかげで、残った一文もなし。
これはある意味、いいハードボイルドならではかも。


(柴田よしき 「フォー・ディア・ライフ For Dear Life」 2001年 講談社文庫)

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