fc2ブログ

がらくたにっき |

映画にできそうな小説

デイヴィッド・ローゼンフェルト 「弁護士は奇策で勝負する」 白石朗・訳 2004年 文藝春秋




大分昔に妹が家に置いていった小説を今更読んでみた。
妹が言っていた通り“まあまあ面白かった”。

偉大な検察官の父親に比べ、割とだめだめな刑事訴訟専門の弁護士である主人公・アンディ。

父親が担当し、死刑判決が下った殺人事件。
その証言に偽りがあったということをある筋から知った、もう一度裁判をおこし、その死刑囚を弁護してほしい、と父親に要請される。
絶対負ける裁判、と分かっていながらも、父親からのお願いだからということで引き受けるアンディ。

ところが、その要請していた父親が突然死んでしまう。
荷物の整理をしている時、額縁に隠されていた写真を見つける。知らない面々と写っている写真に不審を抱いたアンディは、裁判の為の調査と共にその写真についても調べ始める。

捜査を進めると、アンディの身の回りがどんどん危なくなる。
写真の捜査のためか、裁判の捜査のためか…

死刑囚はやった覚えがまったくなく、殺人犯にでっちあげられたようだ、というところや、アンディの身の回りが危なくなるところから、その事件がきな臭い、というところが、なんとなく“Prison Break”を思い出してしまった。
まぁ、Prison Breakのような政治的なものではなかったけれども。
(以下ネタばれ)

スポンサーサイト



Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

ニコってブラジル出身なのにポルトガル語しゃべるシーンが全然ないな

恩田陸 「上と外 6みんなの国」 平成13年 幻冬舎




いやぁ~面白かった!
本当にハリウッド映画のように、出会ったかと思ったら離ればなれになってしまい…という繰り返しで、アドベンチャー感満載だった。

ただ難点を言えば、やっぱり最後が尻つぼみなような気がしてならない。
ちょっと投げやりになってしまったような…。
確かに最後の“めでたしめでたし”の部分は、今迄の調子で書いていくと冗長になってしまうかもしれない。
でもそれにしてはあっさりしすぎてないか?
なんかダイジェスト版って感じだったし。

最後の最後のオチは、お約束といえばお約束だったけれども、“ハリウッド的~”と思って楽しんでいる私としては、結構アリだった。

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

ハリウッド映画にしたら面白そうだな

恩田陸 「上と外 5楔が抜ける時」 平成13年 幻冬舎




話が佳境に入ってきて一気読みですよ~
今までは千鶴子は最高に嫌だったが、ちょっと好きになった1冊だった。

前巻では練がなかなか現れない!というところで終わったが、もちろん練は戻ってくる。
点呼を取り、さて解散、となっているのに目を光らせるニコ。すかさず不正して石を隠し持っている二人を見破る。
実は練も隠し持っていたのでひやひやしていたのだが、なんとか切り抜けられる。
と思ったら、練の寝床にニコがやってきて、“お見通しだよ”メッセージを伝えてくる。
でもおとがめもなく1日目終了。

地下回廊にいる千華子は、絶望的になっていたのだが、枝道に入るたびに番号をふっていこう、という案をうちたてる。
すぐ忘れてしまうのだが、千華子って小学生なんだよな…。
なんて不憫な…

賢たちは、ヘリコプターを抑えることができたので、捜索を開始しようとする。
が、なんとシティの方が閉鎖されているものだから燃料がないという。ただでさえジャングルを探すというのは当てがないのに、燃料的に3回しか飛行できないというのだ。

さてここで千鶴子の名誉挽回のシーンが出てくるのだが;

 彼女が感じていた居心地の悪さは、子供たちに対する後ろめたさだけではなかった。…千鶴子はクーデターが起きてからというもの、賢とミゲルに全てを任せっきりでいる役立たずな自分に自己嫌悪を覚え、これまで仕事に関しては有能だと言われてきたプライドをひどく傷つけられていたのである。今までそれらもろもろのことを気付かないふりをしていたのだ。が、眠りに落ちる前に彼女はそのことを全て認め、受け入れ、そして強く心に誓った。
 負けるものか。これから取り戻してみせる。(p28-29)

この不屈の精神、しかも“認め、受け入れ”て立ち向かう、という姿勢は大事だと思った。

そしてこの千鶴子の提案で、色とりどりの風船にメッセージを書き、それを二人が落ちた辺り、何箇所かに投下し、次はそこをめがけて飛行する、という作戦に打って出ることにしたのだった。


さて、また練のシーンに戻り、どうやら王が不必要に凶暴化しているようなのだ。
ニコは噛まれ、他にも負傷者が出ているらしい。
「成人式」の遂行も危ぶまれるか…?という時に、練の働きによってジャガーは穴に落ちて死んでしまう。
そこで「成人式」は終了。

その後、練はニコより“千華子が消えてしまった”ということを聞く。
二人で千華子が居た小部屋に行ってみると、果たして隠し扉を見つける。
そこから地下回廊に出たところで地震が発生。
どうやらイザベラ山が噴火したようなのだ…

残り1冊!

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

いまだに「上と外」の意味が分からない

恩田陸 「上と外 4神々と死者の迷宮(下)」 平成13年 幻冬舎




今回も次巻が大変気になるところで終わった。
タイムリーに読んでたら新刊の発売が待ち遠しかっただろうな。というか、図書館で一気に全巻借りてきてよかったよ。

さてついに『成人式』がスタートする。
夜中のうちに配られた石を『祈りの部屋』にある壺に入れる、という作業をしなくてはいけない。そして同じ空間にはジャガーが徘徊している。
一晩のノルマは10個。戻ってきた時にいくつ石が残っているかで明暗が分かれるのだった。

もちろん練も必死で『祈りの部屋』を探すのだが、まだノルマに達していない内に“王”であるジャガーに出会ってしまう。すっかり身をすくませてしまった練。時間が刻刻と過ぎていく。
挙句の果てには寝てしまっていたようで、気付いたら点呼の時間まで間もないのに、ノルマは全然達していない。パニックに陥る練。

さて点呼の時間になり、ニコは皆を呼ぶが練が一向に現れない。
練の名前を連呼するところで、実質この巻は終わっている。

同時進行で千華子と賢・千鶴子の話が入るのだが、まずは千華子。
熱が下がり自分が閉じ込められていることに気付く千華子。とりあえずニコからは三日間待ってほしいと言われていたので、三日待つつもりでいたのだが、抜け道への隠し扉があることに気付く。
そうなると出てみたくなって出てみると、そこは巨大な地下回廊であった。

目印にオセロの駒を置きながら進むのだが、突然水が流れてきてあっさり流されてしまう。
ということはオセロの駒も流されてしまうということで。
千華子はあっさり、巨大地下回廊での迷子となってしまったのだった。

子供二人よりもハッピーに進むのが賢・千鶴子。
前巻で衝突しそうになった車は、なんと賢たちを探している車だったのだ。
というのも、町工場の社長をやっている賢の父親(練が預けられているところ)が、自分の伝手を使って呼びかけていたのだ。

実はここのシーンがなかなか良い。
賢の父親は政府の要請で長年技術指導をしていたのだった。それで大変お世話になった人たちが動いて、ついには政府まで動かして賢たちを探しに来た、というのがなかなかの感動シーンである。
この技術指導という解説のところが、国際援助についてさらりと書いていたので、抜粋してみる;

技術支援というと新しい技術、新しい機械をそっくりそのまま移植することだという考えは、今ではもう時代遅れのものになっているが、目に見える援助としてはその方が簡単なので、どうしても支援というとそちらに流れてしまいがちだ。…
 本当にその国の産業が振興するようにするためには、技術の裾野を広げる必要がある。突出した技術者が一人いるよりも、そこそこの技術者が百人いる方がずっといい。…技術さえあればいいというものでもない。技術を生産、販売に結び付け、最終的には国全体でその産業の恩恵を受けられるようになることが肝心だ。…だが、それは高い機械を買ってあげるよりも遥かに難しく、手間が掛かる割には成果の見えにくい作業だ。(p58)

薄い本の割に、こうやってバックグラウンドがしっかりしてるから読み応えがあるんだろうな、と思った。

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

“著者のことば”によるとG国にモデルはないと言うが…

恩田陸 「上と外 3神々と死者の迷宮(上)」 平成12年 幻冬舎




やっと物語の展開というものが出てきた3巻。
こんな薄いのに物語が薄っぺらく感じないのはさすがだな。

練と千華子は目指してた遺跡に辿り着くが、そこは自分達が予期していた有名な遺跡ではなかった。
がっくりするものの、そこに目印を付けて、そこを拠点とすることにする。

魚を取ったりなんかしてサバイバル生活は続いていたが、彼ら以外の人の気配が鮮明になってくる。
そんな折りに千華子が大熱を出してしまう。

途方に暮れてるとこに現れたのがニコ。
なぜか日本語もしゃべれるし、二人の想像に反して都会的な格好をしている。
でも紛れもない、今まで感じていた気配。

そのニコに連れられて、彼の根城にやって来たのだが、千華子と離れ離れにされてしまう。

ニコとその他の少年達は、マヤに伝わる「成人式」という儀式に参加するために、世界のあちこちから集まってきた少年達だった。
ところが一人欠員が出てしまったので、練に代わりをしろというのだ。

その儀式というのが、王と呼ばれるジャガーと共に三日間過ごすというもの。
もちろん、練は断りたいところだが、千華子を人質に取られ、渋々参加することになったのだった。

一方、賢と千鶴子の方はというと、賢の仲間のミゲルと共になんとか逃げることができた。
懇意にしているヘリサービスの元へ行くが、生憎ヘリコプターは全て出払っていた所へこのクーデター。
車を借りて、そのヘリコプターが留まってるところまで行くことにするが、対向車とぶつかる!って所で終わり。

すいすい読めるので、さっさと全巻読み終わりそう。

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

千鶴子が嫌すぎて堪らない。

恩田陸 「上と外 2緑の底」 平成12年 幻冬舎




よく見たら1の2ヶ月後に出版されていたのね。
なんでこんな薄く出版したんだろう…。べつに分ける必要性を感じないんだけど。

それはさておき。
予想通り、練と千華子のジャングル・サバイバル話と、賢と千鶴子の反乱軍に拘束されながらも案じる場面が交互に描かれていた。ついでに賢の実家の様子も(1巻で練の回想によく出てきた)。

練と千華子はとりあえず、遺跡に向かおうとするが、途中で祭壇のようなものを見つける。
しかも1つではなくいくつも。
最後の最後に、その祭壇はただの石の塊ではなく、その下は通気口のようになっていて、『祭壇』通しが繋がっているようなところまで発見する。

という内容。

なんとなく練は高校生だと思ってたけど、よく読んだら中学生だったのね!そして千華子は小学生!
こんなしっかりしてる中学生と小学生。ジャングルでサバイバルできる中学生と小学生…。
今の子供はしっかりしてるから…と思いつつも、今の子供ってこんなサバイバル能力に長けてる?とも思ったり。
ま、細かいことはつっこまないようにしよう。

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

なんで“マヤ文明”まで出してるのに国名をあやふやにしてるんだろう

恩田陸 「上と外 1素晴らしき休日」 平成12年 幻冬舎




久しぶりに恩田陸。

全5巻の作品だが、1冊づつが非常に薄い。
なので1巻なんて、感想が書けないくらい序章。

まず登場人物は、考古学者の父親に、自由な母親(でも後妻)。先妻との子供の練に、後妻との子供の千華子。
両親は離婚しており、練は父親に、千華子は母親に引き取られている。
と言っても、父親の賢は仕事で海外でいるので、練は父方の祖父母の家に預けられている。

1年に1度、賢のいる所へ家族一同が集まるのが習わしとなっている。
今年もG国(といっているが、マヤ文明など出てくるのでメキシコでしょう)に集まったのだが、母親の千鶴子の様子がおかしい。
千華子によると、10歳年下の恋人ができて近々結婚するようなのだが…
(ここからネタばれ)

Category : 小説:現代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

相方のHugh Laurie=Houseと気付くのに暫くかかったが、面影ある~

Stephen Fry "The Fry Chronicles", 2010, Penguin Books




イギリスに遊びに行った時に本屋で並んでいたので、「確実に日本に売ってないしいいよね!」という言い訳で、荷物が重くなるのを承知で買ってしまった。

結果としては大満足。
やっぱ、面白いわ~、この人。
日本ではStephen Fryの本は何一つ翻訳されていないけれども、本当に面白いんだけどなぁ。まぁでも日本語にしてしまったら、面白さが激減するくらい、イギリス英語独特な言い回しを面白いような気がするが。

本書は彼がケンブリッジ大学に入学してから、最高に売れた30歳までの自伝となっていて、サブタイトルが総て“C”から始まる凝りよう。
実は彼の事はコメディアンとしてしか知らなくて(しかも実際に彼のコメディーを見たことがない)、本当は俳優からスタートしていたということを初めて知った。
本書の前に"Moab is My Washpot"があるみたいで、それを読んでからの方が格段に面白かったのだろうけれども、どうやら(今更ながら)"The Liar"は自伝的小説だったみたいで、それを読んでいた私は、難なく読むことができた。

Stephen Fryの作品を読むたびに思うけど、本当に彼の文体が好き。
決してダイレクトに語らず、色んな言葉を使ってごちゃごちゃ言う感じがなんとも言えない。
自分でもそこんとこを自覚しているようですが。
しかもウィットに富んでいて、それも好き。
例えば、歌が下手で絶対に口パクでしか歌わないというエピソードで;

At John Schlesinger's funeral at a synagogue in St John&s Wood some years ago the person I stood next to said to me encounragingly, 'Come on, Stephen - you're not singing. Have a go!'
'Believe me, Paul, you don't want me to', I said. Besides, I was having a much better time listeining to him.
'No. Go on!'
So I joined in the chorus.
'You're right', Paul McCartney conceded. 'You can't sing.' (p401-402)

何気ないけれども、話し相手がポール・マッカートニーっていうのをオチとして出してるの妙にツボ。こういう細かい部分での、“話を面白くする見せ方”ってのが私の好みに合っている。

あとはStephen Fryの作品に共通するのが、イギリスのUpper-Middleクラスの生活が分かるところも魅力的。
とくにOxbridgeの生活なんて、非常に興味津津な私としては、Cambridge生活の部分は大変面白かった。
正直、俳優・作家として大成していく部分は、沢山に有名人が出てこようとも知らない人ばかりだったので(もちろんポール・マッカートニー級になると分かるけど)、そこまで面白くなかったので、割とすっとばしてしまった。

それにひきかえCambridgeの生活ときたら。
私自身Cambridgeはとても好きな場所なので、そこが生き生きと描かれているのが良かった。
なんというか、あんな頭良くて、家柄がいい人たちが集まる場所を、軽快に面白く書かれているってのは、なかなかないんじゃないかな。

基本的には面白いのだが、1点なかなか考えさせられたのが“Incuriosity is the oddest and most foolish failing there is.”(p87)という言葉。
(歩道いっぱいに金が転がっている街で、物乞いが「お金をめぐんでください」と言ってきたら?という例え話の後)

When people complain that they don't know any literature because it was badly taught at school, or that they missed out on history because on the timetable is was either that or biology, or some such ludicrous execuse, it is hard not to react in the same way.
'But it's all around you!' I want to scream. 'All you have to do it bend down and pick it up!'... As one who was expelled from any number of educational establishments and never did any work at any of them, I know perfectly well that the fault lay not in the staff but in my self that I was ignorant. Then one day, or over the course of the time, I got greedy. Greedy to know things, greedy for understanding, greedy for information. (p87-88)


Stephen節とCambridge生活の描写、それだけで満足な一冊だった。
最後の展開として「え!?Stephen!?」てな感じで終わってしまっているので、多分続編が出るのだろう(なんせ自伝ったって30歳までしかないので)。是非読みたいところだけど、その前に前作の“Moab is My Washpot”を読まなくては!

Category : 自伝
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback
該当の記事は見つかりませんでした。