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がらくたにっき |

ホームズが実は生きてた設定、やっぱちょっと無理があるような

コナン・ドイル 「シャーロック・ホームズの生還」 安倍知二・訳 1960年 東京創元社




ホームズが滝から落ちて、「バスカビル家の犬」を間に挟んでワトスンとの再会を描いた短編が入っている「シャーロック・ホームズの生還」。
いつもの偕成社の児童書版が借りられていたので、文庫版を借りてみたのがそもそもの過ちだった。

慣れ親しんでいないのもあるかもしれないけれども、訳があまりに古すぎる。
だからなのか知らないけれども訳自体もへたくそ。
ホームズとの再会のシーンなんて感動してもよさそうなのに、全然感動しなかった。

途中で“ニュース”を“ニューズ”と訳しているとこが出てきて、もう我慢の限界だ!ということで、偕成社のを借り直した。

ということで、この本で読んだ分だけを記載しておくと;

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ダートムーアに行ってみたい!

コナン=ドイル 「バスカビル家の犬」 1985年 偕成社




絶対読んだことがあるのに、ほぼ覚えていなかった。
残っているのは、ダートムーアから想像できる荒野(嵐が丘のような感じ)の暗闇に犬の遠吠えが聞こえる、というイメージ。
そう遠くないイメージだけど、全く覚えていなかったおかげでワトスン君と一緒になってホームズに騙された。

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2005年ってこんなだったのね

横浜信一/萩平和巳/金平直人/大隈健史/琴坂将広 「マッキンゼー ITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する」 2005年 ダイアモンド社




所属している情シス部の中期目標をたてるチームが入ってしまったが為に、慌てて読まなくちゃ!と思って「読む本リスト」に入れていた一冊。
やっとこさ借りてみたけれども、ちょっとタイミング的に遅かったかな…とも。まぁ図書館で借りようというところで熱意が足りないのかもしれないけれど。

その遅いついでに、2005年出版ということで話もちょっと古かった。
何せあのリーマンショック前。ちょうどITバブルが起きている頃。
そんなわけでちょっと今と事情が違う。

あと、一人の人が書いた本だと思ったら(ちゃんと調べていない自分が悪いが)、複数の人のエッセイの寄せ集めで、ちょっと話がかぶるところが多かった。

そんなこんなで、ざーっと斜め読みして終わってしまった。
とりあえずまとめてみると;

「IT投資の質の向上のために」by横浜信一
どうやら本書が出版された時代というのは、第一次IT投入にて計上されたIT資産の償却が終わる頃で、そんなわけでITブームがまた沸き起こっていた頃のようだ。
しかし最初に投入した時に比べたら、企業はIT投入に積極的ではない、なぜなら投入したもののコストばかりかかってその分成果を得られたように感じられないからだった。

というわけで、そもそもIT投資って何か?というところから始める。
曰く、「ITがあって生産性が向上するのではなく、まずはイノベーションや規制緩和があって新しいビジネスモデルが生まれ、それを支える道具としてITを活用する(p7)ということ。

以下のエッセイも、基本的にこの考え方によっている気がする。

「今度こそ正しいIT投資を」byダイアナ・ファレル、テラ・ターウィリガー、アレン・ウェブ
今度こそ成果の得られるIT投資をしよう、というエッセイ。
それは全体的なIT導入ではなくて、ピンポイント―ここでは“競合との差別化をもたらす生産性向上の「レバー(梃子)」―に合わせたIT導入をはかるべきだ、という。

例えばウォルマートのようなGMS(巨大スーパー)であれば、低いマージン、膨大な商品数、高い商品回転率が特徴となる。それを支えるには商品の滞留時間短縮が必須である。そのため、優れた倉庫管理・輸送管理システムの確立が最重要課題となるわけだ。

賢明なIT投資とは、「何に」「いつ」取り組むべきかを見極めて行うものだ、というのが結論。

「ITの複雑さと戦う」byフランク・マターン、シュテファン・シェーンヴェルダー、ウォルフラム・シュタイン
IT投資が失敗に終わったように感じる理由の一つに、システムが複雑になってしまったというものがあげられる。
エッセイが書かれた当初は新たなITブームが到来しているとはいえ、その前に“コスト削減”という目標がある。
いかに低コストでシステム投入を行うか、という話。
結局それは過去の課題であった複雑なITを紐解いていくのが鍵となる。

つまりはITアーキテクチャーを見直し、アウトソーシングも視野に入れつつ、複雑なシステムを落とし込むというのがポイント。

「IT購買における質と決定者の変化」byケンダル B. デービス、ブライアン L. スキャンロン、ジェレミー D. シュナイダー、オーディッド・バイス
償却が一巡したのでIT投資の余地が出てきたが、前回とは企業が求めているITとはトレンドが異なるようだ、という話。
つまりはニッチパッケージが主流となっているよ、という。

「次世代のCIOとは」byデビッド・マーク、エリック・モンワイエ
経営戦略にCIOも入れて、戦略にITを入れましょう、という話。

「ITをめぐる説明責任と協力体制」byダン・ローマイヤー、ソフィア・ポグレビ、スコット・ロビンソン
説明責任なんてアメリカ人の好きそうな単語…と思いながら読んでいたが、要は、IT部門と事業部門の調和をはからなくてはいけません、という話。
説明責任というとなんだか恐ろしいけれども、IT部門・事業部門ともどもお互いの仕事内容をアウトプットしないと、お互いに理解できず、そしてお互いの理解がないと曖昧なシステムしかできなくてコストの浪費になってしまうよ、という話(多分)。

「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)から利益を得るには」byマイケル・ブロック、シュテファン・シュパン
アウトソーシングはコスト削減につながる一方、リスクもはらんでいる。そのリスクを回避するためには…という話。
自社の能力を洗い出して、それを検討したうえでのアウトソーシングを考えるのが鍵。

「攻勢に出るオフシェア・ビジネス―コスト削減はほんの入り口にすぎない」byジョン・ヘーゲルIII世
これまたアウトソーシングの話だが、アメリカ国内ではなく国外にアウトソーシングする話となる。しかもインドや中国などアジアがターゲット。
ひたすらプラス面の話で、安い上に大変質がいいと言う。

「ドイツ銀行のIT革命―ドイツ銀行ヘルマン-ヨーゼフ・ランベルティ COO兼CIOインタビュー」byフランク・マターン、シュテファン・シュパン
事例。
アウトソーシングとオフシェア・ビジネスを使って成功した例。

「ユニクロの高収益を支える「業務改革」とそれを実現した「IT」―ファーストリテイリング堂前宣夫副社長インタビュー」by萩原和巳
事例その2。
こちらはITをただのツールとして使用し成功した例。
堂前氏によるとIT部門があるなんてナンセンス、事業部の中にITプロジェクトがあるのが妥当だろう、という話。

Category : ビジネス書
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呂奉先の赤兎馬が出てきたところで「三国志」を読み途中だったことを思い出した

仁木英之 「僕僕先生」 2006年 新潮社




本の交換会で紹介されていた本で、表紙のかわいらしさが印象的だったのもあり、図書館で見かけた時に「そういえば!」ということで借りてみた。

ところがこのかわいらしい表紙があだとなって、私としては一向に楽しめなかった。
確かに設定は変わっていて面白いと思う。
仙人が女の子、というのが斬新的だし。

しかし表紙の絵が強烈過ぎて、読みながら頭に浮かぶ僕僕先生はこのかわいらしいお姿。
物語の最初の方はそれでも支障はない。雲に乗った姿もさぞ愛らしかろうと思って読んでいた。
ただ僕僕先生の弟子となった人間の王弁が僕僕先生に恋心を抱くようになる、となると話は別だ。
何度も言うが、表紙の僕僕先生はかわいらしい姿、つまり10歳くらいの女の子にしか見えない。
いくら本当に年齢はすごかろうと、外見が10歳のような女の子に恋し、あまつさえいちゃいちゃシーンが少なからず出てくるとなるとどうか。ただGRO~~SSってなもんだ。

話はというと至ってシンプル。
ボンボンの王弁は何もかもにやる気がない。ぼ~~っとして生きている青年。
そんな王弁に対して不満を持つ父親は、仙人に興味があって、王弁に仙人にお供えして来いといって送り出す。
そこで出会ったのが僕僕という仙人。

僕僕先生いわく、王弁には仙骨はないが仙縁はあるという。ちなみに王弁の父親にはどちらもない。
王弁の家に暫く通っていた僕僕先生だが、妖術の類いを嫌う政府から目を付けられたのもあって、王弁をお供にして旅に出ることになる。

その旅のなか、何に対してもやる気のなかった王弁が成長していき、ついでに僕僕先生との関係もちょっと変わっていき…てな感じになる。

僕僕先生は人間界が好きで留まっているのだが、人間界と天界の溝はどんどん深まってしまった。
そういうわけで天界の住人は天界に戻るように、というお達しが来るのだが僕僕先生はなびかない。
でも政府の方がうるさくなってしまったので、結局人間界から離れることになったのだが、その時に帰ってくる目印になるから、といって王弁に杏の実を渡す。

杏の実を植え木に育てた王弁の元へ、僕僕先生が再び現れる、というところで話が終わる。


中国の話の割には、文章に漢字が少なく、軽いタッチなので読みやすいといえば読みやすい。
ただ、仙人が女の子、という設定以外はあまり目新しいものはなく、しかも話にそこまでメリハリがなくてぼんやりとした印象になってしまっていた気がした。
期待していた分、残念だった。

Category : 小説:歴史
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私も関西出身なので栃木と茨木の違いがよく分からず、栃木県民と茨木県民に怒られてた

高殿円 「トッカンVS勤労商工会」 2011年 早川書房




そういえば「トッカン」の続編が出たんだったわ、と思い出して、図書館で予約して借りた「トッカンVS勤労商工会」。
めちゃくちゃ面白かった!!!
「トッカン」も面白かったので、借りた途端わくわくそわそわして、読み始めたら一気、すぐ読み切った。
読みやすいのもあるけれども、主人公のぐー子がもがきながらも乗り越えて行くのが快感であり励まされる。

今回は鏡特官の出番があまりなかったけれども、鏡特官の同郷の友達というのが出てきて面白いこと。
前の巻よりも面白い人物が沢山出てきて次の巻も期待してしまう。

Category : 小説:現代
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ホームズといえばディア・ストーカー・ハットだけど、挿絵はいつもシルクハットか山高帽だよな

コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズの思い出(下)」 大村美根子/沢田洋太郎/中尾明・訳 1983年 偕成社




「最後の事件」が入っている本書。これで気持ち的にシリーズの半分来た感じだろうか。
正直、この本はそこまで好きな話がなかったので残念だった。特にキモである「最後の事件」は期待しすぎたせいか、ちょっとがっかりした。

(下)となっているくらいなので、これも短編;

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暗号文を翻訳するのは難しかっただろうな

コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズの思い出(上)」 沢田洋太郎/大村美根子・訳 1983年 偕成社




凝った推理小説ではないのにぐいぐいと引き込まれるシャーロック・ホームズシリーズ。
ワトスンが敬愛し、時にはその性格に嫌気をさすシャーロック・ホームズの魅力なのだろうか。実際にこんな人いたら困る、と思いつつも目を離せないキャラという感じ。
そして魅力の一つは、ホームズはいつも勝たないということ。そして間違えるとちゃんと反省する。例えば「黄色い顔」という話では、最後にワトスンにこう言う;

「ワトスン、ぼくがすこしうぬぼれたり、手をぬいていると思ったら、<ノーバリ>とささやいてくれたまえ。そうしてくれると、おおいにありがたいよ。」(p109)

いつも尊大なのに、自分がプロであるところは謙虚なのがいい。

さてこの“思い出”も短編集なので収録作品をまとめてみると;

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食べながら読むのには全く適さない本だった

セリーヌ 「世界の文学42 セリーヌ/夜の果ての旅」 生田耕作・大槻鉄男訳 昭和39年 中央公論社




「坂本竜馬の手紙」の対となる本が、この「夜の果ての旅」であった。
「書評家<狐>の遺産」で挙げられている本とはバージョンが異なるが(訳者は生田耕作だが新しいバージョン)、これしか図書館になかったので借りてきた。

久しぶりの長編で(小さい文字に2段!)読み切れるか心配だったけれども杞憂に終わった。
とにかく面白い。
主人公のバルダミュの波乱万丈の半生を描いているだが、ぐいぐいと引き付けられる。とにかくリアルなのだ。

簡単に言うと、バルダミュが戦争に行き、アフリカに行き、アメリカに行き、それからフランスに戻ってそこでの生活を描いているのだが、アメリカまでの話は文句なしに面白かった。
こう書くと冒険譚のようだけれども、実際はそんな爽やかな物語ではなくて、逆に汚くてグロくて臭くて、しかも絶望的でどうしようもない話である。
バルダミュもすばらしい人でもなんでもなく、いつも女たちと犯ることばかり考えていて、情熱も大してないし中途半端な印象がある(私にとって)。

ひどい環境の中で一生懸命生きて行く、という話というよりは、ひどい社会にもまれて流されていく話に近いかもしれない。
実際に社会に挑んで生きていく人なんて現実の世界でも少数派なのだから、却ってバルダミュのような人の話がリアルに感じるのかもしれない。

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竜馬って明治の頃から人気者なのね

嶋岡晨 「坂本竜馬の手紙」 昭和57年 名著刊行会




久しぶりに“<狐>の読書遺産”より。
坂本竜馬はあんまり好きでないので、というか幕末にそもそも興味がないので、まず自分では手に取らないだろう「坂本竜馬の手紙」。
幕末に興味ないが高じて、あんまりよく知らなかったのにもかかわらず、なかなか面白かった。

しょっぱなに、作者の元へ竜馬が現れ、今の政治家はおそまつ過ぎる…といった会話が始まった時には、え・こういう話なの…?こんなファンタジーみたいな感じで現代政情でも話し合うのか?と心配になったけれども、ちゃんと手紙の話だった。
なんか最初の部分はいらなかったような気がしてならない。

なにはともあれ、三部構成になっていて、第一部は竜馬について、第二部と三部は幕末の人々がピックアップされている。
目次を抜粋するとこんな感じ;

I
「痴情」の政治―竜馬との対話
坂本竜馬の手紙
脱藩者の夢
竜馬を愛した女たち
腰折れ詠む志士―竜馬と和歌
変貌する竜馬像
II
お竜小伝
中岡慎太郎
武市半平太
幕末四賢候
徳川慶喜
III
岩崎弥太郎
谷干城
太田黒伴雄
雲井竜雄

圧倒的に第一部が面白かった。

竜馬は自分の思想を記した書籍は残していないが、その代わり手紙が沢山あるようだ。
時々ふざけた感じになりつつも、自分の思想を書いている。
例えば

「かの小野小町が名歌詠みても、よく日照りの順のよき時は、請合い雨がふり申さず。あれは北の山が曇りてきた所を、内々よく知りて詠みたりしなり。新田ただつね(義貞の誤り)の太刀おさめて潮の引きしも、潮時を知りての事なり。天下に事をなす者は、ねぶと(方言で「腫れ物」)もよく腫れずては、針へは膿を付け申さず候」―腫れ物に針を突き刺し、膿汁をしぼり出すにしても、十分化膿させてからでないと、効果がうすい。そのように、行動を機の熟すのを見すえて起さねば、無意味に終わる、と説くのである。(p26-27)

は姉にあてた手紙。タイミングを見計らう、というのは竜馬の得意とするところであったのでは?と思う。

第一部で特に面白かったのが、強い女にばかり魅かれるという竜馬の恋遍歴を書いた“竜馬を愛した女たち”も捨てがたいけれども、何よりも“変貌する竜馬像”。

まずは自由民権運動の像として竜馬は明治16年の小説に初めて登場する。
それから庶民が親近感を持てる英雄として親しまれるのだが、日露戦争開戦直前に皇后の夢に現れた、という戦争プロパガンダに使われる。大正元年には「皇国的信念」「勤王的信念」に傾いた竜馬像が描かれる。
それから史実に近づけようという研究が進み、竜馬の行動・思想に正しく肉付けされたものとして真山青果の「坂本竜馬」が出てくる。それから講談などでも出てくるのだが、昭和14年の嵐寛寿郎の「海援隊」でまたもよ皇国的精神を持った像として出てくる。
戦後に初めて竜馬の研究をしたのが、なんとアメリカ人。
それから研究が進み、平和主義者としての像が確立されていく。
戦後の竜馬像を確立したのが、言わずもがな、司馬遼太郎の「竜馬がいく」。
その後も新左翼の動きを反映した竜馬像も出てくる。

といった感じ。
なかなか面白い。こんな像が変遷していった人物ってそういないのではないか?


第二部で特に書くことはないけれども“幕末四賢候”と“徳川慶喜”の部分は、「幕末政治家」を思い出したが、そこに何が書かれていたかさっぱり忘れてしまったのが残念だった。

第三部では岩崎弥太郎が詩人だったというのには驚いたが、何気に谷干城が印象的だった。
竜馬は日本という国が確立する前に死んでしまったが、平和主義を主張し伊藤博文を批判し、命が狙われているという時には「我らは維新前すでに死を決したれば…」(p229)という覚悟があるのがすごい。
命を張る、というところまでいかなくても、自分の保身に走らないで、これくらいの気概がないと政治って動かせないんではないか?と思った。

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ひとみさん達は、ぽいぽいと正太郎やサスケに甘いものあげてるけどいいの?

柴田よしき 「猫探偵・正太郎の冒険I 猫は密室でジャンプする」 2001年 光文社




軽いものが読みたくて借りた柴田よしきの正太郎シリーズ。
前2作とは変わり短編集だった。
それもあって寝る前に読むのにぴったりだったが、なかなかしっかりした推理小説も入ってた。タイトル通り密室物もあったし。
猫が探偵といったら、言わずと知れた三毛猫ホームズがいるけれども、こちらは猫目線のせいか親近感もわくし、“暇だから人間が起す変な事件を解いたろか”的なのがなかなか面白い。

以下収録作品;

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遺産は昔から大きなテーマだったんだな

コナン・ドイル 「シャーロック・ホームズの冒険」 石田文子・訳 平成22年 角川書店




シャーロック・ホームズ読み始めて初めて大人用の本。

「シャーロック・ホームズの冒険」は短編集なので、前の2冊であったような冒険譚はない。
あそこの部分が割と好きだった私としては残念な気持ちもあるけれども、なければないでホームズの論理的な推理が印象的になるのでそれは十分面白かった。

シャーロック・ホームズ、本当に鼻持ちならない人だけど、筋道たてた話は本当に面白い。
まぁよく考えるとこじつけ…となるかもしれないけれども、読んでいる最中では“ほぉ~”となる。
そしてワトスンもしきりに言っているが、ホームズがズバッと当てるときには“なんで分かるの!?”となるが、実際に論理立てて説明されると取るに足らなく感じる。
手品で“うおぉ~”となるけれども、タネを明かされると“あ、なるほどね”となるのと同じ感覚で、ホームズが「だから種明かししたくないんだよね」というようなことを言ってはいるけれど、そこが読者としては面白い。

推理小説って結局種明かしのところが一番面白いんだと思うけれど、私が今まで好んで読んできた本は、この“タネ”となるところがなかなか凝っている。だからタネに対して“うおぉ~”となってきた。
でもホームズの場合は、タネの部分は割と大したことない。その小さな“大したことないこと”の積み重ねで“うおぉ~”に繋がるという、なんか逆をいく感じで新鮮な気がする。

さて収録されている作品は以下の通り;

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メアリと出会うところから始まり婚約するところで終わるとは、なかなか手が早いですな、ワトスン君

コナン=ドイル 「四つの署名」 中上守・訳 1983年 偕成社




はまってしまったシャーロック・ホームズ。
シャーロキアンが出るだけあるな、この面白さ。今更だけど。

そして子供の本のはずなのに、内容がとっても子供用でない。
何しろホームズがコカインの注射を打つシーンが非常に克明に描かれているのだ。
というかこの「四つの署名」出だしがこのシーン!;

 シャーロック=ホームズはマントルピースのすみjからいつものびんをとると、モロッコ革のこぎれいなケースから注射器をとりだした。そして、白くて長い神経質そうな指で細い針をとりつけ、シャツの左のそでをまくりあげた。ちょっとのあいだ、ホームズの目は、ぷつぷつと無数に注射針のあとのあるすじばった前腕から手首のあたりに、じっと考えこむようにそそがれていた。やがてホームズはするどい針をずぶりとつきさし、小さなピストンをおしさげると、満足そうにほうっとため息をもらして、ビロード張りのひじかけいすにふかぶかと身をしずめた。(p7)

ただひらがなが多いだけで、中身はなかなかアダルティー…

さて、「四つの署名」。
ワトスン君の未来の奥さんとの出会い編となっている。
時期的にはワトスン君が、「緋色の研究」を上梓した後くらいのようだ。

「四つの署名」も「緋色の研究」のように途中で入っている物語が面白かった。

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ワトスン君もドイルと同じくスコットランド人なのだろうか?

コナン=ドイル 「緋色の研究」 1984年 偕成社




今読んでいる本がシャーロックホームズにちなんだ話なのだが、ふとシャーロックホームズを全作読んだっけ…?となったので、この機会に全部読んでやろうということになった。
きちんと出版された年代順に…と思って図書館に勇んで行ったら、子供用のしかなく。
でもちょっと読んだ限りでは、ひらがなが多いだけで端折ることもなく書いてそうだったので偕成社の本を借りてきてみた。

まずは1作目の「緋色の研究」。

子供の頃にこの偕成社の本で読んだのに違いないのだが、果たして私は理解していたのだろうか…?と思ったのが第一の感想。
だって今読んだ方が断然に面白いよ!
確かに子供の頃はシャーロックホームズよりもルパン!と思っていたけれども、こりゃ大人になってこその面白さだったような気がする。

(ここからネタばれ含みます)

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アメリカ出張時泊まったホテルの横のスタバの店員は、思いっきし態度悪かったけどね

ハワード・シュルツ、ジョアンヌ・ゴードン 「スターバックス再生物語 つながりを育む経営」 2011年 徳間書店




「戦略と実行」と同じ理由で読んでみようと思った「スターバックス再生物語」。

スターバックスが落ち目だったときなんて知らなかったので、“再生物語”と書いてるのに“はて?”という感じだった。
読み始めてびっくり。2008年頃から落ち始め、シュルツ氏がCEOに戻ってからもどんどん株価が下がっていたらしい。
結果、あんなにあった店舗を閉じなくてはいけない(アメリカ国内で)事態にまで陥ったというのだ。もちろんリストラもせざるを得ない。

正直スターバックスラバーではないので、スターバックスの事情をめちゃくちゃ知りたいというわけではなかったが、それでもなかなか面白かった。
一時はどん底まで落ち、色々と模索しようともなかなか上手くいかず、一度なんてマクドナルドに“おいしいコーヒーランキング”の首位を奪われ(これを読んだ時はスターバックスが落ちたんだ、という感想よりも、アメリカ人の舌は大丈夫か?と思ってしまった)、もうだめなんじゃないか?というところまでいったのに、2009年には急成長を獲得できたのだ。

ちょっと印象的だったのが、スターバックスが再生できた要因の一つにIT推進があったことだ(職業柄ね)。
それまでお店には前時代のPCしかなく、ホームページも商品のラインナップを記載するくらい。
それを最新の機器に変え、しかもお客様が意見を投稿できるサイトに変えた。
天下のスターバックスが今更IT戦略!?しかもアメリカの会社なのに!?といささか驚きを隠せなかったけれども、IT戦略の成功例の一例のような気がした。

まぁ後は、いかに策に打って出たかというのが綿密に書かれていたので、わざわざここには書くまい。てかそもそも読んでない。誰がどのような能力を持っていたので、どこのポジションに抜擢、とかあんまり興味ないし…
そこで印象的だった文章を連ねてみる;

 スターバックスのコーヒーは特別なものだ。しかし、真に提供するのは感情の絆である。
 とらえにくい概念であり、経営者は真似をするのが難しく、皮肉屋は冷笑する。感情への投資はどれだけ儲かるのか、と。わたしはその答えをよく知っている。
 パートナーがサンディーのようにスターバックスを誇りに思えば、お客様の、そして一緒に働く仲間の体験を進んで高めたいという気持ちになる。まさに、一杯のコーヒーからだ。(p154)

企業が大きくなったからといって、成功を持続できるとは限らない。わたしを魅了した大きな数―四万店舗!―は大切なことではないのだ。唯一大切な数字は“一”である。一杯のコーヒー、一人のパートナー、一人のお客様、一つの体験。(p200)

あれ、もっとあると思ったら2文ほどしか印を付けていなかった…

正直、スターバックスの騒動をめぐっては感動的なシーンは多々あった。
例えば店舗を閉鎖すると発表した時に、お客様から次々と“私の”スターバックスは助けてください、という嘆願が寄せられた、とか。

でもいかんせん、シュルツ氏が多弁すぎる。こんな分厚くなくてよかったんじゃないか?というくらい。
アメリカ的なのかもしれないけれども、一つの問題点、一つのアイディアを語るのに装飾的な文章が多すぎる。
最初の方は“なかなか面白いじゃないか、どう解決していったんだろう”とワクワクしていたのに、こうもだらだらと書かれてはうっとうしくなってしまった。
シュルツ氏のスターバックスへのあふれる愛ゆえになのかもしれないけれど…

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刑務所内の売店の充実度にびっくり

有村朋美 「プリズン・ガール」 2005年 ポプラ社




立ち寄ったジュンク堂でアメリカフェアの中にあった「プリズン・ガール」。
日本人女性が体験したアメリカ獄中記…絶対面白い!
と思って即図書館で予約(ジュンク堂にいても買わない…ごめんねジュンク堂)。

他の本にかまけている内に延滞になってしまい、慌てて読み始めたのが木曜日の夜。
そしたらあまりに面白くて、しかも読みやすいのもあって一気読みしてしまった。まだ木曜日なのに!
おかげで金曜日は眠かったのだが…

著者の有村朋美さんは、語学留学先のニューヨークで突然FBIに連行される。
彼氏がロシアンマフィアでドラッグディーラーだったのだ。
彼が捕まってしまったのもあり、有村さんも捕まってしまう。
もちろん彼女は彼の仕事を一度も助けたことはないのだが、アメリカでは荷物の郵送にクレジットカードが必要らしく、彼にカードを貸してしまっていたそうだ。もちろんその荷物というのはドラッグ。
また、合鍵を持っている彼氏は、有村さんが不在中にドラッグを部屋に置いたりもしていて、そういうのがすべてFBIに握られていたというのだ。本人は全然知らなかったのに……

“知らない”というこを証拠立てて証明するのは難しいと弁護士に言われた有村さんに残された選択肢は;
 (1)無罪を主張し、裁判を闘う→敗訴する可能性の方が大
 (2)自らの有罪を認め、量刑審判を受ける→裁判で負けた時の約半分の求刑となる
 (3)司法取引する
その中で(2)を選んだ有村さんはコネチカットにあるFCI(連邦刑務所)に2年服役することになる。

ところが恋人のアレックスには、実は妻がいて子供2人いて、しかももう一人愛人がいて、こちらも妊娠中だったそうだ!
それをFBIに言われて、突然手錠をかけられた時よりもずっとずっとショックだった…というのは、なんだか非常にリアルだった。やっぱりイベント的なものよりも“人に裏切られる”ということの方がずっとショックだよなぁ~と。

さて有村さんが入れられたFCIは割と自由なところだった。
もちろん刑務所だから“楽しい”わけではない。
でも手続きの関係からしょっぱなに懲罰房に入れられ、散々な目にあったためか、その後の生活に対してそこまで憂欝に感じなくて済むようになる。

FCIの囚人は主にドラッグ関係で捕まった人が多いせいか、プエルトリカン、黒人が多かったようだ。なんと白人がマイノリティー。
有村さんは入ってすぐの頃に、しきりに色んな人から“ここは悲しい所だから”と言われる。
刑務所なんだから楽しいわけないのだが、“悲しい”というのは、たった一回の過ちで家族とばらばらになってしまい、時には終身刑やら、懲役200年などになってしまう。

非常に印象的だったのが、中には司法の抜け道を必死に探そうとして法律図書館に通い詰める人がいるということだ。
彼女たちは「私はだまされてここにる。私は悪くないのに…」と主張しているという。

「自分は悪くない」と信じこんで刑に服するのは、本当につらいだろうな、と。私はアレックスがロシアン・マフィアだと知ってつきあっていたのだから、そのこと自体が悪かったんだといわれればあきらめがつく。事実、そう割りきった。そして、自分の「罪」を認めた。そして、だからこそ泣きごとをいわないでおこうと決めた。…
 だけど、ミス・ビビや、あの法律図書館に通う人たちは、あきらめがつかない人たちなのだ。五年、一〇年、二〇年と、あきらめがつかないまま、ここで生きなければならない。それは、どんなにつらいことか。(p214-215)

罪を認めるということは、自分を受け止めること、それは自分を救うことにも繋がるのか~と初めて気付いた。

などと書いたけれども、基本的にこの本はあっけらかんとした印象を受ける。
FCIの人々や生活を軽いタッチで書いてある。
アメリカならではの管理のなってなさ(有村さんが入った時の担当が適当すぎてお金を取られたり、オリエンテーションがなかったり、挙句の果てには帰国直前にFBIに提出したパスポートが失くされてたことが発覚したり)、個性的な人たち(刑務所に入ってるからにはね…)、洗濯機や乾燥機、電子レンジを巡るバトル、スタッドと呼ばれる男役の人たち、レズカップル続出とそれにまつわるゴシップ話などなど。

よくよく考えたら、そんな魅力的に書いてたり、“可哀想な人”という態で書いてあったりするけど、でも罪人なんでしょ!という感じ。
正直、著者だってニューヨークに来た理由や生活態度、文章の節々から感じるに、“なんとなく海外にいるふらふらしてる人”っぽいし。捕まるとか以前に、父親が具合が悪いのに、将来のあてもなくふらふらとイケメンの外国人といちゃついてて(実際、彼氏だけがアメリカにいる理由みたいだったし)いいの!?って感じがしなくもない。
現実にお会いしても絶対友達になれないタイプな気がする。

でもやっぱりアメリカの刑務所生活なんて一生送れないし(逆にそう願う)、本の中身としては大変興味深かった。

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「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」のもととなったドキュメンタリを見てみたい

米原万里 「心臓に毛が生えている理由」 平成20年 角川学芸出版




「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」を読書会で紹介することにしたので、図書館に借りに行った時についでに借りてみた「心臓に毛が生えている理由」。
米原万里さんの作品2作目となったのだが、1作目が非常に面白く期待しすぎたせいか、「心臓に毛が生えている理由」はそこまでではなかった。
割と短いエッセイ(2・3ページ)が沢山入っているので、あたりはずれが結構あったのも原因の一つかもしれないが…

私にとってロシアはあまりに未知の場所なので(今まで興味を持ったことがなかったし)、ロシアの話や旧ソ連の下にいたころのチェコの話はやっぱり面白い。
例えば冬の雪は歓迎されるのに、秋口の雪は“白い蠅”と呼んで忌み嫌っている(まだ紅葉していない草木や黒っぽい地肌を背景に振る秋口の雪は、大群の蠅を彷彿させるかららしい)ということや、何度も同じ単語を反復するのは野暮だと思われているとか。
何度も同じ単語を…というのは、シンポジウムで通訳をしていた時に30分ほどのスピーチで50回以上は“ゴルバチョフ”と訳したのに、なんとロシア人のスピーカーが実際に“ゴルバチョフ”と言ったのは2・3回程度!
ではなんといっているかというと;「幼いミーシャ(ミハイルの愛称)」「スタブローポリ州の若き党第一書記」「ライサの夫」「チェルネンコの葬儀委員長」「新しい党書記長」「ペレストロイカの開始者」「グラースノ領」「上からの改革者」(p111)などなど…
確かにイギリスで論文を書いたときには、同じ単語を1ページで何度も使わないこと、と言われてたな。国によってその人に“教養があるかないか”を判定する基準が違うんだな、と思った。

そういうところは面白いんだけど、そこから日本批判に発展するのはどうかと思うのだ。
例えばゴルバチョフの話の後で、森首相(当時)という単語を言い変えなくてはいけないのけれども、“次々に浮かぶのは、「霞が関の蜃気楼」「鮫の脳味噌の持ち主」「滅私奉公の推進者」「日本を神の国と思い込むリーダー」”(p113)と続く。
別に普通に読んだら“あはは”という内容である(実際私も森首相きらいだったし)。
だけど書き方がなんだか勘に触るのだ。他のエッセイでも時々見られる、“日本はなんてだめなの!”と感じられる文章(しかも私の受け取り方が悪いだけかもしれないけど)が悪い風に取らせているのかも。確かに日本にもどかしく感じることがある。でも“日本は○○だからだめだ”じゃなくて“日本は○○だったらもっとよくなるのに”というのが読みたいのだ、個人的に。

それがなければ面白いんだけどなぁ~
(まぁ他の人にとっては、それが彼女の持ち味の一つとなるのかもしれないけれども)

例えばナショナリズムの意見は面白かった;

 だから愛国主義、ナショナリズムほど、あだや疎かにできない代物はない。A・ビアスは、『悪魔の辞典』で、
 「野心家なら点火したがる代物で、点火しやすくすぐ燃え上がるガラクタ」
 と言い当てている。
 ガラクタとは思わない。われわれ一人一人の心の奥底に、理屈では説明しきれないものの、まぎれもなく潜む火種だからだ。しかし、自然な感情だからこそ、声高に主張したり、煽ったりする人たちを、信用できない。性欲を煽るようないかさまで下劣な臭いがするからだ。(p62-63)

日本を離れ、どっぷりと国際社会に浸った人だからこその説得力の強いメッセージだと思う。
チェコの学校で募らせていた愛国心は、日本に帰って来てから期待してた分がっかりしてしぼんでしまったのだろうか?

Category : 随筆
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Hairsprayが舞台の場所出身で、しかも人種差別を受けてたとは!

Robert K. Wittman "Priceless: how I went undercover to rescue the world's stolen treasures" 2010, Broadway Paperbacks




母が新聞の書評かなんかで見つけて“面白そうよ”と教えてくれ、どうせなら英語で読んでみよう!と思って買った“Priceles”。
FBI×美術、ということで私にとってどんぴしゃの本だった。
しかも本当の話。

作者のRobert Wittmanは美術泥棒を専門にしていた元FBI捜査官。
なんでも美術品の盗難というのは、麻薬などに比べたら軽視される傾向にあり、FBIでも美術専門の捜査官は彼しかいなかったらしい。

非常に印象的なのが、FBIで美術泥棒となると映画のようだけれども…というくだりで

But art theft is rarely about the love of art or the cleverness of the crime, and the thief is rarely the Hollywood caricature...Yet nearly all of them had one thing in common: brute greed. They stole for money, not beauty. (p15)

のっけから“美術泥棒”への夢想を砕き、現実を教えてくれる。

本書に出てくる捜査は大体覆面捜査(undercover)によるもので、Wittman氏はディーラーのフリをして被疑者に近付く。
交渉などを経て実際に受け渡しまでこぎつけるのだが、この美術品が盗品であるということを売人が知っていた、という証言を得なくてはいけないので、巧みに誘導する。
交渉もさりながら、ここがまたスリリング。
しかも後からテープのバッテリーが切れてしまっていたことを知って、後日、また同じような発言をさせなくてはいけない、というハプニングもあったりして更にスリリング。

確かに美術をめぐる大捕り物話も面白かったけれども、Wittman氏の人柄も好意の持てるもので、彼の人生だけでも十分読み応えがあった。
それは私が日本人であるということも関係しているのだと思うのだが、なんとWittman氏の母親は日本人なのだ。
しかも敗戦後にアメリカの軍人と結婚し、アメリカに渡ってきた、という経緯を持つ。
そんな訳で子供の頃は差別されたりもしていた。

FBIのテレビ番組と、近所に住むFBI捜査官が優しかったという要素も手伝い、FBIに憧れるようになる。
紆余曲折を経てやっとFBIになれたところで苦難は終わりではない。
大親友だった同僚を自分が運転する車で亡くし、しかも飲酒運転の疑いをかけられ、何年間か裁判にかけられることになるのだった。

たしかに覆面捜査官といえば、Bad Guysとつるみ仲良くなり、そして最後には裏切る、という人なのだから“すごくいい人”なわけではないだろう。
それが正しいことではあるといっても、仲良くなった仲間を“裏切る”ことができるくらいの冷徹さはなくてはいけれない(そうしないとミイラ取りがミイラになってしまう)。
でもWittman氏は麻薬取締やマフィアの取締よりも、美術というマイナーな分野を選び、しかも“犯人を捕まえる”というよりも“美術品を安全に確保する”に重きを置いた、というところに人柄の良さが出ていると思った。

結局それは人と仲良くなる、に結びついているのだろうけれど。
私が好きだったエピソードの一つに、ネイティブ・アメリカンの頭飾りを売る人との話がある。
アメリカでは鷹(falcon)の羽を売ることは法律違反らしいのだが、ネイティブ・アメリカンの頭飾りはだいたいその羽でできている。
その頭飾りの売人に近付くのだが、その人と意気投合して大変仲良くなる。
もちろん最終的には捕まるのだが、捕まった後でその売人からの手紙というのが;

Dear Bob: I don't know what to say. Well done? Nice work? You sure had me fooled?
We're devastated, and I guess there's the idea. But, even though we're devastated, we enjoyed the times we spent with you. Thanks for being a gentleman, and for letting us have a pleasant Christmas and New Year's. If you hadn't done what you did, they would have brought in someone else to do it, and I don't think we would have found him as personable as we found you. So there's no blame involved. We just have a lot of facts to face.
This letter is neither a joke, a scam, an appeal nor a message containing anything other than what it says. Best wishes, Joshua Baer. (p.140)

息が合ったというのもあるのだろうけど、これだけ言わせるなんて!

最後の難関の物語、Gardner Museumのレンブラント、フェルメールなどの作品を巡る捕り物劇は結局失敗に終わってしまう。
失敗の原因は、よくある話で、いわゆる“組織”の問題。
結局、Gardner Museumのケースでは色んな組織が介入することになってしまい、Wittman氏は容易に動くことができなかった。

まずその絵に近付くための重要人物として、マイアミ在住のフランス人。このフランス人は、フランスの警察がずっと捕まえたくて手ぐすねを引いている人物で、Gardner Museumの情報をもたらしたのもフランスの警察。
次に、Gardner Museumが位置するボストンの支局の人たち。
フランス人が住んでいるのはマイアミ。
Wittman氏自身はフィラデルフィア支局の人。

お互いが自分が統轄して自分の成果としたい。
とにかくWittman氏は絵画を保護するのを第一優先としているので、順調にフランス人二人と仲良くなり信頼も勝ち得たのに、周りが(特にボストンが)やいのやいの言って、Wittman氏は退陣せざるを得なくなってしまう。
でも他の二人はWittman氏以外と取引したくないと言う。

とまぁ、天下のFBIが情けないくらいお互いが足を引っ張り合いながら、結局おじゃんになってしまうのだ。
Wittman氏はというと、これ繋がりで違う美術館の盗品を救いだすのに成功したものの、フランスの警察が、関係者には“WittmanはFBI捜査官”と分かるような報道をしてしまったが為に、覆面捜査官としての生命線が断ち切られる。
丁度退職の時期が迫ってたからいいものも…

この事件が解決していたらお話としてはドラマチックだったが、現実はうまくいかない。
そんなのもひっくるめて色々と教えてくれた本だった。

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