コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズの事件簿(下)」 福島正実/加藤喬/常盤新平/内田庶・訳 1984年 偕成社
いよいよ最後!なんだか寂しいなぁ。 さすがに一気読みは、最後の方に飽きてきたけれども… でも子供の時には、さして面白いと思わなかった本を夢中になれてよかった。 やっぱりホームズはすごかったのね、と再認識。 ちなみにホームズといえば、というあの格好。チェックにあの帽子とマント。あの格好、全然好きじゃないのだが、実際のホームズはほとんど着ていない、というのが分かってなんとなく良かった。 なにはともあれ最終巻。 大変珍しいことにホームズ目線の話が二話あった。 が、とても残念なことに全然面白くなかった。ワトスンの偉大さがよく分かった。 ホームズが書くと色々と厭な感じ。すごい事件だ、とか自分で言われてもね~ ホームズとワトスンの関係ってお能みたいなもんなのかな、と思った(お能では、ワキ方が状況説明したりして、シテ方がべらべらと自分のことを話すという状態を回避しているらしい)。 しかも事件自体もあんまり面白くなかった… 最後なのに残念。 収録作品は;
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Graham Moore "The Holmes Affair" 2011 Arrow Books
実はシャーロック・ホームズの一気読みの決行になったきっかけは本書“The Holmes Affair”だった。 シャーロキアンの間であった殺人と、コナン・ドイルが関わった事件が交互に描かれているので、ホームズネタがバンバン出る(当たり前か)。 こりゃ、ホームズちゃんと読んでないと楽しめないな、と思って読み始めたのだった。 正直なところ、本書自体の結末としては本当~~~に残念なくらい、がっかりだった! なんやねん!!!と怒れるくらい。 要所要所は面白かったんだけどな… まぁ、シャーロック・ホームズを読むきっかけをくれてありがとう、と言っとこか… 面白かったところというのが、ホームズがワトスンに“Elementry”と言うのが定番のように思われているが、実は一回しか言ったことないんだ、というネタとか。 あとコナン・ドイルはScotland Yardを助けたという事実が本当にあった、というのも面白かった。 といか、コナン・ドイルの話が結構面白かったので、どうせならコナン・ドイルだけの話にすればよかったのにと思う。 Oscar Wildeが出てきたり、バリも出てくる。そして、コンビを組むのがBram。この人は誰なんだろう?と思っていたら“Dracula”の作者だった!すごいなビクトリア時代。 Bramが“Dracula”に使ったと言う文章が良い; The old centuries had, and have, power of their own, which mere modernity cannot kill. (p244)
それに応えるように、Graham氏がBramに言わせている言葉もいい。 コナン・ドイルはシャーロック・ホームズの人気ぶりに嫌気がさして殺してしまい、2度と書かないと公言してはばからない状態。そんなドイルにBramはシャーロック・ホームズを書けという。その時に行ったセリフ(電気が入った自分の部屋での言葉);But whenever you take up your pen and continue, heed my advice. Don't bring him here. Don't bring Sherlock Holmes into the electric light. Leave him in the mysterious and romantic flicker of the gas lamp. He won't stand next to this, do you see? The glare would melt him away. ... Leave him where he belongs, in the last days of our bygone centry. (p282)
なにはともあれ、物語はというと;
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コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズの事件簿(上)」 福島正実/加藤喬/常盤新平/内田庶・訳 1993年 偕成社
いよいよホームズのシリーズも最後になった“事件簿”の上巻。 時々非科学的なものもあったり、似たようなネタだったりすることもあるけれども、なかなか面白かった。 収録作品は;
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コナン=ドイル 「恐怖の谷」 内田庶・訳 1985年 偕成社
ホームズは短編が多いけれども、長編の方が私は好きだと改めて認識させた「恐怖の谷」。 長編の何がいいって、事件の発端となるような挿話が入っていて、その冒険譚的な話が非常に面白い。ホームズが全然出て来ないところで面白いというのもなんだと思うけど… 今回の「恐怖の谷」もご多分に漏れず、わくわくするような内容だった。 事件自体は、暗号文とクローズドサークルという、なかなかしっかりした事件となっている。 因みに黒幕はモリアーティ教授ということになっているので、ホームズとモリアーティ教授の対決の前だということが分かる。 「最後の事件」で、モリアーティ教授という名前が唐突に出てきて、ワトスンも知らなかった設定だったのに、「恐怖の谷」ではワトスンもよく知っているではないか、という矛盾があるけれども、まぁそれは目を瞑ることにしよう。 というかモリアーティ教授を無駄に出さない方が面白い気がしないでもないけれども、モリアーティがいないと暗号もなかったししょうがなかったのかな。。。
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マルコス・アギニス 「逆さの十字架」 八重樫克彦/八重樫由貴子・訳 2011年 作品社
読書会で知り合った人の日記で、2011年のベスト本海外版で選ばれていた「天啓を受けた者ども」。 どうせなら同じ作者の処女作から読もうと思って借りた「逆さの十字架」。 太い本だな…と思っていたが一気に読み終わってしまった! 非常に面白い。 恥ずかしながら、アルゼンチンのことを何も知らなかったので(「エビータ」くらいしか分からない)、その内情が綴られている本書は驚きの連続であった。 メインとなる登場人物はトーレス神父。 聡明な神父で欧州帰り。貧しい人達の傍に立つ教会を目ざすのだが、教会は自分達の“崇高さ”ばかりを求めている。 折しもアルゼンチンは共産主義が台頭してくる。 皆は対等、と謳う共産主義だが、そんな弁士の多くは召し使い付きの裕福な生活をしている。 もう一人のキーパーソンは軍隊上りの警察長官。 残酷な男で、共産主義者、娼婦、果てまでは運動家の学生が集まった教会まで攻めてくる。 物語は、トーレス神父、娼婦、冷めた目を持つ大学生、カトリック教会の重鎮であるトーレス神父の叔父からトーレス神父への手紙、警察長官、共産主義の親娘などの視線で構成されている。 特にトーレス神父の苦悩は読みごたえがある。キリストの教えをどのように現代に実現していくのか?という懊悩がよく描かれている。 トーレス神父の言うこと、実践していることは、私の目からしたら(というか読者としては)キリストが説いた教えを実践しているように見える。 「貧しい者は幸いである」とキリストは言っているのに、教会は豪華に飾り立てる。そこには富める人ばかりが集まる。 本書では、貧しい者は生きるので精一杯で、生きる為に盗みなどを犯してしまう。その告解を聞きながらも神父に求められることは、そんな人たちに“祈りなさい”と言うだけ。 彼らを救う為には、社会から変えていかなくてはいけないのだ、というのはよく分かる。 しかし本書はハッピーエンドで終わらない。 トーレス神父とその理解者であるブエナベントゥーラ神父は、カトリック教会から糾弾を受け追放されてしまう。 反対に警察長官は、一回失脚しそうになるもののすぐに挽回してしまう。 あからさま過ぎるところもあるくらい、聖書と呼応する部分が多々ある本書。 トーレス神父は自らが目指すキリストの生涯に似ている。ひたすら貧しい者へと向かっていった揚句の果てが、教会裁判にかけられて破門される。 娼婦は、その名もマグダレーナ。娼婦であっても心優しく、トーレス神父を尊敬しているところも、マグダラのマリアがキリストを慕うのに似ている。 警察長官であるペレス大佐はもちろんヘロデ王だし、てトーレス神父の叔父はファリサイ派の長老のような人。 非常にリアルなので、こうやって聖書になぞらえている所もあると(多分なぞらえているんでしょう…)、キリスト教の在り方の問題点が克明となって、大変考えさせられた。 解説を読むと、実際にトーレス神父のように貧しい者に近付いた神父様がいたらしく、その結果殺されてしまったということもあったという。 作者のアギニス自体も命を狙われたこともあったらしい。 知らなかったのが恥ずかしいくらいの激動のアルゼンチン。時代背景を知ればもっともっと面白かったかもしれない。 十分、衝撃的だったけれど… 以下、興味深かった3文を抜粋;
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コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズ最後の挨拶(上)」 大村美根子/常盤新平/青木日出夫・訳 1984年 偕成社
着々と読み進めているシャーロック・ホームズ。 個人的に、秘密結社とか秘密組織が出てくる話が面白いと思っているのだが、本書にはそれが2作あってなかなか面白かった。 斬新な(私にとって)トリックがあるという訳ではないシャーロック・ホームズシリーズ。やはり時代背景がよく現れる話が面白いと思う。 収録作品は以下の通り;
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三津田信三 「厭魅の如き憑くもの」2006年 原書房
ずっと気になっていたシリーズだけれども一巻である「厭魅の如き憑くもの」がずっと借りられていて、やっとこさ手に入れた一冊。 時代は戦後直後っぽく、儀式やら家やら血統やら面白い要素満載だった。 あらすじだけ見ると横溝正史を彷彿するかな?と思っていたが、なぜかTRICKを想像してしまった… 不思議な雰囲気な山奥の村というのがそうさせたのか… ホラー要素をふんだんに含めた推理小説なので、そこそこ怖い。 神隠しなどの、その村で起こった不思議なことについて、一応からくりを提示(登場人物が推理)してくれるけれども、一部を除いて、例えば“そうやって姿を消えたってのは分かるけど、結局その後はどうなったっていうの?”というのがあって、私はなんとなくしっくり来なかった。無理にホラーの部分はホラーを残して欲しかった。 あと登場人物が割とややこしくて、二つの家が舞台になっているのだが、その二つの家にも分家があり…とその相関関係を把握するのが難しかった。 借りた本には、登場人物の相関図のページに付箋がついてて、その気持ちがよく分かった…。 そもそも谺呀治家と神櫛家と御大層な名前からして馴染みにくい上に、その二つの家の歴史まで登場して勘弁してくれ~ってな感じだった。 つまりは割と本腰を入れて読まなくては、きちんと理解し、楽しんで読める本ではなかった。
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コナン=ドイル 「シャーロック=ホームズの帰還(下)」 内田庶/中上守/沢田洋太郎・訳 1984年 偕成社
あまりの翻訳のひどさに、いつもの子供用に戻ったシャーロック・ホームズ。 なんだかほっとする。ホームズの口調が元に戻った感じ。 「シャーロック=ホームズの帰還」で再開されたホームズの話だが、最後の「第二のしみ」にまたもや“ホームズの手柄話を発表するのも最後”といった言葉が出てくる。 コナン・ドイルはこれで止めるつもりだったのだろうか…? あと、昔、高田崇史の「QED ベーカー街の問題」を読んだことがあって、そのせいで帰還したシャーロック・ホームズと違うような気がしないでもなかったが、それは気のせいなのか…? 確かに以前のホームズは拳銃を持たず(それはワトスンの役割だった)、しかも法を無視することもなかった。なのにこのホームズは、普通に人の家に押し入るし、法なんて糞食らえ!という姿勢がどことなくある。 でも、まだ学生である犯人に対して「それかれ、きみ、ローデシアでは、かがやかしい未来がきみを待っているにちがいない。きみは、いったんはひくいところへ落ちた。そのきみが将来、どんなに高いところまでのぼれるか、楽しみにしていよう。」(p105)
というホームズは、以前の優しさがあるホームズのままである気もしないでもない。 それはさておき、本書に収録されている作品は以下の通り;
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