『風にのってきたメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース
ら
全然、映画の"メリー・ポピンズ"と印象が違った!!!
確かに映画のなかでも"メリー・ポピンズ"は割と塩対応だけど、本の中では更に塩!!!
ほぼ常にふきげん顔っぽいし、冷たい物言いをしたり、さげずんだ目で見たり、挙句の果てにガラスにうつった自分の姿に満足するナルシスト気味なところもあったり…なんで子供たちがメアリー・ポピンズのことが好きなのか、少し理解に苦しむ。むしろ、描写としてはメアリー・ポピンズを刺激しないように気を遣うシーンが多いのに、なぜ!?
確かに素敵に不思議なことが色々と起こって楽しいけれども、メアリー・ポピンズの態度が、そのわくわく気分に水を差す感じもするし…
この塩対応が良いスパイスにでもなってるのかしら…でも何度も言うけど、なぜ子供たちがメアリー・ポピンズを慕うのかはさっぱり分からぬ。。。
ということで、色々と納得がいかなかった。
ちなみに連作になっていて、各お話は次のような感じ
東風
メアリー・ポピンズがバンクス家にやってくるお話。ちなみに映画と違って、バンクス夫人は選挙活動していないし、子供もジェインとマイケルの下に双子の赤ちゃん、ジョンとバーバラがいる。バンクスさんは映画と同じく銀行マン。
メアリー・ポピンズはじゅうたん生地のバッグを持ってきて、何もないように見えたら、中から次々とエプロンや大型のサンライトやら、歯ブラシなどなど出してくる。
薬を出してきて子供たちに飲ませようとする。嫌々ながら飲むと、ストロベリー・アイスやらライム・ジュース・コーディアルやら好きな味がして大満足、というお話。
外出日
メアリー・ポピンズのオフの日のお話。
バートが出てくるが、本ではマッチ売り兼、チョークで舗道に絵を描く人。
メアリー・ポピンズはバートに会いに行き、そのままバートが描いた絵の中に入る。
二人は素敵な服になっていて、お茶を飲んだり、メリーゴーランドに乗ったりする。
笑いガス
ジェインとマイケルは、メアリー・ポピンズとメアリー・ポピンズのおじさんの家にお邪魔する。
すると、おじさんは宙に浮いているではないか!なんでもおじさんは笑い上戸で、誕生日が金曜日に重なると、笑うと笑いガスが体に溜まり浮んでしまうというのだ。
ジェインとマイケルはその姿を見ておかしくなって笑うと、二人も浮いてきてしまう。
皆が宙に浮いているものだがから、仕方なくメアリー・ポピンズもあがってくる。因みにメアリー・ポピンズはまったく笑わず上がる。
笑いが止まらない三人はなかなか下に降りれないのだが、メアリー・ポピンズが「帰る時間ですよ」というと、笑いが止まり三人は地面に戻るのだった。
ラークおばさんの犬
バンクス家の隣に住むラークおばさん。アンドリューという犬を子供のようにかわいがっている。
血統書付きの自慢の犬なわけだけれども、アンドリューとしては普通の犬でありたかった。そんなアンドリューが大好きな友達は雑種のウィロビー。
ある時、アンドリューは脱走してしまう。
ラークおばさんが必死に探しているところに、ウィロビーと現れるアンドリュー。
その場に居合わせたメアリー・ポピンズたち。メアリー・ポピンズがアンドリューが言うことを通訳して言うには、ウィロビーも一緒にしてくれないと戻らないという。
結局ラークおばさんはアンドリューの言うことを聞く。
踊る牝牛
ジェインは耳が痛くなってしまい寝ていた。マイケルはいたわるために、窓の外に見えるものを逐一報告している。すると、通りに牝牛がいるではないか!
びっくりする二人に、メアリー・ポピンズはその牝牛のことを良く知っていると言う。
牝牛とはとてもまじめな牛だったのだけれども、ある晩、突然踊りだす。
牝牛は制御できず、寝ることも食べることもできずに踊り続けることになってしまったので、困った牝牛は王様のところに助言を求めに行く。
牝牛の角に星がついていることに気付いた王様たちは、月を飛び越えてみたらどうかと提案する。
牝牛が月を飛び越えてみると、角から星はとれ、元の生活に戻った。
しかし物足りなさを感じた牝牛は、メアリー・ポピンズのお母さんの助言をもとに、また星を探しに行くのだった。
わるい火曜日
マイケルがとっても悪い子になるお話。
どうやらベッドの間違った側から出てしまったのが原因で、メアリー・ポピンズにまで反抗する大変な悪い子になってしまう。
メアリー・ポピンズと子供たちとで散歩に出かけた時、メアリー・ポピンズは方位磁石を見つける。
それをもって、世界一周旅行をする。北ではエスキモー、南は南の島の人(たぶん、黒人という説明しかない)、東では中国人、西ではインディアンに歓待を受ける。
メアリー・ポピンズが自分のだと言ったのに、悪い子になったマイケルは、自分が拾ったのだから自分のだと言って取ってしまう(メアリー・ポピンズが見つけて、マイケルに拾うように言ったので)。
そしてメアリー・ポピンズがやったように東西南北を叫ぶのだが、現れた人物たちがマイケルに襲い掛かる。
メアリー・ポピンズに助けてもらったマイケルは、すっかり元のマイケルに戻る。
鳥のおばさん
シティーで働く父親とお茶するために出かけたジェインとマイケルとメアリー・ポピンズ。
ジェインとマイケルはセント・ポール寺院で、鳥のおばさんから餌を買い、鳩に餌をやるのを大変楽しみにしていた。
鳥のおばさんのお話は、ジェインの十八番で、マイケルにせがまれて鳥のおばさんのお話をする。
夜になると鳥のおばさんは、鳥たちを呼んで、自分のスカートの中に入れ、鳥たちはその中で眠るのだ。
マイケルは幸福な気持ちになってその話を聞く。
映画で印象的なシーンとなる鳥のおばさんの話、原作ではジェインが語っている。
しかも!マイケルが「みんな、ほんとなんだね、そうでしょ?」とメアリー・ポピンズは「いいえ、ちがいますよ」と言うしまつ!
コリーおばさん
乳母車をひくメアリー・ポピンズと買い物に来たジェインとマイケル。
メアリー・ポピンズはジンジャー・パンを買いに、いつもと違うお店に行く。
そこには大女な姉妹、ファニーとアニーがいた。二人は非常に悲しそうな顔をしている。
するとコリーおばさんが現れ、二人をどやしながらジンジャー・パンをあげる。
そのジンジャー・パン1つ1つに金色の紙でできた星がついてて、コリーおばさんはジェインとマイケルに、食べ終わったらどこに紙の星をしまうか尋ねる。
家に帰っておいしく食べた夜、二人が眠っている中、メアリー・ポピンズがごそごそしていることに気付く。そして外に出かけたようだ。
二人はこっそり起きて窓からのぞくと、メアリー・ポピンズはコリーおばさんとファニーとアニーと落ちあっていた。そしてはしごにのぼって、紙の星を夜空に貼っていたのだ!
ジョンとバーバラの物語
こちらはなかなか可愛らしいお話。
赤ちゃんであるジョンとバーバラは、太陽の光やムクドリなどとお話できる。
でもジェインやマイケルや、そして両親たちが全然言葉を理解していないことを不思議に思っている。
メアリー・ポピンズはもちろん理解しているわけだが、二人にジェインやマイケルが分からなくなったのは、大きくなったからだと言う。
二人は大きくなっても絶対にムクドリたちの言葉を忘れない!と言いはる。
しばらくしてムクドリがまたこの部屋に戻ってくると…
ジョンとバーバラはムクドリの言葉が分からなくなっていたのだ…
分かってはいたけれども悲しくなってしまうムクドリ。
それに対して、「泣いているのね」とからかうメアリー・ポピンズ!!!
満月
いつにも増して不機嫌なメアリー・ポピンズ。
夜になってジェインとマイケルがベッドにいると、二人を呼ぶ声がする。
その声をたどっていくと、夜の動物園に行きつく。
なんとも不思議なことに動物たちがみな、檻から出ていて、ジェインとマイケルはクマに案内されて動物園に入っていく。
あちこちに動物がいるなか、檻の中には人間がいるというあべこべさ!
なぜこんなことになっているのかと聞くと、お誕生日が満月と重なっただという。
誰の誕生日?と思っていると…メアリー・ポピンズのお誕生日だった!
動物たちはメアリー・ポピンズのお誕生日を祝っているのだった。
いつの間にか寝てしまった二人。
朝起きてジェインが不思議な夢を見た話しをすると、マイケルもまったく同じ夢を見たと言う。
さらに、メアリー・ポピンズを見やると、キング・コブラがメアリー・ポピンズに贈った、自身の抜け殻をベルトとしてつけていることに気付く。
クリスマスの買い物
メアリー・ポピンズ、ジェイン、マイケルとでクリスマスの買い物をしている。
店を出ようとすると、不思議なかっこうをした女の子に出会う。その子は、プレアデス星団のマイアだという。兄弟のためにプレゼントを買いに来たマイアに付き合い、三人はプレゼントを見繕ってあげる。
最後、マイアが空に帰るとき、マイア自身にプレゼントがないことに気付いたメアリー・ポピンズは、自分のお気に入りの手袋をあげる。ほぼ唯一の、メアリー・ポピンズいい人話。
西風
メアリー・ポピンズとお別れのお話。
春の一日目。ジェインとマイケルはお別れの日だということに気付く。メアリー・ポピンズがやって来た時に「風が変わるまで」いるという話だったからだ。
不安になる二人。マイケルはメアリー・ポピンズから方位磁石を贈られて、いよいよお別れだと思い泣いてしまう。
そして実際、ジェインとマイケルの前で、メアリー・ポピンズは傘をさし、風にのって行ってしまった。
その夜、ジェイン宛に、メアリー・ポピンズから贈り物があることに気付く。マイケルに方位磁石をあげたので、ジェインにはメアリー・ポピンズが描いたバートの絵が贈られる。
そこに「オー・ルヴォワール」と書いてあり、「また会う日まで」という意味だと知った二人は希望をたくす。
うー-ん…何度も言うけど、世界観はすごく面白かったけれども、メアリー・ポピンズがまったく好きになれなかった。
出版当時、すごいベストセラーになって、学校で劇にして上演するくらいの人気だったらしいけれども、このメアリー・ポピンズの割とひどい人物像は気にならなかったのかな、というのが疑問だった。今と感覚が違うのかなー…
割とめんくらった1冊でした。
P.L.トラヴァース『風にのってきたメアリー・ポピンズ』林容吉訳、1954年、岩波書店