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がらくたにっき |

宮部みゆき『ソロモンの偽証 第I部 事件(下)』





上巻に続き面白かったー--
推理小説とカテゴリしたらよいのか分からないくらい、推理よりも群集劇の様相が強い。
そしてすごいのが、各人物がそれぞれ特徴的でたくさんの登場人物でも混乱が生じない。更に特徴的といっても誇張されているとかではなく、あくまでも「こういう人いそう…」と思わせる自然なもの。
宮部みゆき、すごいなー---、改めて感じた。

以下、あらすじ。

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Category : 未分類
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吉井仁美『「問い」から始めるアート思考』


色々読んでみる「アート思考」の本。
前回のはあまりピンとこなかったので、「どうだろうな~」と思って本書を読んだけれども、こちらはなかなか面白かった。

ただしそれは、アート思考そのものについてというよりも、現代アートについての理解が深まったという観点からで、
今まで美術が好きといっても古典絵画が好きだった私からすると
現代アートはまさに「?」のオンパレードで、それがこの本を読んで「そういうことか~」となった。

画像をふんだんに使って説明してくれているので、より具体的に理解しやすかったというのもあった。

私が本書から理解したのは
現代アートというのは良い問いを投げかけてくれるもの。
答えを提示してくれるわけではないので、観客を投げかけられた問を受けて思考するのが現代アート。
そうい考えると禅問答みたいなものなのかなと思った。
禅よりも刺激的で、問いの見せ方に何ひねりもあるのだろうけれども。

そういった背景から、2019年の「あいちトリエンナーレ」における「表現の不自由展・その後」についての考察が非常に共感が持てた。
なんというか、あの問題を受けて「これはアートなの??」と何となくもやもや感じていたのが、すっきりと言語化されたというか。
ということで、少し長いけれども引用;
 あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」について私がまず違和感を覚えたのは、その表現があまりに直接的であるということです。直接的であるがゆえに政治的なメッセージが何よりも先に眼だってしまっているという印象を受けました。本書のこれまでに紹介したアーティストたちは、そのような直接的な表現方法は使いません。…(中略)…
 本書で紹介したようなアーティストたちが直接的な表現をしないのは、普遍性を求めるからだと思います。極めて本質的な「問い」を間接的に鋭く投げかけ、鑑賞者がそれまでに思いもしなかったことを思わせる。その「問い」が急進的であれば、必然的に物議を醸します。しかし、その表現が本質的でありながらも間接的であれば、誰も傷つけられることなく、どのような鑑賞者でもその問いを感じ取ることができるようになり、頭の中にある意識の壁を乗り越えていけるようになります。

最後にメモ代わりに目次を抜粋する;

はじめに
  • アート思考とは
  • バンクシーの「社会的な問い」
  • アートに触れる意味

第1章 アートは未来を提示する
  • アートは「問い」で未来を見せる
  • 未来への不安が強まる現代社会
  • 長谷川愛―人口問題、食糧問題、環境問題への問い
  • 同性カップルから生まれた子どもの風景
  • 福原志保―バーチャルとリアルの境目とは何か
  • バイオアートを牽引する二人が日本から現れたのはなぜか
  • 脇田玲―「見えないもの」を可視化する
  • 落合陽一―テクノロジーで作るプリミティブな世界
  • 豊富なアイディアを持つアーティスト
  • 真鍋大度―最先端のテクノロジーで人間性を創造する
  • 神経細胞の活動と人工の光をリンクさせる
  • アートの概念は拡張する

第2章 「現代アート」の終焉
  • 「物」ではなく「仕組み」が価値を持つ
  • ビープルー作品価格75億円の衝撃
  • 現代のセザンヌ
  • 「現代アート」はもう終わった
  • 日本にはないアートの「追及権」
  • ブロックチェーンがもたらすビジネスチャンス
  • 「ジェネリックアーティスト」の危うさ

第3章 「アート思考」とは意識の壁を壊すこと
  • アートは人々の感覚と意識の壁を取り除く
  • マーティン・クリードー「創作物がない」アート
  • 「つくる」とは何か
  • ジョシュ・スミスー顔のない自画像
  • 遠藤一郎―「応援」をアートにする
  • 岡本太郎に似ている
  • 会田誠が育てた新しい世代

第4章 都市は本当に必要か?
  • アートは、すでに都市への「問い」を発していた
  • Chim↑Pom-「御法度寸前」の表現で社会を風刺
  • 渋谷の闇をユーモラスに照らし出す
  • 渋谷の野良ネズミをピカチュウに
  • 『友情か友喰いか友倒れか』
  • 石上純也―建築の概念を破壊する
  • 天井のない建築
  • 箱型の空間の限界
  • 都市は本当に必要なのか?
  • 森の中に図書館があってもいい

第5章 芸術祭とは何か
  • アートが都市から離れていく
  • アートに地域性はない
  • 本来の芸術祭のあり方
  • 「何も残さない」芸術祭
  • 「すぐに消える建築物」を依頼
  • すぐに撤収できるテントアート
  • 「記憶だけ残す」アーティストは現れるか?
  • 消えてはならない建築もある
  • 「あいちトリエンナーレ問題」の何が問題か

第6章 <観る>から始める
  • アート以外のものから「問い」を感じる
  • 白洲正子―「感じる」とは何かを教えてくれた
  • 小林秀雄―無心の目で見つめていた
  • 東山魁夷―「観る」とは何かを教えてくれた
  • 倉俣史朗―観た映画を拡張する
  • 誰でも「アート」はできる

第7章 アート思考とは「問い」である
  • アートの本質は「表現」ではなく「問い」にある
  • アートもビジネスも「問う」者がゲームチェンジャーとなる
  • バスキアの後にソニーの「ウォークマン」がヒット
  • バンクシーの後にアップル「iPhone」がヒット
  • アート思考とは「問い」である


吉井仁美『「問い」から始めるアート思考』2021年、光文社

Category : その他:美術
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宮部みゆき『ソロモンの偽証 第I部 事件(上)』


ふと目に留まった本書。
久しぶりに宮部みゆき作品読むか~と思ったら…めちゃくちゃ面白かった~~~

そうそう!宮部みゆきって面白かったよね!と思いながら読み進めた。
登場人物が、それこそ脇役級の人物も丹念に描かれて、そう書くと話が進まないではないかと思われそうだけれども
そういう人物の機微が物語の中心となっているので、やきもきされることはない。
人物描写が本当に秀逸で、こういう人いそう…というリアルさが最大の魅力だと思う。

本書は第1部の上巻なので、まだまだ物語の序章だろうけど、簡単なあらすじを…

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秋元雄史『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』



やたらと「アート思考」という言葉を聞くようになり、アート好きを自負している者としては読んでおかないといけないかなと思って読んでみた。

正直なところ、申し訳ないんですけど、色々と事例が出て文章も難しくないはずなのに、読んだ端から内容忘れた…
おそらくあまり自分に響かなかったのかな。。。

とりあえず、「アート思考」というのはアーティストがどういう思考で物事をとらえているのか、というのを解く話で
それをビジネスに直接的に生かすというよりも、
アーティストの思考方法を学ぶことで、イノベーションを起こすヒントを得る、
みたいな内容だったと理解しました。

おそらく、たたみかけるように次々と事例とか主張が語られていて、逆に焦点が合わない感じだったのかも。
とりあえず、各章の終わりにその章のキーポイントが書かれていて、それを読んで「ああ、そういうことね」と理解するという感じ。
これはあくまでも私の個人的な感想なので悪しからず。

以下、その章終わりのキーポイントから学びの有ったポイントをピックアップ。

第1章 すべては「問い」から始まる(p62-65)
2.「アーティストとは、答えを示すのではなく、問いを発する人であう」「(ジェームズ・タレル)。これからの時代に求められるのは、答えを引き出す力以上に「正しい問いを立てることができる洞察力とユニークな視点」である。

3.現代アートは、「現代の人間像について多角的に考えて、未来に向けて、さらなる可能性を持つ新たな人間像を求め、人間の概念を拡大することに挑戦する試み」である

7.世の中の問題解決をするデザイナーの時代から、自分だけが信じる主観的な世界を世の中に問いかけていく問題提起型のアーティストの時代に変わろうとしている


第2章 アートとビジネスの交差点(p92-93)
1.社会に新たな価値をもたらし影響を与えてきた人たちは横断的な知識を身につけていて、そうした複合的な人材はますます必要になってくる

3.単なる「改善」ではなく、既存のものとはまったく異なる発想を行うときに求められるのが、ゼロから何かを生み出すアーティストの思考法

9.現代アートの鑑賞は、自らの頭で主体的に考えることのトレーニングにもなる


第3章 イノベーションを実現する発想法(p141-144)
2.優れたアーティストは、常に相手に対し当事者意識を持って向き合い、あたかも舞台の中央に立っているかのような姿勢で臨む

3.自らの視点を持ち、そこから世界を眺めているという自負を持っているのが、アーティストであり、彼らはその自己に対する信頼が人一倍、強い人たちである

9.デザイナーは自分の外側にある課題に向き合うのに対し、アーティストは自分の内側から湧き上がるものに向き合っている

11.感動というのは、かなり個人的な体験だが、文脈に解消されない固有の体験であり、あなたが世界に出会った証しであり、アーティストが世界を眺めているときと同じ感覚である

16.国際的なアートフェアに工芸が登場したのは、テクノロジーが進化し、情報が進んでいき、人と人のつながりが弱まり、人とものの関係も希薄化した中で、改めてものが持つ手触りや魅力を見直そうとする動きがある


第4章 アートと資本主義(192-195)
1.西洋美術は破壊的イノベーションにより常に深化してきた

5.アートが拡大し続けるように、資本主義も拡大を続けていくだろう。
  それは美に弦かいがないように、人間の欲望にも限界がないためだ

7.知名度、制作年代、存命か物故か、制作された作品数、これからも新たな作品が世に出るのかといったアーティストに関する様々な条件により価格は決まる

9.どんなアート作品にも社会化のプロセスが必要で、その結果、資産としての価値も生まれる

13.社会的な”幻想”という意味ではアートと貨幣は似ている

15.社会全体の生産力が上がり、社会が豊かになり、多くの者が富を所有するに従い、アートも広がって行く

16.アートの本質的な価値とは、見る人の感情や精神を揺さぶり、生きている意味を肯定するものであり、もしかすると宗教に近いものかもしれない


第5章 現代アート鑑賞法(246-249)
1.現代アートの特徴は、「深く感じ、考える」という傾向を重視すること

2.「常識を疑う」「ゼロベースで考える」は、現代アートを鑑賞する基本的な姿勢

3・現代アートは、自分と社会との関係を探していく羅針盤のような存在である。そのための不確実性が増大する現代ときわめて親和性が高い

4.現代アートは、過去の歴史を物語として参照して、それによって個々の作品を成り立たせているところがある

5.現代アートになるための要素は、「美」を広く哲学的に捉えて、「現代社会の課題に対して、何らかの批評性を持ち、また美術史の文脈の中で、なにがしかの美的な解釈を行い意味を提供し、新しい価値をつくり出すこと」といえる

14.欧米とは異なり、日本のコミュニティアートはまちづくりと一体化し、一般の人々の暮らしの場に近い場所でアートが実現するのが特徴である。


秋元雄史『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』2019年、プレジデント社

Category : その他:美術
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