福田和代『梟の一族』
書かれた本を見てみたら『梟の一族』と面白そうな本を書かれていること知り、さっそく読んでみた。
結論から言うと、申し訳ないけど、そこまでかな…という感じだった。
むしろ、同じ登場人物で違う路線からの物語だったらもっと面白かったような気がするんだけど…と失礼なことを思ってしまった。
この感想の詳細を書く前に、簡単にあらすじを書くと…
滋賀県の山奥にある里。そこは不思議な能力を持つ者たちが住んでいた。
その能力とは、決して寝ることがなく、更に身体能力に優れているというもの。
主人公史奈は、里で唯一の若い女の子で高校にあがったばかり。祖母と二人だけで住んでいる。
ある晩、誰かが襲ってきて、祖母に命じられた通り、隠れ場所に避難し、朝が来てから抜け出すと、里が焼け野原になっていて、里の者が1人遺体である以外、皆いなくなっていた。
途方に暮れていると、里を昔出た一家の息子と娘がやってきて、緊急事態を史奈の祖母から受け取り、助けにやってきたと言う。
二人に連れられて東京に行く史奈。
しかし、二人が偽物と気付き、二人からも逃げ、言い伝えである避難場所に行く。
なんとか本物とも出会い、生き別れとなった父親にも出会い…という話。
両親は史奈を置いて里を出たのだが、その理由は、この”寝ない”という特性がどういうものかを研究したかった為だった。
祖母の反対を押し切る形となったので、史奈は祖母の元に置いていくしかなかったという。
更に、その後、母親は行方知らずとなっていたことも分かる。
調べていくうちに、里を襲ったのはある研究機関だったことが分かる。
また梟の一族には<シラカミ>という病があることも、史奈は知る。それは里から長く離れた梟がなることが多く、身体がまったく動かなくなる病気だった。梟ではそれを忌み嫌い、隠す存在でもあった。
その研究機関のトップは、梟の一族でまれに生まれる、何の能力もない<カクレ>が里から追い出された末、生れた子供だった。
隔世遺伝のためか、本人は寝る必要がなく、それを解明するためにも梟たちを集めて研究しようとしたのだった。
因みに、史奈を東京に連れ出した二人のうち、女の子の方はトップの娘で、そこに収容されていた史奈の母親の依頼で史奈を助けに行ったのだった。
史奈たちは収容された里の者や、史奈の母親を助け出そうとするが、彼らは頑として出て行かないと言う。
そしてここで研究の協力をすると言うのだ。
最終的には、研究機関のトップと、それに協力していた警備会社の社長で、同じく梟の一族だったものの<シラカミ>を出してしまったことで里から出た者たちとで里に戻る。
警備会社の社長は史奈の母親に不満があり、殺そうとするが、色々とすったもんだあったきり、彼の方が死んでしまう。また史奈の祖母もかばう内に亡くなってしまう。
最終的いは、史奈は祖母から里の長みたいな地位を引き継ぐ。
更に、梟の能力を維持するには井戸の水を飲む必要があることが分かったので、里から出た元梟の一族も呼んで、今後は井戸の水を確実に定期的に飲めるようにしようというところで話がまとまる。
と、ざっとしたあらすじはこんな感じ。
読んでいる時は、「どうなるんだ!?」とワクワクしたけれども、色々と解明されていく内に「なーんだ…」感が強くなる。
結局関わっているのが梟関係の人なので、結構世界が狭いのが、一番の「なーんだ」感の要因だと思う。
これがもっと大きな組織で、この能力を持っている人は静かにひっそりと暮らしたいのに、政府とか、もっと大きく世界の闇組織みたいなところが、梟を使おうとして追いかけまわす、という方が面白かったなー…みたいな。
もしくは、異能系の話でいえば、そういった能力を使って暗躍する…みたいなのが一番ワクワクするよなと思ったり。
もしかしたらそういうのを書きたかったわけではないかもしれないけれども。
あと割と興ざめだったのが、史奈が、最初に助けてもらった二人組の男の人の方とあっさり恋に落ちるところ。
しかも男の方も…
割と短い話で、人物描写もしっかりしてないなか書かれると、なんだかとてもチープに感じてしまう。
と文句ばかり書いてしまったけれども、題材は面白かったのに色々と惜しい…と思ってしまったから。
なので、根本は面白かったと思う。
福田和代『梟の一族』2019年、集英社
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