本屋さんで見かけた本。ポップに惹かれて面白そうだなと思って手に取ってみた。直感は正しかった。面白かったーーー!!!
常々、読書の醍醐味の一つとして、自分が絶対経験できないことを本の登場人物を通して追体験できることだと思っているのだが、まさにそれが体験できる本だった。
時代はまだドイツが東西に分かれていた時代。日本人が東ドイツへ音楽留学するお話で、その日本人、眞山柊史を主人公に物語が展開される。
東ドイツがどんなのであったのかは映画でしか観たことがなかったので、小説で、しかも日本人の目で体験できたのは非常に面白かった。
しかも華々しい話という感じではなく、ドイツのどよんとした暗い雰囲気がよく表れたような静かな物語だったというのもポイントが高い。
東ドイツ(DDR)の体制の中で葛藤するドイツ人、音楽のことで思い悩むシュウジ、色々なものを背負ってやってきた他の留学生。暗い雰囲気の中で光となる音楽。
そのバランスが絶妙で、初めての作者だけれども、良い本に巡り合えたなという感じ。
以下、あらすじ。
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「Bookmark」というフリーの本紹介冊子で紹介されていた本書。
黒人のファンタジーということで、確かに珍しいなと思って手に取った。
読んでみての正直な感想は、今のご時世で黒人のファンタジーということで受けたのかな…と思ってしまった。
かなり厳しい感想だけれども。
決して面白くないわけではないけれども、突出した感じはないかな…
登場人物の描写もなんだか浅い気がする。
確かにそれぞれ抱えているものがあるのは分かるけれども、割とそれらがありきたりな感じがした。
物語の視点がころころ変わるせいか、余計に一人一人の心情描写が深堀されていない気もする。
あと、図書館で借りた時には児童書のセクションにあったけれども、これは果たして児童書なのだろうか…?という描写も結構あった。
まぁ知っている人が読んだら「?」と思う程度なのかもしれないけど。
と文句ばかり書いたけれども、別に面白くないわけではないので、そこは悪しからず。
ただ期待値を高くしない方がいいかなという本だった。
以下、簡単にあらすじを。
やっぱりとても語りが面白い。
正直、恐竜はジュラシックパークを見てわくわくするのみレベルで全然知らないし、鳥のこともさほど興味ないけれども、こんなにも楽しく読めるって、よっぽどだと思う。
本書は、恐竜は鳥類の祖先だったのではないかという学説が出てきたことから、鳥類学者である筆者が、鳥類学者の視点で恐竜についてあれこれ考察する、という内容である。
なので恐竜の話のはずなのに、鳥類の知識がいっぱい身に着く、なんとも不思議な本でもある。
とりあえず、本書の目次を抜き出してみる;
はじめに:鳥類学者は羽毛恐竜の夢を見るか
序章●恐竜が世界に産声をあげる
Section 1 恐竜とはどういう生物か
Section 2 恐竜学の夜明け、そして…
第1章●恐竜はやがて鳥になった
Section 1 生物の「種」とはなにかを考える
Section 2 恐竜の種、鳥類の種
Section 3 恐竜が鳥にになった日
Section 4 羽毛恐竜の主張
第2章●鳥は大空の覇者となった
Section 1 鳥たらしめるもの
Section 2 羽毛恐竜は飛べるとは限らない
Section 3 二足歩行が鳥を空に誘った
Section 4 シソチョウ化石のメッセージ
Section 5 鳥は翼竜の空を飛ぶ
Section 6 尻尾はどこから来て、どこに行くのか
Section 7 くちばしの物語は、飛翔からはじまる
第3章●無謀にも鳥から恐竜を考える
Section 1 恐竜生活プロファイリング
Section 2 白色恐竜への道
Section 3 翼竜は茶色でも極彩色でもない
Section 4 カモノハシリュウは管弦楽がお好き
Section 5 強い恐竜にも毒がある
Section 6 恐竜はパンのみに生きるにあらず
Section 7 獣脚竜は渡り鳥の夢を見るか
Section 8 古地球の歩き方
Section 9 恐竜はいかにして木の上に巣を作るのか
Section 10 家族の肖像
Section 11 肉食恐竜は夜に恋をする
第4章●恐竜は無邪気に生態系を構築する
Section 1 世界は恐竜で回っている
Section 2 恐竜の前に道はなく、恐竜の後ろに道はできる
Section 3 そして誰もいなくなった
あとがき:鳥類学者は羽毛恐竜の夢を見たか?
文庫版あとがき、あるいは鳥がもたらす予期せぬ奇跡
正直なところ、私にとっての本書は、恐竜について知識を得るためのものでも、鳥類について知識を得るためのものでもなく、単純に筆者の文章を楽しむためのものなので、内容をまとめるというより、面白かった文章をただただ羅列していきたい。
次に、恐竜を取り巻く動物との関係を見ていこう。恐竜が爬虫類であることは、発見当初から異論なく認められてきたことだ。クラゲの仲間だと思っていたという人には、この本の内容は衝撃的すぎるので、ここで本を閉じてもらいたい。(p24)
(古代の大型爬虫類としては、魚竜や首長竜、翼竜などもいて、しばしば図鑑などでは恐竜と一緒に語られるけれども、実は恐竜とは違う種類)
身近な爬虫類であるトカゲやヘビは、鱗竜形類というグループに含まれる。このグループには、モササウルス類や魚竜、首長竜も含まれる。…(中略)…首長竜は、日本で見つかったフタバスズキリュウを含む水棲爬虫類。ドラえもんの映画『のび太の恐竜』で主役を演じ切ったピー助は、フタバスズキリュウだ。つまり、残念ながらピー助は恐竜ではない。さらに、のび太はタイムふろしきで化石の卵を孵化させるが、最近の研究では首長竜は卵生ではなく胎生の可能性が指摘されている。科学は、ときに子供の夢を壊す悪魔になる。(p24-25)
(補足すると、恐竜は主竜類というグループで、ワニと同じグループに属する)
(シソチョウについて)
(略)あれだけ立派な翼をもっているのである。しかも飛ぶための羽毛である風切羽は、飛行に適した左右対称の形をしている。また、脳の形態を現生鳥類と比較した結果からも、飛翔を充分に制御する能力があったと考えられている。このような翼や骨格の形態を背景として、シソチョウは羽ばたきは無理でも滑空はしていたであろうと考えられることが多い。現代の鳥類を観察している立場から見ても、あの格好で飛べなかったら詐欺だ。科学的論証はさておき、私はシソチョウは飛べたと直感的に信じている。うん、我ながらじつに科学的ではないが、ときには直感も大切な判断材料であることを御理解いただきたい。(p140)
現生鳥類はみな、くちばしをもっている。100%、全種がもっている。そして、その代わりといってはなんだが、歯が存在しない。就寝前に歯磨きしなさいと母鳥に怒られる鳥の姿を見たことがない理由は、この点にある。(p184)
(上の続きで、歯があった恐竜からくちばしになった理由)
指がなくなったときに、ペンチとピンセットのどちらかを選ばせてもらえるなら、やはりピンセットだろう。鳥のくちばしは、歯のある口の代わりに生まれたのではない。むしろ、手の代用品として生まれたというべきだ。オウムの仲間では、木を登るときに、足だけではなくくちばしでも枝をつかんで、まさに手のように使用する。「くちばし=手+口」という公式を作り、理科の教科書に載せ、試験前の高校生に暗記させたいくらいだ。(p193)
足跡化石は、本人の化石が残っていないゆえになおさら想像力を刺激する。なにしろ、織田信長の足跡すらみたことのない現代人が、1億年も2億年も前に恐竜が歩いた痕を、目の当たりにできるのだ。このことにロマンを感じる人は、ぜひ未来の古生物学者にも同じ感動を味わわせるため、今すぐにでも近所の沼地の泥の上にて裸足でスキップするとよいと思う。(p211)
さて、図鑑を見ると、こちらは植食、こちらは肉食、こちらはアリ食、とさまざまな恐竜の食性に言及している。…(中略)…しかし、その根拠は間接的、断片的な場合が多く、真実の食性が明らかな場合はほとんどない。胃内容物の発見も、死亡直前にそれを食べていたことを示すだけで、種の代表としての食性を反映しているかどうかは別だ。今私が死ねば、100万年後にチロルチョコの化石とともに見つかる。だからといって筆者はチロルチョコばかり食べていた甘えた男だったと図鑑に書かれるのは、真っ平御免だ。(p269)
私もこういう風にユーモアにあふれつつ分かりやすい文章を書いてみたいもんだと思った。その前に何について書くんだ?という話だが…
川上和人『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』2018年、新潮社
なんとなく骨太な海外の本が読みたくて、あまり内容を覚えていなかったけれども『
逆さの十字架』が面白かったことは覚えていたので読んでみた。
そこそこ分厚い本なのに二段組の印刷になっているので、ページ数よりも長く感じる本。
更に物語も濃厚なので、読了後の感覚は、それ以上の長さに感じた。
でもその長さが苦痛というわけではなくて、ぐいぐいと読める内容。
ドラッグの話も出てくるので、少し前に読んだ『
テスカトリポカ』を思い出したけれども、その2・3倍感じる物語量だった。『テスカトリポカ』も割と長かったけれど。
というわけで、読了後の達成感たるや。
そして終わり方も良かったので気持ちよく読み終えられたのも点数が高い。
簡単にあらすじを書くと…