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がらくたにっき |

それにしてもジェディが最後まで自分が太陽神〈ラー〉と勘違いされてると気付かなかったのがフに落ちない

何故かファンタジーは好きなのにSFはあんまり好きでない。好きじゃないというより苦手。でもどこが苦手と口で言い表せないので、虫が好かないってのが一番いい言葉かもしれない。

何故か結構人気のあるエジプトがあんまり好きでない。これも好きじゃないというより苦手。でもこれは理由がある。なんとなくあの「エジプト文明」とやらが怖くてたまらない。ピラミッドなんて暴くなよ~!って本気で思うくらい怖いし、博物館でエジプトミイラとか祭具が飾ってあると呪われそうな気がしてならない。とにかくエジプトはあんま関わりたくない。

それなのにこの二つが合体した「ラー」を読み終わってしまった! しかもかなり楽しんで!

大体、なんで読もうと思ったのかが謎だが、多分この本の情報の出所(推定)である三浦しをんさんのエッセイで、熱く語られていて面白そうと思ったんでしょう。

主人公はジェディ。彼がどこ出身の人かとかの情報はないのだが、一人の「エジプト」、特にピラミッドに魅せられた現代人。彼の持つすべての物を投げうって、タイムマシーンを完成させ紀元前2624年、ピラミッド建設中の時代へとやってきたのだった。

かの有名なピラミッド(たぶん、エジプトと言えば思い出すあのピラミッドのことだと思うけど)は、現代ではクフ王のピラミッドということになっているが、ジェディは意外な事実を知る。
それはというと、ピラミッドはもっと大昔から建立が始まっていて、ある目的のもとで建設されていたのだが、クフ王はそれを文字によって乗っ取ろうとしていたのだった。ジェディはなんとかこのピラミッドの秘密を探ろうとするのだが、ピラミッド建立の監督官であるメトフィルもそれに対しては口を閉ざしたまま。
現代に戻るのにタイムリミットもある中、奔走するのだが・・・

というストーリーラインだけが面白いのではなく、設定とか考え方などが面白い。
例えば、古代エジプト人ははっきりと地球が太陽の周りを回っているということを認識をしていた、というのも面白い。
最後にジェディが行き着いた結論、というか正確に言うと結論に至るまでの考察もなかなか興味深い;

 それこそが、ジェディの同時代人たちが超能力という名で呼ぶものではなかったか。霊とは単に人間の中に生じる神秘的融即などではなく、まさしくすべての存在の抽象的な側面なのだ!
 タウィの民が神々と呼ぶものは、言わば肉体を持たない、純粋なる魂だったのではないだろうか。彼らの世界は本来、やはり純粋な抽象の世界だったのかもしれない。しかし物質の宇宙にエントロピーが蓄積してゆくのと同時に、抽象の宇宙にも劣化が起こり、それは物質で出来た宇宙を生み出した…(中略)…。魂もまた、抽象世界から具象世界に向かって落ちて肉体というものを持つようになり、物質の世界に住まざるを得なくなった。(p234-235)

エジプトに興味がある人が読んだら、私の何十倍も楽しめるのは間違えなく、ジェディが至る結論も何割増しか興味深かったかもしれない。
それでもなんだかんだ楽しめて一気読みできたのが、自分にとって驚きだった。
ということで、「アイオーン」読んでみようかと画策中。


(高野史緒 「ラー」 2004年 早川書房)

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Category : 小説:SF
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