食べ物の話のゲテモノ食い的なところが好き
津原泰水 「ピカルディの薔薇」 2006年 集英社
「猫ノ眼時計」を図書館で借りてきたら、なんと「蘆屋家の崩壊」の続き本ではないか。そんでもって間に「ピカルディの薔薇」があるではないか。ということで慌てて借りてきた「ピカルディの薔薇」。
「蘆屋家の崩壊」の猿渡氏が好きなのでいそいそと読んだ。
思うに、「綺譚集」で“あまり合わないな…”と思いつつも妙に印象がずっと残っていて、むしろ時間が経てば経つほど“面白かったのかも”と感じていたのが、今読むと文章が好きということが分かった。
それから「蘆屋家の崩壊」から始まるシリーズでいえば、飄々さが含まれていて尚良しというわけだ。
「蘆屋家の崩壊」と同じく「ピカルディの薔薇」も連作となっているので、各話の概要を記す。
精神病院の患者である人形作家と知り合う(ちなみにこの時の猿渡は小説家になっている)。自分を投影した人形なのか?という猿渡の質問に感化された人形作家は、自画像を意識した作品を作って個展を開くと連絡してくる。
結:人形作家自身が人形となり箱に入るのだが、足が入りきらず自分で切断。出血多量で死体となって見つかる。
籠中花
白鳥飛鳥という資産家が主鵺島を買い取りリゾートにしようとした。が、この島では巨大な寄居虫(やどかり)が生息しており、大行進してしまうので工事が難航していた。
この島にはの榕樹伝説があり、簡単に要約すると、ある娘がその樹に取りこまれるのと引き換えに島を高波から守ったというもの。その取材に伯爵が行きたいというので猿渡も付き合ったというわけ。
結:白鳥はひょんなことから榕樹にはまってしまい抜けなくなる。最初は榕樹を伐るなと言っていたが寄居虫に負けて、結局樹を船を使って引っこ抜こうとしたがうまくいかず、樹もろとも海に沈んだ。
フルーツ白玉
白鳥との食べ物談義について。出てくる食べ物は、キビャック(イヌイットの発酵食品。皮下脂肪と皮だけにした海豹に、海燕の一種のアッパリアスを殺して詰め込み(100羽くらいになるらしい)、皮を縫い合わせて密封、地面に埋めて1年か3年後に掘り出す)、雀の丸焼き、猪、ザリガニ、血を吸ったヒル。
夢三十夜
平太郎という男の双子の妹から聞いた、平太郎の夢の話。
甘い風
この話の中では、猿渡は小説家でしかも結婚している。
骨董屋さんでウクレレを見つける。骨董屋の主人曰く、前の持ち主は自分の奥さんと引き換えにこのウクレレを手に入れたと言う。
新京異聞
猿渡の祖父の話で戦前、中国が日本の支配下にあった時の話。同級生(あだなが伯爵)が上海の楽団の指揮者になったと聞いて、上海に行ってみる。そこで泊まらせてもらった家の女の子に連れられて、その子の中国人の同級生の家に遊びに行く。
美しい母親がおり不思議な話を聞く。
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