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がらくたにっき |

“日本”の仏教史というのがミソだった

末木文美士 「日本仏教史 -思想史としてのアプローチ-」 平成8年 新潮社




読書会のテーマ本「日本仏教史」。
仏教のことをちゃんと学んだことがなかったので、なかなか興味深かかった。
しかも思想という観点から書かれているので、歴史としての仏教史よりもとっつきやすかった気がする。

読書会用に作成したレジュメは次の通り;

ひとことで表すと
思想に焦点を当てた、日本での仏教展開について書かれたもの。最後に仏教史という研究分野についての言及があるのも興味深かった。

【仏教という思想について】
 「空」が思想の中心…一切の言語概念による把握の否定であり、真理はどのような言語概念によっても把握されないと説く(p55)→「始めに言葉があった」というキリスト教の考えと真逆をいく思想
 従来の仏教=出家修行した者だけが悟りに達することができる⇔大乗仏教=誰でも悟りがひらくことができる、自分だけでなく一切衆生を救済しようという利他の精神こそ根本(p100)→もともと仏教は個人主義的な宗教だった?
 縁起(仏教思想の大きな特徴)…あらゆる現象世界の事物は種々の原因や条件が寄り集まって成立している=他によらずして自存し、永遠に存在するものは何もない…縁起の原理は実体が存在しない(p175)
【日本の仏教】
 仏教は外来の宗教!⇒仏は「客人神」として受け取られた(p21) / 葬式仏教---穢れを忌む日本人、外来の宗教にまかせることによって安定した生活構造を確立(p236) ⇒それでいて導入時、教典は漢字に翻訳されていたので、日本での翻訳作業は必要なかった(p71) / 漢文が外国語ということを忘れられがち(p348) →日本で独自の展開を行っただけではなく、原点ですら意訳されているとは、日本の仏教史研究の困難さが窺える
 [密教の即身成仏義…日本人の宗教観を理論化したともいえる面を持つ]日本人は現象界の外に絶対神をたてたり、イデア的世界を認めたりせず、現象世界をそのまま肯定する傾向が強い(p115) / [日本の民族的信仰に比べて、仏教の死生観が理論的にはるかに整備されていた]日本人の考え方は現世主義的な傾向が強く、死後の世界への思索は弱い(p287) →日本人には“Another World”という概念が薄いのか?(ただし、常世の国などは古事記などに登場する)
 草木成仏…中国の草木成仏より発展して、一本一本の草や木がそれぞれ、それ自体で完結し成仏している=仏の絶対の立場からみるという前提がきわめて弱い、平等の真理性という抽象的な次元でなく、個別的具体的な現象世界のいちいちの事物のあり方がそのまま悟りを実現しているという面が強い( p171) →絶対性に弱い/抽象性に弱い
 口称の念仏は呪術的発想に結び付きやすい…古代人の発想=言霊思想⇒阿弥陀仏の名前をとなえると、阿弥陀仏の絶大の力をはたらかせることができる(p153) →本来の仏教の思想(言語概念による把握の否定)とは離れる

最後に
仏教の思想と日本人の思想体系を考えると、仏教は取り入れやすかったのではと思った。
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Category : 学術書
Posted by nizaco on  | 2 comments  0 trackback

2 Comments

麻里 says..."にざちゃん凄いね"
レジュメを作る読書会なんて!超勉強になるねー。私も勉強になりますわ。ありがちゅう。
2013.03.23 21:31 | URL | #- [edit]
nizaco says...""
麻里ちゃん>そうなんだよ!結構ためになるよ~レジュメ作りは大変だけどね…
2013.03.24 21:56 | URL | #- [edit]

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