名前が一風変わった人ばかり
津原泰水 「ルピナス探偵団の当惑」 2004年 原書房
すっかり津原泰水を気に入ってしまったので、違う作品を借りてみた。
主人公が女子高校生ということもあって、割とさらりと読めた。
しかも短編の推理小説。
特別推理が冴えるものではないけれども、直観力でなんとなく事件を解決してしまうという態が面白かったし、キャラがやっぱり面白かった。
主人公はルピナス学園に通う高校生の彩子。
姉の不二子は警官で、割と破天荒な性格。両親は赴任しておらず、二人で留守を預かっている。
どうやら本書の前でも、彩子がその直観力で事件を解決したことがあるようで、不二子や不二子の上司(といっても不二子に良いように扱われている)の庚午に事件を持って来られて、解決を迫られる。
といっても彩子は血とか嫌いだし、本当に迷惑している。
彩子には、少年風のキリエと美少女の摩耶という二人の友人がおり、それと想い人の変人、祀島と事件に巻き込まれつつ解決していく。
収録作品は3作;
冷えたピザはいかが
エッセイストが殺された。なぜかPCの上にはピザの空箱が。しかし彼女の胃袋の中にはピザはなかった。
ようこそ雪の館へ
不二子にスキー旅行に駆り出された彩子・キリエ・摩耶・そしてなぜか祀島。雪道で迷って、ある邸に辿り着く。そこは有名な作詞家の家で…。次の日にはその作詞家が遺体で発見される。
大女優の右手
女優が舞台の途中で脳梗塞で死んでしまう。突然死体が消えるが、その後にトイレで見つかる。右手が切り取られ、そこにはめていたはずの腕輪がなくなっていた。
続きは各章の犯人↓
エッセイストの編集者が犯人。キーはピザ。彼女はチーズが嫌いでピザを食べたことがなかった。そのため、そのピザがその日に頼んだものでないことが分からず、1切れだけ残っていたら“食事中のところを殺された”と気付かれてしまうと思い、ピザを食べてしまった。
ようこそ雪の館へ
犯人は作詞家の弟。が、実は彩子たちが館に着いた時には既に殺されており、彩子たちが会った作詞家は弟が女装したものであった。
大女優の右手
正直、これは書き下ろしのせいかあまりピンとこなかった。
女優の死因は紛れもなく病死だが、右手を切って腕輪を取ったのは、女優の親戚。実は女優自身も、戦後のごたごたですり替えられたそっくりさんだった(本物は病死)、というオチ付き。
会話がぽんぽんと進むのが面白かったりするのだが、事件の結果としては“謎が解けてすっきり!”という爽快感はそんなになかった。
そこらへんを求めて読んでいなかったので全然よかったけれどもね。
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