色々と邪推しながら読んでしまった
アゴタ・クリストフ 「悪童日記」 堀茂樹・訳 2001年 早川書房
妹に執拗に「面白いから読んで!」と言われて読んだ「悪童日記」。
名前はよく聞いたが読んだことなかった。
読了後の感想としては、あまりに内容が衝撃的すぎて
素直に”面白い”とは言えない本であった。
正直、うかつに人に勧められない気がする…
悪童といっても、やること為すことが悪魔のごとく、本気で「悪」童なのだ。
しかも男同士の恋愛どころか、Mな成人男性と少年、という組み合わせがあったり。
妹の名誉(?)の為に言っておくと、妹が好きなのは文体だそうな。
真実しか書かない、という意味で、非常に簡潔な文章で
いっさいの感情を表さない文章が斬新とのこと。
なるほど。
さくさくと読めるし、とにかく「えー!えー!えー!」と驚きの連続だったので一晩で読み終えてしまった。
正直、しっかりとしたストーリーラインがあるというわけではなく、
主人公である双子が日常を語っている形となる。
双子の名前は明かされず、ずっと「ぼくたち」という書き方で進む。
時代背景や舞台などがはっきり書かれていないのだが、
作者の故郷であるハンガリーとされている。
物語は戦火を逃れるため、母親に連れられて大きな街から、
母親の母、つまり祖母が住む小さな街にやってくるところから始まる。
母親は祖母に二人を預けると、いつか迎えに来るから、と言って元の大きな街に帰って行く。
この祖母というのが、『優しいおばあちゃん』という訳ではまったくなく、
街の人に魔女と言われているような人で、
街の人の噂では、夫を毒殺したことになっているくらい。
汚いし偏屈だし、孫に労働を強要し、働かないと食べさせない、といった調子。
衝撃的なことが色々と起こるのだが、
例えば神父様のところに定期的に行くことになり
(きっかけは、隣に住む兎っ子と呼ばれる兎口の女の子に対して
神父様が性的いたずらをしていて、それをゆすりにいく)
そこで神父様をお世話している若い女性に気に入られる。
祖母の家ではお風呂も入れてもらえないので、その女性が可哀想に思い
お風呂に入れてくれることになるのだが
なぜかその女性を暖炉に押し込んで火傷させる。
もちろん、先に書いた、Mの男性と…というのもなかなかびっくりで
祖母の家に駐屯している将校にはそういう趣味があって
双子たちは将校を鞭打ちしたりする。
兎っ子の最期も壮絶。
兎っ子には精神がおかしくなって口を利かない母親がいる。
それもあってか兎っ子は愛されておらず、性的に求められることが愛されている証拠だと思っているふしがある。
戦争が終わり、ソ連軍がやってくると、兵士たちは兎っ子を犯し続け
ついに兎っ子は死んでしまう。
双子たちが家に行くと、母親が自分も殺して欲しいと言って来るので
双子は家に火を付けるのだった。
物語としての展開としては、
戦争が終わる直前に、母親が男と赤ん坊を連れてやってくる。
戦争に出て行方不明になった父親の代わりにと男と結婚し
赤ん坊は双子の妹だという。
そして、双子に一緒に付いてきてほしい言うのだが、双子は祖母の家に残りたがる。
押し問答している内に、爆弾が投下され母親は目の前で妹もろとも死んでしまう。
その後、双子の父親が母親を訪ねてやってくる(死んでいなかった)。
母親は死んだというのだがなかなか信じず、母親を埋めたところを掘り返す。
そこには母親の遺体と共に赤ん坊の遺体もあったので、そこで父親は
母親が別の男の元へ走ったのを知り、去る。
祖母はというと、いよいよ歳をとり、脳卒中で倒れる。
その時は一命をとりとめるのだが、双子に助けたことでなじり、
今度倒れたら殺して欲しいと言う。
そうして双子は命令通り、祖母を殺すのだった。
本書の最後で、また父親が訪ねて来る。
このままだと投獄されるので、国外に逃げたいと言う。
祖母の家は国境の近くなのだ。
国境越えをする人を何度も見ている双子は父親に助言し、
身分証明書の類いをすべて燃やすように言う。
そして次の日、父親と一緒に国境近くまで行き、
父親に行かせる。そうすると父親は殺されてしまう。
実は、双子は国境越えする時、1人目は殺されてしまうが、
2人目は大丈夫、ということを知っていて
父親を犠牲にして、二人の内一人は国外に逃亡するのだった。
ずっと衝撃的なエピソードが続くのだが、
最後の父親殺しは、ガツンとやられた感が満載だった。
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