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がらくたにっき |

前作よりもアクがなくなった気がする

アゴタ・クリストフ 「ふたりの証拠」 堀茂樹・訳 2001年 早川書房




「悪童日記」を読み終え、すぐさま読み始め、また一気読み。
「悪童日記」で祖母の家に残った双子の片割れの話となっている。

1作目と違い、名前がしっかりと出てくるようになる。
(確か、「悪童日記」では名前がほぼ出て来なかったような…)
書き方も一人称でなく、三人称で書かれている。

今回もショッキングな内容が出てきたが、
私としては「悪童日記」の最後がショック過ぎて
変な免疫がついてしまったのか、あまりショックに感じなくなってしまった。

以下あらすじ

取り残された方は「リュカ」。
途中で出てくるのだが、国外に出た方は「クラウス」という。
スペルを見ると、リュカとクラウスは並び変えた形になっている。

リュカは畑の野菜を売ったりしながら生計をたてている。
政府官僚のぺテールと、ちょっと愛人的な仲だったりして
便宜をはかってもらったりもする、ちゃっかり具合は健在。

ある時、実の父親とできて、子どもまでできたヤスミーヌを
子供ごと引き取ることになる。
子供はマティアスというのだが、産まれついての不具であった。
それでも愛情を注ぐリュカ。
だからといってヤスミーヌとは恋人同士になるわけではない。

それどころかヤスミーヌはマティアスを置いて出奔してしまう。
と思いきや、実はリュカが殺していた。

リュカは本屋であったヴィクトールから店兼家を買い、そこに移り住む。
ヴィクトールは生き別れていた姉の元へ行き、小説を書くことを決めたのだった。

が、結局、ヴィクトールは口論の末、姉を殺してしまう。
絞首刑に処せられることになるのだが、ぺテールが最後にヴィクトールに会った時に
ヴィクトールが語る内容が興味深い;

“私は、自分がもうすぐ死ぬと知っているよ、ぺテール、だけど理解できないんだよ。一つの死体、姉の死体だけですむところに、二つ目の死体、私の死体が出るわけだよね。でもいったい誰が、二つの死体を必要としているんだい?神かと思ってはみるけれど、そんなはずはない。神は、われわれの肉体なんかに用がないからね。社会かね?社会は、私を生かしておいてくれたら、誰の利益にもならない死体をもう一体よけいに得るかわりに、一冊もしくは数冊の本を得ることになるだろうに”(p238)


リュカがマティアスを溺愛しているのだが、
マティアスはその愛を疑っているふしがある。

リュカの反対を押し切って学校に行くと、びっこのせいもありマティアスはひどいいじめにあう。
それに屈せずマティアスは学校に行き続けるのだが、
先生がリュカの元へ訪れ、マティアスが学校に行くのを止めさせてくれと言って来る。

その時に、本屋さんを子どもたちに開放してはどうかと提案する。
提案通り、子どもたちに開放し、マティアスと仲良くなってもらおうとするのだが
その中に金髪で美しい男の子がやってくるようになる。

マティアスはその子を嫌っているのだが、マティアスの失敗により
うっかりその男の子を夕飯に呼んでしまうことになる。

リュカと金髪の少年のぴったり具合に絶望したマティアスは自殺してしまう。
それを発見して絶望するリュカ。

それから何年も経ったある日、クラウスがこの街にやってくる。
びっくりしたぺテールが語るには、リュカは突然この街からいなくなったという。
ぺテールは「リュカ、冗談はよせ」と言うのだが、クラウスはクラウスだと主張して譲らない。
クラウスはホテルに泊まって、街を散策したりするのだった。

そして本書は最後にクラウスに関する調書で締めくくられる。
なんでもビザが切れても居続けているクラウスに関して、クラウスが国籍を持つ国の大使館へあてた調書になっているのだが、
そこには今までの話が全部嘘だったような内容が書かれている。

つまり、一人残されたリュカが、クラウスが帰ってきた時の為に書きためていた、というものは
クラウスがこの街にやってきた時に書いたものだと調書に書かれているのだ。
(ペン跡などが新しい)

え?どうこと!?という形で話が終わる。
「悪童日記」の物語らしい物語がない感じが独特で面白かったのに
本作は、普通の小説っぽくなってしまったのが、若干残念だった。
それでもぐいぐいと読めるくらい面白かったが。
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Category : 小説:近代
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

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