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がらくたにっき |

ドストエフスキー『悪霊1』

1をとっくの昔に読んだものの、なんとなく手付かずのまま、すっかり1の内容を忘れ…
そしてこのブログにも残っていないので、思い起こすこともできず。
ということで再読した。

久しぶりのロシア文学のわちゃわちゃ感。
特に事件があるわけではなく、様々な変わった人たちが出てきて、わーわーなっている感。
あ~好きだな…と思いつつ、これをブログで簡単にあらすじ残すって難しいな、と8年前の自分の同情した。

が、未来の自分のために頑張って書く!

基本的の物語は、「わたし」が語り手となり、「わたし」の視点で、彼の町で起きた様々なことが描かれている。
1巻目は、登場人物紹介の雰囲気が大きく、色んな登場人物が出てくる。

まず「わたし」の話の中心となるのが、ヴェルホヴェンスキー氏。
文化人で、ワルワーラ夫人の”友人”だが、実質的にはワルワーラ夫人の食客みたいな感じ。
ヴェルホヴェンスキー氏を中心に文化的サークルが形成されていて、「わたし」はその中の1メンバーだけれども、特に仲が良い。
ヴェルホヴェンスキー氏はなかなか情緒不安定なところがあって、「わたし」は呼ばれたりしている。

ワルワーラ夫人というのは未亡人であり、村の大地主であり、町の有力者。
夫の財産というより、自分の親の財産でお金持ちという感じ。
決して美人ではないが、知性あふれる女性。
ヴェルホヴェンスキー氏を、自分の息子・ニコライの家庭教師に迎えて以来、面倒を見ている。
でもヴェルホヴェンスキー氏がだらしなく、賭け事とかで借金を重ねていっているのにイライラしている。

ワルワーラ夫人の一人息子ニコライは、美青年で、ワルワーラ夫人の自慢の息子。
でもペテルブルクに行ったきり戻って来ず、ワルワーラ夫人は気をもんでいる。

ある時、ニコライが町に戻って来てから物語が進む。
イケメンなニコライは、その町の社交界に快く受け入れられるが、だんだんと奇行が目立つようになる。
ペテルブルクでも決闘をして人を殺した、という噂が流れていたが、それを裏付けるような行動が増える。
ワルワーラ夫人はニコライに対して、あまり強く言えない感じもあって、ニコライを止めることも、かばうこともなかなかできない。
そうしているうちに、ニコライはふと町を出て行ってしまう。

この町に新しい県知事が赴任してきたり、その他、新しい人たちがやってくる。
その中に、ワルワーラ夫人の女学校時代の友人、プラスコーヴィヤ夫人と、その娘リザヴェータもいた。
この二人は、町に来る前にニコライとスイスで会っており、交流していたみたい。因みにスイスには、ワルワーラ夫人の養女ダーシャと、ヴェルホヴェンスキー氏の息子ピョートルもいたらしい。
でも、ワルワーラ夫人とプラスコーヴィヤ夫人はずっと前から喧嘩しており、状況を聞くことはない。
因みに、リザヴェータは子供の頃、ヴェルホヴェンスキー氏に勉強を教えてもらったりしていた。

もう一組、新しくやってきた人の中で重要となるのが、レビャートキンとマリヤの兄妹。
レビャートキンは自称「退役二等大尉」だが、今は大酒飲みのどうしようもない奴。
足の悪い妹、マリヤを足蹴にしていて、家庭内暴力がすごい。
「わたし」は、兄妹の上に住んでいるシャートフと助けようとしたが、マリヤ自身がどこ吹く風で、レビャートキンは自分の手下だと言っている。ちょっとマリヤも変わっているという兄妹。
また、レビャートキンは町へやってくる前にニコライと会っているらしく、ニコライからお金をたんまりもらったことを匂わせている。

それと同じくらいの時に起こる出来事として、ヴェルホヴェンスキー氏の再婚話の浮上がある。
ヴェルホヴェンスキー氏はかつて結婚していて、ピョートルはその亡き妻との間の息子。因みにこの息子とは長年会っておらず、更には息子が受け継ぐべき妻の資産を一部使い込んでしまっているというダメ父親っぷりである…

再婚話はワルワーラ夫人が持ってきて、シャートフの妹で、ワルワーラ夫人の養女ダーシャとの再婚を勧めたのだ。
ものすごい歳の差ではあるが、ワルワーラ夫人に言わせると、ダーシャは年の割にしっかりしているのでだらしないヴェルホヴェンスキー氏の世話を任せられるし、ヴェルホヴェンスキー氏も一応教養があり立派な人であるはずだからダーシャに良いのではないか、ということだった。
ヴェルホヴェンスキー氏は最初戸惑うが、ワルワーラ夫人がダーシャに用意する持参金が、自分が使い込んでしまったピョートルの資産と同じ金額だったので受け入れる(なかなか最低だが…)。

その話を正式にしようとしたその日。
ワルワーラ夫人が教会から帰ろうとすると、マリヤが道を塞ぐ。乞食のような恰好だったので、ワルワーラ夫人は情けをかけショールをかけ、馬車で家に届けようとするが、マリヤの家が分からないのでいったん、自分の邸に連れて帰ることにする。
それを見たリザヴェータは、元々マリヤに関心があったのもあったので、ワルワーラ夫人に頼んで、母親と一緒にワルワーラ夫人の家に行くことにする。

こうしてワルワーラ夫人の家には、ワルワーラ夫人、マリヤ、リザヴェータ、プラスコーヴィヤ夫人、リザヴェータの婚約者であるドロズドフ大尉、そしてワルワーラ夫人と約束していたのでヴェルホヴェンスキー氏、シャートフと「わたし」もいた。そこにダーシャも加わる。
更にマリヤを引き取りに、レビャートキンが現れ、リザヴェータに恋しているレビャートキンは、意味不明な詩を披露したりなんかする。

すると突然、ヴェルホヴェンスキー氏の息子、ピョートルが現れるのだった。
感動するヴェルホヴェンスキー氏を軽くいなしながら、最近出回っているニコライの噂の真相を語り始める。
噂とはマリヤとニコライが結婚していた、というものだが、これはまったくの誤りで、ただニコライがおふざけでマリヤを丁重に扱っていると、マリヤがすっかりニコライを崇拝するようになった、というだけだった。
そこにニコライも姿を現わす。そしてマリヤをまた丁重に扱って、邸の外へ誘う。

ワルワーラ夫人たちの誤解を解いたあと、ピョートルは爆弾を投下する。
実は、ワルワーラ夫人はヴェルホヴェンスキー氏に再婚の話は誰にも言うなと念を押していた。
それなのに、ヴェルホヴェンスキー氏はピョートルに手紙を出して知らせたばかりか、色んなひどい言い訳をしていたのだった。その言い訳とは、ヴェルホヴェンスキー氏は「スイスでの不始末のために、私が結婚しなくてはならない」ということだった。つまり、リザヴェータはスイスでお手付きになってしまったので、その尻ぬぐいに自分は結婚しないといけないようだ、ということだったのだ。
ところが、ピョートルは誰と結婚するか分からなかったので、リザヴェータに「あなたも結婚するんですね」(リザヴェータと前に会っている)と言い、「うちの父も再婚するみたいなんですよ」と言い始めて、その手紙の内容をぺらぺらと披露してしまう。
それを聞いて激怒したワルワーラ夫人は、ヴェルホヴェンスキー氏にすぐさま出ていくように言う。

更なる混乱、本書最後の出来事として、シャートフはニコライの元へとつかつか歩み寄ると、突然殴ったのだった。
ワルワーラ夫人が絶叫するなかニコライは何も言わず、そしてシャートフが先に目をそらして、邸を出て行くのだった。


以降、面白かった箇所を少し抜粋…

ヴェルホヴェンスキー氏とそのサークルについて。ヴェルホヴェンスキー氏を尊敬しているのか何なのか分からない皮肉っぽい文章が面白かった。
 一時期、町では、わたしたちのサークルが自由思想と放縦と無神論の温床だという噂が広まった。しかもその噂は強まるいっぽうだった。ところがそのじつ、わたしたちのあいだでは、ごく無邪気でかわいらしい、完全にロシア的で、陽気でリベラルなおしゃべりが交わされていたにすぎない。「最高のリベラリズム」と「最高のリベラリスト」、つまりなんらの目的ももたないリベラリストは、ロシアでのみ見られる存在である。ヴェルホヴェンスキー氏は、ウィットにあふれる人間の常として、なんとしても聞き手が必要だったし、おまけに、自分がひとつの理念の伝道者として最高の義務を果たそうとしている意識も必要だった。…(中略)…また、誰もが知っていて丸暗記している、いかにもロシア式のスキャンダラスな小話を、何百回も繰り返さずには気がすまなかった。(p75)

ワルワーラ夫人のヴェルホヴェンスキー氏への言葉が辛辣すぎ。因みにワルワーラ夫人はステパンさんと呼んでいる
「ステパンさん、もうけっこう、ちょっと休ませてくださいな。疲れてしまいましたから。お話ならこれからいくらでもできますでしょ。とくに悪い噂話ならね。あなた、お笑いになるときに唾が飛ぶようになりましたよ。それって、なんというか、もうろくしはじめた証拠ですからね!それにこのごろ、なんてへんな笑いかたをするようになったんでしょう……ああ、ほんとうに悪い癖がたまりにたまって!あなたのとこなんか、カルマジーノフだって訪ねて来やしませんよ!それをまあ、なんにでも嬉嬉として……あなたはね、もう正体まるだしなの。もう、けっこう、けっこうです。疲れました。そろそろ勘弁してくださいな!」
 ヴェルホヴェンスキー氏は「勘弁」し、部屋を出ていったが、その後ろ姿はいかにも困惑した様子だった。(p142-3)
シガリョーフという人の描写がすごい
ヴィルギンスキーが、たまたま通りで彼を紹介してくれた。これまでわたしは、顔にこれほどの陰惨さ、うっとうしさ、憂鬱さを浮かべている男を見たことがない。彼は、世界の滅亡を待っているとでもいった顔をしていた。それも、ことによると実現しないかもしれない予言にしたがっていつかは起こるだろう、という感じのものではなく、たとえば明後日の午前十時二十五分きっかりに、寸分のくるいもなく、正確にそれが起こると信じて待ちうけている顔なのである。しかしわたしたちは、そのときにはほとんど言葉をかわさず、たがいに陰謀をたくらんでいる者同士といった感じで握手しあっただけだった。何よりもわたしが驚かされたのは、不自然なくらいの大きさをもった彼の耳で、長くて広いうえに、やたらとぶ厚く、なんだか不揃いにぴんと突きだしている感じがあった。身のこなしはぎこちなく、のっそりとしていた。かりにリプーチンが、いつしか共産組織(ファランステール)がこの町に実現することがあるかもしれないと夢みているとすれば、この男は、それがいつ実現するのか、日時までも確実に知っていたことだろう。(p328-9)

さて、1の内容を忘れないうちに、今度こそ2を読まなくては…
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Category : 小説:古典
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