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がらくたにっき |

フィリパ・ピアス『まぼろしの小さい犬』

河合隼雄の児童文学についての本を読むのにあたって、そこで紹介されている本を読もう企画(自分主催)。
第二弾は『まぼろしの小さい犬』。
これは小さい頃に読んだ記憶はばっちりあるけれども、あまり面白くなかったというネガティブな感想のみで、まったく内容を覚えておらず再読。
再読してみたけれども、やっぱりあまり面白いとは思えなかった……
同じ作者の『トムは真夜中の庭で』はとっても面白かった記憶あるんだけどな…

なんで面白く感じないのかと考えた時、主人公に共感ができないというのが大きいと思う。
そもそも犬を飼いたいと思ったことがないという点で共感ができないし、
想像上の犬を見るために目をつぶって生活するというのが、子どもの頃ですら共感できない、
割と現実主義なところが、この本がはまらない理由かも(現実主義だけどファンタジーとか大好きという矛盾)。

あと個人的に、個人の欲望のために色んな人を巻き込む、というのがいただけないというのもある。
主人公のベンは5人兄弟のまん真中で、我慢を強いられているところがあると言う風に描かれているけれど
最終的には大きな迷惑をかけているのが、自分の正義に合わないのかもしれない。
それだったらわがまま言えよ、自分の欲求を正直に言ってよ、みたいな。

と不満ぶーぶー垂れたけれども、少年の成長物語と考えると、うまく描かれていると思うし、傑作とするのは分かるといえば分かる。
ただ自分の好みではないだけというか。

ということで簡単にあらすじを。

主人公はロンドンに住むベン。
今日の自分の誕生日をことのほか楽しみしており、というのが、以前、おじいさんが犬をお誕生日プレゼントにあげると約束してくれていたからだった。

ところが待ちに待った誕生日プレゼントを開けてみると、小さな犬が描かれた刺繍の絵のみ。
この絵は、おばあさんの亡くなった息子、つまりベンの叔父さんがメキシコ旅行に行った時に買ってきた絵で、なのでおばあさんにとって大事な絵とのこと。
でもベンは本当の犬をもらえると思っていたので、そんなことはどうでもいい。

悲しむベンに家族は、おじいさんやおばあさんが犬を買うお金を持っていないんだから当たり前だ、ロンドンで犬が飼えるわけないだろう、と次々に言う。
それに対して何も言わず、ひそかにおじいさんたちに怒りを感じていたベンだが、おじいさんの字で「犬のことほんとにごめよ」と、慌てたのだろう、スペルミスで書かれていたのを見て、しょうがないと思うようになる。

ベンは5人兄弟のまん中で、上に二人姉、下に二人弟がいる。姉二人と弟二人はそれぞれペアになっていて、ベンは一人取り残された形となり、孤独を感じていた。
でも犬がいればそれも和らぐだろうと思っていたら、まさかの絵。そういった背景もあって非常にショックを受けていたのだった。

ベンはしょっちゅう一人でおじいさん、おばあさんの家に行っており、誕生日プレゼントもらった後も家に遊びに行く。
おじいさんとおばあさんの家にはティリーという犬がいて、ティリーと遊べるのでベンはこの家に遊びに行くのが大好きだったのだ。

その滞在期間中に、おばあさんにもらった絵を見せて、その絵の由来を聞く。
どうやら、犬種はチワワ、名前はチキチトと言うらしいと分かる。
ところが帰りの電車の中でその絵を忘れて来てしまい、更に同じ車両の人が落として粉々となって、ゴミとして捨てられてしまうのだった。
(いくらがっかりなプレゼントでも、そうやって蔑ろにしているところも、個人的に受けつけられなかった…)

家に帰ってそっと目をつぶると、そのまぶたの裏に犬が現れ、「チキチト!」と呼ぶと喜んで駆け寄ってくる。
こうしてベンは、まぶたの裏にチキチトを飼うことになったのだった。
チキチトは夢の中でも現れ、とても勇敢な様子を見せ、ベンはすっかり気に入る。

気に入りすぎて、ベットに入るまで待てなくて、暇があれば目を閉じ、学校でも目を閉じて授業を聞かないしまつ。
人と交流することなく、自分の殻に閉じこもるようになる。
母親は学校に呼び出され、心配もするのだが、ベンが何をしているのか聞き出すことができない。

丁度その頃、一番上のお姉さんが結婚することになっていて、結婚の後はベンたちの家とは結構離れた北ロンドンの方に引っ越すことになっていた。それに二番目のお姉さんがついていくことになっていた。
最後のクリスマスを皆で過ごそうと、クリスマス・イブにウェストエンドへクリスマスの飾りつけを見に行って、お茶をしようということになる。
ベンはそれも渋々で、しかもなかなか目をつぶることもできなくてイライラしている。

とうとう我慢ができなくなって目を閉じると、チキチトが信号の方に走って行くのが見え、それを追いかける。
そして車にひかれて大けがをしてしまうのだった。チキチトはそのまま信号の方に消えてしまった。

幸いなことに命はとりとめたものの入院を余儀なくされる。
一番上のお姉さんの結婚式もどうするか議論となり、結局は、既に招待状も渡しているし、ベンの怪我も心配することがないということが分かったので、ベンが参列することはできないけれども、そのまま進めることにする。

結婚式当日。
ベンが入院したままベッドにいると、なんとおじいさんがお見舞いに来てくれる。結婚式に参列してその帰りだった。
そしてティリーが仔犬を産んだことを伝える。

喜んだベンは、退院するとおじいさん・おばあさんの家に遊びに行く。
そして生まれたばかりの小さい仔犬のお世話にすっかり夢中になる。
おじいさんやおばあさんは、1匹、ベンにあげようかと提案するが、ロンドンではやっぱり飼えないので辞退する。

ロンドンに帰ってきてからも、おじいさんはどの仔犬がもらわれていったのかを教えてくれる。
どうやらベンが特にお気に入りだった仔犬を、万が一のために取っておいてくれているようだった。
そのお気に入りの仔犬というのが、チキチトと同じような毛の色だったので、ベンはチキチトと呼んでいた。だが、おじいさんは早とちりして、ベンが「ブラウン」という名前を付けたのかと思って「ブラウン」と呼んでいた。

その頃、ベンの家ではお母さんがお父さんを説得して、引っ越しをしようとしていた。
お母さんは娘たちが家を出てしまい、更にとても遠いというのを残念がっていて、
2人も去ったがために部屋が余ってしまっているし、ロンドンの北に引っ越そうと、お父さんを説得していたのだった。

ある家を家族で下見に行く。
ベンはまったく興味なかったのだが、近くに大きな公園があることに気付く。
その公園に行き、公園の人に犬を連れて来てもいいし、リードをはずして遊ばせてもいいことを聞き出す。
ここであれば仔犬が飼える!となり、その家に決まることを今か今かと待っている。
おじいさんにも1匹残してほしいと連絡する。

果たして、その家に決まり、引っ越しすることになったタイミングで犬のことを切り出す。
最初は難色を示していた両親も、公園が近くにあり、そこで思いっきり遊ばせられることも伝えると快諾する。

引っ越してすぐ、ベンはまたおじいさん・おばあさんの家に仔犬を引き取りにやってくる。
ところが…「チキチト」と呼んでも来ない。なにせおじいさんが「ブラウン」と呼んで世話していたので、自分の名前は「ブラウン」と認識していたのだ。
しかもチキチトみたいに小さくないし(見ないうちに成長していた)、勇敢でもなくて、ベンに抱えられて電車などに乗るときにぶるぶる震えていた。

ロンドンに着き、家の近くの公園に着いたベン。
ベンはこの犬を家に連れて帰りたくなかった。
かなり冷たく扱っても付いてくる犬。
ベンは、他の人は自分の欲しい犬を持っているのに自分は持っていないと泣く。
 ベンはぎゅっと目をとじた。しかしこのごろは目をつぶっても、もう、あのまぼろしの犬のすがたはうかんでこなかった。ベンは目をひらいた。すると、しばらくは、そこにいた見えるはずの犬のすがたすら見えなかった。やっぱり、あの茶色の犬はいなくなってしまったのだ。しかし、夕ぐれのなかで目がなれてくると、むこうのほうに、なにやら動いているものがあることにベンは気がついた。犬はたちあがり、去っていこうとしている。ベンの目のとどかないところへ、すがたをかくそうとしている。
 ぼやけた風景のなかで、そのときとつぜん、ベンは、はっきりとあることをさとった。それは、手にいれることのできないものは、どんなにほしがってもむりなのだ、ということだった。ましてや、手のとどくものを手にしないなら、それこそ、なにも手にいれることはできないということを。同時にベンは、チキチトとは大きさも色も、似ても似つかないこのおくびょうな犬にだって、ほかの一面があるのだということを思いだした。(p263-4)
そしてベンは「ブラウン!」と呼び、ブラウンはベンに駆け寄る。
ベンはブラウンを連れて家に帰るのだった。

私が一番許せなかったのがこの犬に対する仕打ち…
ブラウンがかわいそすぎる!!!
勝手に理想を押し付けて、違ったら邪険に扱うなんて!
と、こうしてベンが成長したんだと分かっても、ちょっとイラっとしてしまうんだよな…
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Category : 児童書
Posted by nizaco on  | 0 comments  0 trackback

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