石持浅海『殺し屋、続けてます。』
軽い本が読みたくなり、そうなると石持浅海さんの本かな~と思って図書館をうろついていたら、『殺し屋、続けてます。』を発見。
『殺し屋、やってます。』の続きだ!と思って、さっそく読んでみた。
読了後の素直な感想は、”こんなんだったっけ…?”
軽いのは軽くていいんだけれども、殺し屋の話なので結局殺してしまうので(そりゃそうか)、殺し屋が謎を究明してちょっと殺されてはかわいそうなんじゃないか?という話もあると、ちょっともやっとしてしまう。
しょうがないんだろうけど…ちょっと釈然としない気がしてしまう…
あと前回の感想にも書いてあったけれども、主人公の恋人が嫌だー…
殺し屋に近しい人が殺しを行っているのを知っているというのは珍しいパターンで面白いといえば面白いと思うけど、いかんせん人となりが虫が好かない。
おそらく、アウトローな殺し屋イメージが好きなのに、恋人にまで明かしているだけではなく、恋人も割とぐいぐいと仕事の話に頭突っ込んでくる感じが嫌なのかなと思ったり。
何はともあれ、簡単に各章のあらすじ。ネタバレ有なので注意。
「まちぼうけ」
殺す相手は可愛い女子大学生。
観察していると不思議なことに、いつも誰かを待っているかのように交番の側に立っている。
3時間ほど待って、結局誰にも会わず去っていくのだ。
彼女は誰を待っているのか。
その子の殺人は滞りなく終わるのだが、結局誰を待っていたのか。
実は待っていたのはカモフラージュで、実際はコンビニを監視していたのだ。
そのコンビニ店員に恋をしていたようで、ストーカーまがいなことをしていたのだ。
でもコンビニ店員はバイトしているくらいだから、殺人依頼するほどのお金はないはず。
殺された女の子はお金持ちな子だったから、「ストーカーに合っていて迷惑している」とでも言って、両親からお金をもらったのではないか?と推測したところで、新たな依頼が来る。
その相手こそが、そのコンビニ店員だったというオチ。
「わがままな依頼人」
オプション付きの依頼で、そのオプションは特定の場所で殺してくれということだった。
それは病院と家の間にある駐車場で人目に付く。
何よりも、家というのが病院の娘夫婦が住んでいる家で、殺す相手はその家の夫なのだ。
リスクがあるので断ると、依頼は取り消さないと返事が来た。
今度のオプションは弓矢かボウガンで殺してくれというもの。
結局、ボウガンで別の場所で殺人をし、遺体を駐車場に持っていくということで良いか聞いたところ、そのオプションで良いということだったので実行に移す。
依頼人は対象が殺されたのをちゃんと見たかったのだと推測されたのだ。
対象者はその家に後から入ってきた夫。
妻には連れ子がいた。
その子が依頼主で、義理の父親が殺されたのを見届けたのかったのではないかということ。
「双子は入れ替わる」
主人公の恋人が目撃した不思議な事件の話。
彼女は漫画家で、よくファミレスで仕事をしている。
決まったファミレスで仕事をしているので、店員も見知っている。
その中に双子で働いている女の子がいた。
ずっと双子であることに気付かないくらい似ていたのだが、月・水と火・木とで違う子だということに気付く。
ところが、ある木曜日、いつもの子ではなく月・水の子だということに気付く。
そしてまたある時、とても感じのいい子だったのに、突如として月・水の子だけ感じ悪くなる。
それがまたしばらくして、その子ももとに戻り、代わりにミントの匂いがするようになった。
そうこうしていると、その双子の一人が殺されたというニュースが入る。
恋人である主人公に聞くと彼が殺したわけではないという。
推理すると、おそらく、彼女とよくファミレスで見ていた中年の女の人が殺人者ではないかということ。
というのがその女の人と対峙していから感じが悪くなったのだ。
女の人は双子が入れ替わる可能性があることに気付く。
そこで判別しやすくするように、一方に会った際に、口臭がするという仕草をするのだ。
それに気に病んだ双子の片割れは感じが悪くなり、その後、オーラルケアをするようになってミントの香りがするようになったというのだった。
「銀の指輪」
ここで、おそらくファミレスで彼女が会ったという殺人者と同一人物であろう人が出てくる。
新しいキャラで、特に主人公とはかかわりはないが同業者。
こちらはシングルマザーで、同じく副業で殺人を行っている。
今回のターゲットは、奥さんと二人暮らしのサラリーマン。
観察をしていると、どうやら不倫をしている模様。
でも不思議なことに、普段は結婚指輪をしていないのに、その彼女に出会う時だけ指輪をする。
普通は逆ではないか?
結局殺人は滞りなく遂行されるのだが、その謎の推測は…
女性と会う姿を「不倫」と認識して欲しいからではないか?ということ。
実際は産業スパイで、女の人はメディアの人だったのだ。
ということで、依頼主は会社の人ではないかと予測される。
「死者を殺せ」
また主人公に話が戻る。
今回の依頼は不思議なもので、既に死んでしまっている人がターゲットだった。
その旨を伝えると、また違う人が指定される。
送られてくる写真が、ある男4人・女5人の写真なのだが、人気者であっただろう一人の男を囲んで女の人が並んで写っている。
1回目に依頼された人と、2回目に依頼された人で同じグループに所属していて、どちらの写真にも二人が写っていた。
ところが2人目も実は、1人目と同じタイミングで亡くなっていたのだった(登山で事故によって死亡)。
そして2人目も死亡していたことを伝えると、主人公が想像していた人が3人目のターゲットとして依頼されたのだった。
主人公は依頼通り殺人を決行する。
なぜこんな不可解な依頼だったのか。
このグループは会社のサークルだった。実際に真ん中に座っていた男性は人気者で、女性皆好きだったのだろう。
男性は結局、その内の1人と結婚する。
しかし、時が経ってその二人は離婚したのだった。
なので依頼人は、その男性を狙っているのではないか。しかしそれがうまくいかない、なぜだ、と考えた時に、他の人たちが自分に不利益を与えていると考える。
ということで手あたり次第殺しの依頼をしたのだった。
完全にとばっちりな案件…これで3人目で殺された人がかわいそすぎる…と後味が悪くなる話だった。
「猪狩り」
珍しく依頼者の目線。
ベンチャー企業の社長で、自分と一緒に会社を立ち上げた副社長を殺すよう依頼した。
というのが特許周りから副社長の反逆が垣間見えてきたのだった。
何度も殺しの決行を考えなおした方がいいのか‥と逡巡するが、結局そのまま進める。
と最後の最後で、自分が殺されてしまう。
それが女性によって殺されたということで、「銀の指輪」で出てきた方だということが分かる。
「靴と手袋」
本書に出てくる2人の殺し屋が同時に関わる話。
ターゲットは霊感商法に手を染める3人の内の2人。
サークルと称して3人で霊感商法を行っている。
それぞれ観察しているととても不思議な行動をしていることを知る。
サークルのある建物へ行く路地を通る時だけ不思議なことをするのだ。
男の殺し屋のターゲットは、路地を通る前に小さな缶コーヒーを買い、ストッキングとパンプスを脱いでサンダルに履き替える。路地を抜けるとまたストッキングとパンプスを履くのだ。
女の殺し屋のターゲットは、路地を通る時だけ厚手の手袋をする。
どちらものターゲットになっていない人は、百万円の札束をポケットに入れる。
実はこの殺人にはオプションがあり、二人の殺し屋は同じ日の同じ時間帯までに殺さないといけなかった(もちろんお互いは知らない)。
2人は滞りなく遂行する。
この不思議な行動は何だったのかというと、実はこの霊感商法にはかつて1人のリーダーがいた。
しかしその客の一人に恨みを買って、この路地で殺されたのだった。
そのため三人三様、その対策をしていたのだった。
ストッキングとパンプスを脱いでいた人は、ストッキングにコーヒーを入れることで武器にしていたし、
厚手の手袋をしていた人は、それでナイフから身を守ろうとしていたし、
百万円の札束を持っていた人は、おそらくそれをばらまいて逃げようとしていたのだろう。
そして依頼主はその最後の人と推測され、どうやらその人は結婚することになっていたので、自分のしてきた後ろめたいことを隠したかったのだろうということだった。
物語と分かってはいてもちょっと後味悪いよな~と思ってしまうな。
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