トレントン・スチュワート『秘密結社ベネディクト団 下』
最後に割と大きなオチがあって、最後の最後まで面白かった。
ちょっと残念だったのが、登場人物の子供たちの魅力が、今一つ伝わってこなかったことかなと…
それぞれ個性はあるけれども、お互いが必要不可欠具合がいまいちなような…
主人公のレイニーが抜群すぎるというのもあるのかもしれない。
もちろん、スティッキーの記憶力のすごさや、ケイトの運動能力のはんぱなさ、コンスタンスの最終的な能力があってこそではあるけれども、レイニーの総合力がすごすぎて、他の三人はレイニーの計画を遂行するのに必要なオプション、というイメージになってしまった。
もっとレイニーにとっての心の支えというか、4人(もしくは3人)の間でもっと色濃い友情が芽生えてもよかったんじゃないかなーと思った。
ということで簡単なあらすじ。
レイニーたちが裏手の丘を歩いていると、レイニーが知っている役人がヘルパーとして働いていることを知る。
しかしその人に話しかけても、記憶が抹消されているようで、レイニーのことも、自分の家族のことも知らないことが分かる。
そうこうしている内に、レイニーとスティッキーがめでたく<使者>になった。
使者になって分かったのが、使者になった子どもはウィスパラーという機械に座らせられて、メッセージを読み上げる役目を負うのだった。
さっそくレイニーがやってみると、多幸感に満ち溢れ、気付いたら2時間ほど座っていたとのこと。
その後から、ウィスパラーへの憧憬が強くなってしまって、しばしば呑みこまれそうになってしまう。
ウィスパラーを壊そうということになり、ウィスパラーの塔などに行く際、目隠しをされていたので場所が分からないものの、なんとかレイニーたち(というかほぼレイニー)は場所を突き止める。
ケイトはその運動神経を使って、塔に忍び込むことにするのだが、やはりウィスパラーにたどり着くのは容易ではなくて、その夜は行けなかった。
それでも、ミスター・カーテンと幹部たちが話しているのを盗み聞くことができて、どうやら明後日にミスター・カーテンが企んでいることが完成するらしい。
ケイトはなんとか逃げ切るが、スパイがいるというのはバレて、幹部たちは必死に探す状態になってしまった。
そんな中で、なんとかレイニーとスティッキーがウィスパラーの順番にならないといけないのだが、順番からすると明後日以降。
ということで、スティッキーの案で下剤を作り、他の使徒が使い物にならないようにしたのだった。
ミスター・ベネディクトの用心棒をしていたマコーネがヘルパーとして忍び込んでいたので、その助けを得ようとしたものの、レイニーの過ちで、逆に捕まってしまう。
なかなかのピンチだが、レイニーとスティッキーはミスター・カーテンに呼ばれてウィスパラーのある塔へ。
ミスター・ベネディクトの連絡で、必ず4人いなくてはいけないという指示があったので、なんとかレイニーはケイトとコンスタンスに連絡しようとするのだが、二人は夢の中。
ミスター・ベネディクトサイドの連絡で目が覚めたものの、それで幹部たちはケイトやコンスタンスがおかしいと気付き、追いかけて来る。
こうして、なんとかコンスタンスだけは塔にたどり着いたのだった。
ミスター・カーテンにはレイニーやスティッキーが裏切り者だということがばれてしまう。
ミスター・カーテンはウィスパラーを使って皆の記憶を抹消しようとしたのだが、ここでコンスタンスの能力が発揮される。
ウィスパラーは素直な子どもの心が必要なのだが、コンスタンスは頑固に抵抗する。自分の名前を聞かれてもレイニーの名前を言ったり、スティッキーの名前を本名ではなくスティッキーの愛称で言ったり…
そのおかげでウィスパラーが混乱してしまう。
そこへミスター・ベネディクトがやってきて、後は自分に任せて逃げるように言う。
マコーネとケイトと合流して逃げる一行。
最後に、ミスター・ベネディクトがミスター・カーテンのふりをして、無事、脱出するのだった。
(前の巻のレビューで、ミスター・ベネディクトとミスター・カーテンは生き別れの双子ということが分かっている)
もうメッセージが送信されることもなくなったので、政府関係者たちはミスター・ベネディクトが言うことを受け容れ、何よりもアカデミーには証拠がたくさんあった。
ミスター・ベネディクトは、ウィスパラーを改良して、記憶喪失にさせられた人の記憶をよみがえらせようとしている。
最後は大団円で終わるのだが、
まずマコーネはずっと記憶喪失だったのだが、ケイトの行方不明だった父親ということが分かる(マコーネは自分で記憶がよみがえる)。
レイニーは敬愛していた家庭教師であるミス・ペルーマルの養子になる。
スティッキーの両親はスティッキーを見放していたわけではなくて、スティッキーがいなくなってから自分たちの愚かさを知り、「スティッキーが自分たちの元を離れて幸せになっているなら今の方がいい」と言った、最後の部分だけをスティッキーが聞いていたのだった。が、その後にやっぱりスティッキーが恋しくて、全財産をなげうってスティッキーを探していた。
コンスタンスはミスター・ベネディクトの養女となる。
最後の最後にコンスタンスのお誕生日が祝われるのだが、誕生日ケーキの上にはろうそくは3つしかない。
なんとコンスタンスは2歳だったのだ!!!
それでみんなは、コンスタンスがすぐ寝てしまうことや、わがままだったり、頑固だったりすることへ大納得するのだった。
ミスター・ベネディクトからの指示が暗号であったり、忍び込むシーンがあったりと、少年探偵団みたいな要素がもりだくさんで面白かった。
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